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変わるか日本のクルマ文化 マツダの挑戦が始まる

   マツダが1989年発売の初代ロードスターのレストア(修復)サービスを開始すると2017年8月、正式に発表した。日本の自動車メーカーがクラシックカーの本格的なレストアサービスに乗り出すのは初めて。マツダは2016年8月、千葉市の幕張メッセで開かれたイベント「オートモビル カウンシル」で「古いクルマを愛でるというクルマ文化を日本社会に育んでいくことにも挑戦したい」と、レストアサービスの検討を明らかにしていたが、1年の検討を経て実現することになった。

   レストアサービスは、オーナーのロードスターをマツダが預かり、オリジナルに近い状態にクルマをリフレッシュする「レストア事業」と「パーツ再供給」の二つからなる。2017年内に受付を開始し、2018年初頭からサービスを始める予定。

  • 初代ロードスターのレストアサービスが実現した(画像はマツダ公式ホームページより)
    初代ロードスターのレストアサービスが実現した(画像はマツダ公式ホームページより)
  • 初代ロードスターのレストアサービスが実現した(画像はマツダ公式ホームページより)

レストア事業とパーツ再供給

   レストア事業は「メーカーであるマツダがお客さまと直接面談し、個々のクルマの状態や要望に合わせたサービスを実施する」という。レストア作業を行うマツダ社内の施設は、ドイツに本社を置く第三者検査機関から「クラシックカーガレージ認証」を取得する予定で、「レストアしたクルマを高い品質でお客様にお届けすることが可能」という。

   パーツ再供給は、現在は供給が終了している初代ロードスターの一部パーツを復刻する。オリジナル状態にこだわり、初代の発表当時を彷彿とさせるビニール生地のソフトトップのほか、ブリヂストンが当時、新車に装着したラジアルタイヤ「SF(スーパーフィラー)325」を復刻する。初代ロードスターが履いたSF325は2003年に生産が終了していたが、今回のレストアサービスに合わせ、ブリヂストンが市販用に復刻する。

   SF325はロードスターのデビュー当時と同じトレッドパターンで、サイズは「185/60R14 82H」。ブリヂストンは「往年のロードスターファンの期待に応えるため、外観を再現しただけでなく、乗り味にもこだわったタイヤとなっている」と説明している。

   このほか、初代ロードスターを象徴するNARDI(ナルディ)製ウッドステアリングとシフトノブを現在の技術で復刻する。マツダは「その他の部品供給についても、お客様との対話を通じて今後取り組んでいく」というから、オーナーには心強い。

   マツダは「初代ロードスターのレストア事業やパーツの再供給を通して、お客様の人生をより豊かにし、お客様との間に特別な絆を持ったブランドになることを目指していく」という。

他社は追随するか

   マツダによると、初代ロードスターは国内で約12万台を販売し、28年が経過した現在も「約2万3000台がお客様に家族のように大切に愛され、走っている」という。マツダは全国のファンミーティングを通じ、オーナーから「ずっとロードスターに乗り続けたい。そのために必要な部品をずっと生産してほしい」「オリジナルに戻したいので、絶版になった純正パーツを復刻してほしい」などの要望を受け、今回のサービス開始につながったという。

   ドイツでは古いクルマの工業的、文化的価値を認め、オーナーの自動車税が割引になるなど、保存に向けた優遇制度がある。日本でも走行距離が少ないクラシックカー向けに保険料の安い自動車保険が登場するなどしているが、自動車先進国のドイツ、英国などに比べるとクラシックカーを保存したり、楽しんだりする文化が市民権を得ているとは言いがたい。

   日本の自動車メーカーが自社製品を長く愛するオーナーの声に耳を傾け、責任持ってメンテナンスに取り組むのはマツダが初めて。これまでなら、旧車のメンテよりも新車への代替を促すのが自動車メーカーの姿勢だった。日本の自動車文化の成熟に向け、果たしてトヨタや日産、ホンダあたりが追随するか注目される。