J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

東名追突事故、「容疑者の父」とデマ拡散 無関係なのに...嫌がらせ電話「1日100件」

   神奈川県内の東名高速道路で2017年6月、ワゴン車が大型トラックに追突され夫婦2人が死亡した事故で、事故とは全く無関係の人物が「容疑者の父親」としてネット上で拡散され、嫌がらせ電話が殺到するなどの被害を受けていた。

   被害を受けたのは、福岡県北九州市の「石橋建設工業」社長の石橋秀文さん。一時は1日100件以上嫌がらせの電話があり、念のため子供の学校を休ませるなど対応に追われたという。

  • ネット「デマ」がもたらした風評被害(画像はイメージ)
    ネット「デマ」がもたらした風評被害(画像はイメージ)
  • ネット「デマ」がもたらした風評被害(画像はイメージ)

「無関係」と説明しても...

   騒動の発端となったのは、上述した事故に関連して福岡県中間市の建設作業員・石橋和歩(かずほ)容疑者が過失運転致死傷の疑いで17年10月10日に逮捕されたことだ。

   この石橋容疑者と、名字や住んでいる都道府県などの情報が一致するという理由だけで、何の根拠もなく、事故とは一切関係のない秀文さんがネット上の「標的」となった。秀文さんが石橋容疑者の「父親」だとする誤った情報が出回り始めたのだ。

   ネット掲示板「2ちゃんねる」や「爆サイ.com」上には、秀文さんの会社や自宅の住所・電話番号などの個人情報を晒す書き込みが逮捕翌日の11日頃から相次いで寄せられることに。この情報を見たユーザーの一部が、秀文さんの会社に嫌がらせの電話をかけ始めたのだ。

   J-CASTニュースの19日の取材に応じた秀文さんは、「逮捕の次の日(11日)には、1日で100件以上も嫌がらせの電話が会社にかかってきた」と話す。電話は昼夜を問わず寄せられ、深夜3時頃にも着信があったという。

   無言電話や「ワン切り」も多かったというが、なかには「親父を出せ」「お前のところの会社の社員だろ」と語気荒く詰め寄ってくる人も。秀文さんが「(容疑者とは)無関係です」と説明しても、

「ふざけるな、ウソをつくんじゃない」

などと全く聞く耳を持たない電話が多かったという。

   こうした嫌がらせ電話を受け、秀文さんは「万が一のことがあると危ない」と考え、子供の学校を休ませた。警察にも相談したというが、

「被害届を出すためには被疑者を特定する必要があると言われました。誰が投稿者か分からないので、現時点では被害届は出せていません」

とも話していた。

「許すべき問題ではないと思う」

   こうした秀文さんへの嫌がらせを加速させたのは、いわゆる「まとめサイト」の存在だ。ネット上の書き込みを元に、秀文さんを「容疑者の父親」と決めつけたような記事を掲載していたのだ。

   J-CASTニュースが確認したところ、「モノローグ」「CHIHOJO-地方女子-」という2つのサイトで、石橋容疑者と秀文さんの関係を疑う内容の記事を掲載していた。どちらのサイトも、19日正午時点で問題の記事は削除されている。

   また、秀文さんによれば、自身の個人情報を晒す書き込みが寄せられた「2ちゃんねる」や「爆サイ.com」のスレッド上にも、自身の名前を出して「事実無根」だと訴える投稿を16日に寄せた。しかし、この秀文さんの書き込みには、

「戸籍謄本とか示してくれ」 「掲示板で法的処置匂わせても全く効果ないしむしろ火に油だ」

といった批判が集まった。

   なお、秀文さんが嫌がらせ被害を受けている件は、18日朝から複数のニュースサイトや情報番組「羽鳥慎一 モーニングショー」(テレビ朝日系)などで報じられている。だが、会社への嫌がらせの電話はその後も続いており、19日も正午までに2件の迷惑電話がかかってきたという。

   今回の被害について、秀文さんは取材の中で「許すべき問題ではないと思う」とも話していた。秀文さん自身や家族だけでなく、会社の取引先などにも心配や迷惑をかけてしまったとして、

「私の個人情報をネットに書き込んだユーザーは、軽い気持ちだったのかも知れません。ですが、こちらは大きな被害を受けています。投稿者にはきちんとした形で処罰を受けて貰って、自分の行いを反省して欲しい。それが、私の願いです」

と訴えていた。