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高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ
「ワクチンめぐる表彰」問題で再認識 国内新聞・テレビの「異様さ」

   新聞、テレビの報道がどうなのかな、というのは今に始まったことではない。ただし、最近、ネットでニュースが多く流れるので、新聞、テレビの異様さが際立つ結果になっている。

   子宮頸がんワクチンの必要性を訴えてきた村中璃子氏のジョン・マドックス賞(英科学誌「ネイチャー」など主宰)受賞はすばらしいものだが、新聞、テレビではほとんど取り上げていない。受賞スピーチだけでも感動ものである。

  • ジョン・マドックス賞の報道が日本では少ない(画像はSENSE about SCIENCE公式ホームページより)
    ジョン・マドックス賞の報道が日本では少ない(画像はSENSE about SCIENCE公式ホームページより)
  • ジョン・マドックス賞の報道が日本では少ない(画像はSENSE about SCIENCE公式ホームページより)

新聞報道は見出しだけを見れば十分だった

   筆者は、新聞、テレビの関係者を少なからず知っているので、取り上げるように話したが、反応は芳しくない。そこで、12月5日の虎ノ門ニュース、12月7日の夕刊フジで紹介した。

   どうやら、新聞、テレビではワクチン不要論を言い過ぎたので、今さら村中氏を応援できないらしい。新聞、テレビの影響によってワクチン不要を信じている人が多いので、罪作りなものだ。しれっと方向転換すればいいものを、なかなかできないらしい。

   本コラムの読者であれば、ご存じだろうが、筆者は、新聞を30年近くも購読していない。それでも、官邸勤務で困ったことはなく、新聞報道は見出しだけを見れば十分だった。

   そして、本コラムでは、新聞、テレビ報道を批判してきた。具体的には、森友学園、加計学園、豊洲市場などでかなり前から、新聞、テレビ報道が間違っていると指摘してきた。例えば、森友学園では、新聞、テレビが安倍首相や夫人の関与を言う中で、近畿財務局のチョンボで安倍首相らの関与はないといってきた。これらの案件について、どうやら、筆者の新聞、テレビ報道批判は見立て通りであったようだが、一部の新聞は相変わらず「ぶれずに」いる、さすがにテレビはネタ切れなので、もうほとんどやっていない。

   ところが、最近、新聞で記事を書いてきた記者らから、会いたいという連絡が来るようになった。その方々は、これまでは筆者に取材なしで、安倍首相や夫人の関与や疑惑を言い続けてきた人たちだ。

ジョン・マドックス賞の受賞を報道したほうがいい

   会って取材を受けるが、彼らの疑問に対して、元役人の経験などから説明する。なぜ近畿財務局が値引きしたかというと、交渉のはじめに近畿財務局から籠池泰典氏へゴミの説明が不十分なため、その後に籠池氏にごねられ、値段をつり上げられたのだろうとか、当初は鴻池氏が関与していたので安倍首相を含め他の政治家は関与しない、といったことだ。

   それで納得する人もいるが、そうでなく今後も真相解明と自らを鼓舞する人もいる。人生いろいろ、記者もいろいろだ。帰り際には、「皆さんがグーの音も出ない新事実を出せば、私は意見をすぐ変える。出せなければ、皆さんは意見を変えたほうがいい」と言うことにしている。

   冒頭の村中氏の件について、受賞事実を新聞、テレビは報道したほうがいい(J-CASTニュースの12月6日の関係記事によると、産経新聞と北海道新聞は報じている)。そして、政府(厚労省)もワクチン接種を推進すべきである。ワクチン接種をやめれば副作用もないが、それでは救える患者も救えない。子宮頸がんでは毎年約1万人が患者になり、約3000人が亡くなる。大胆にいえば、副作用がそれより少なければワクチンを接種したほうがいい、というのが原則だ。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわ ゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に 「さらば財務省!」(講談社)、「『年金問題』は嘘ばかり」(PHP新書)、「ついにあなたの賃金上昇が始まる!」(悟空出版)など。