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転売サイト「チケキャン」サービス停止 親会社ミクシィに激震、成長戦略に打撃

   コンサートやスポーツの観戦チケットをウェブサイト上で転売できるサービス「チケットキャンプ」(チケキャン)が閉鎖する。運営会社フンザの親会社で、ソーシャルゲームやSNS事業を展開するミクシィが決断した。

   ミクシィの収益の柱は、ゲーム「モンスターストライク」(モンスト)だが、チケキャンは急速に成長していた。サービス停止で、事業戦略の軌道修正が迫られそうだ。

  • ミクシィ・森田社長にとっても「チケキャン」閉鎖は痛手(2014年撮影)
    ミクシィ・森田社長にとっても「チケキャン」閉鎖は痛手(2014年撮影)
  • ミクシィ・森田社長にとっても「チケキャン」閉鎖は痛手(2014年撮影)

好決算発表から1か月後にサービス一時停止

   ミクシィは2017年12月27日開催の取締役会で、チケキャンの業務を完全に停止し、サービス提供を終了することを決定、発表した。現在利用している顧客のため、18年5月31日まで一部サービスと窓口を継続する。フンザ代表取締役の笹森良氏は、27日付で辞任した。

   ミクシィは2015年3月にフンザを子会社化し、チケキャンを「メディアプラットフォーム事業」のひとつに加えた。四半期ごとの売上高で見ると、子会社化前の2015年1~3月期の同事業の売上高は24億2600万円だったが、直近の17年7~9月期では37億5500万円。同事業の各ビジネスに関する細かい売上高は公表されていないが、公開された売上推移のグラフを見るとチケキャンが直近四半期では半分近くを占めるまでになっている。ミクシィの森田仁基社長は11月8日の決算発表の席で、同事業の売上高上昇について「しっかりと右肩上がりの成長ができている」と述べ、特にチケキャンの好調さを挙げていた。

   ところが12月7日、ミクシィはチケキャンのサービス一時停止に踏み切った。同日の発表によると、フンザが「サイト上の表示について商標法違反および不正競争防止法違反の容疑で捜査当局による捜査を受けました」とある。公式にはこれ以上の記述はないが、複数の報道によるとチケキャンのサイト上で、アイドルグループ「嵐」のドームツアーチケットの取引手数料を無料にするキャンペーンを行ったところ、ジャニーズ事務所が公式サイト上でチケキャンの運営会社であるフンザと同事務所は一切関係ないうえ、「ジャニーズ」の名称を無断で使われたと抗議したという。

   なおジャニーズ事務所は9月1日付でサイトのトップページに「正規販売以外でのチケット購入はおやめください」との警告を出し、現在も掲載を続けている。チケキャンを名指しはしていないが、「チケット転売サイトなどにおけるチケットの転売・譲渡はコンサート事務局が定めるチケット販売規約に明確に違反する行為」と書かれている。

「モンスト」補完する役割期待されたが

   好決算を発表してから1か月ほどで、「成長株」だったチケキャンのサービス完全中止を決断せざるを得なかったのは、ミクシィにとって大きな痛手だ。

   現状でミクシィを支えるのは、モンストを軸とする「エンターテインメント事業」。直近の四半期を見ても売上高で412億7100万円と、「メディアプラットフォーム事業」の11倍もある。ただしエンターテインメント事業には季節変動が伴う。例えば2016年4~9月期では、同事業の売上高は前年同期比10.8%減。事業全体でも、売上高は同9.1%減、当期純利益も同19.5%減となった。モンストの好不調が、全体の事業に響いてしまうようだ。

   それだけにチケキャンへの期待は大きかったはず。11月8日の決算発表でも、森田社長は、「我々がこれから注力していく」として、プロバスケットボール「Bリーグ」をはじめとするスポーツ興行のチケット販売に活路を見いだしていたようだ。「メディアプラットフォーム事業」を「ライフタイムが長く安定したビジネス」と位置付けており、変動が大きいエンタメ事業を補完する役目を考えていたに違いない。

   それでも、違法行為の疑いで捜査をうけたリスクのあるサービスを早めに「切る」決断を下した。12月27日にはチケキャン閉鎖に伴う特別損失の計上を発表したが、通期の業績で売上高や営業利益、経常利益については「現時点において本件が与える影響は軽微と判断」して変えなかった。ただ長い目で見れば、モンストに次ぐ第二の成長事業を改めて探し出し、育てなければならなくなった。