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爆買いの夢、ふたたび? 百貨店にみる訪日客の消費「再拡大」

   訪日外国人の増加が続く中、その好影響で百貨店の業績が上向いていることが鮮明になってきた。一時盛り上がった中国人らの「爆買い」は沈静化したが、2016年11月の米大統領選にトランプ氏が勝利して以降の円安を背景に、訪日外国人の消費が再び拡大している。ただ、都心と郊外という百貨店の立地による好不調も改めてはっきりしてきた。

   2018年が明けて1月3日までの初売りの売上高は、都心部を中心にまずまずの結果だった。

  • 百貨店を潤すのは訪日外国人の消費(画像はイメージ)
    百貨店を潤すのは訪日外国人の消費(画像はイメージ)
  • 百貨店を潤すのは訪日外国人の消費(画像はイメージ)

高級ブランド品や化粧品の販売が伸びる

   傘下に大丸と松坂屋があるJ・フロントリテイリングが、訪日客が増えた効果もあって前年比1.2%増。そごう・西武は1.7%増で、旗艦店である西武池袋本店(東京都豊島区)は元日の売り上げが5%増えた。百貨店では少数派の元日営業の集客力が高まっており、ブランドものの福袋などが好調だった。

   エイチ・ツー・オー・リテイリング傘下の阪急うめだ本店(大阪市北区、メンズ館含む)は2~3日の売上高が前年より1割増。高島屋は1.8%減だったが、高級ブランドなどの値下げしない定価品の売り上げが好調だったという。三越伊勢丹は東京都心の基幹3店で前年並みだった。

   初売りに先立つ、書き入れ時でもある17年12月の大手百貨店4社の売上高は、全社が前年実績を上回った。訪日外国人向けの免税品販売が伸び、株高による資産効果もあって高級時計や宝飾品といった高額品が富裕層に売れた。百貨店のビジネスモデルにもまだ見所があることを示した。伸びの大きい順に並べると、J・フロント2.9%増▽そごう・西武1.7%増▽高島屋0.8%増▽三越伊勢丹0.5%増――となる。

   商品ジャンル別に見ると、高級ブランド品や化粧品のほか、気温低下を受けて防寒にも役立つコートや手袋などの販売が伸びた。17年3~11月期連結決算でみても、J・フロントが売上高5.6%増、営業利益29.2%増、高島屋が売上高3.1%増、営業利益5.6%増と着実に業績が向上している。

都心店と郊外店の格差

   訪日外国人の現状について、最新の統計(17年11月まで)でみると、11月は前年同月比26.8%増の237万7900人。格安航空会社(LCC)の路線増加も後押しし、韓国や中国、インドネシア、ベトナムなどアジア各国が大きく伸びた。17年1~11月の累計は2616万9400人で、前年同期比19.0%増。12月を待たずに16年通年を超えた。17年(1~11月)は韓国が40.6%増の646万人と伸び、首位の中国(14.2%増、679万人)に迫っているのが特徴だ。

   百貨店の経営上注目すべき訪日外国人の消費額は、最新の統計である17年7~9月期を見ると前年同期比26.7%増の1兆2305億円。人数が増えているだけでなく、1人当たりの消費額も17年7~9月期は6.6%増の16万5412円となり、実に15年10~12月期以来、7四半期ぶりに前年同期の実績を上回った。7~9月期としては15年の実績を下回っているとはいえ、爆買い沈静化から回復基調にあることを裏付けた。17年7~9月期の国別消費額を見ると、首位中国は全体の44.1%を占め、5432億円。2位台湾(1490億円)、3位韓国(1361億円)と続く。

   ここで、はたと気づくのが、通年の人数で中国に迫る韓国が消費額ではその4分の1程度にとどまることだ。旅行業界通によると、日本を訪れる韓国人は他国より圧倒的に若年層が多く、相対的に消費すべきお金をあまり持ち合わせていないそうだ。日韓の物理的距離は近いだけに、韓国の若者にとって東京や大阪を訪れることは「大阪から夜行バスで東京ディズニーランドに遊びに行く」ぐらいの感覚になっているのかもしれない。それに比較して中国人の買い物意欲の強さが目立つ。

   訪日外国人の消費が百貨店を潤しているのは間違いないが、外国人が多く訪れる都心店とそうではない郊外店の格差はむしろ広がっている。例えば高島屋は17年3~11月期において大阪店(大阪市中央区)の売上高は10.1%増の1020億円、日本橋店(東京都中央区)の売上高が2.0%増の982億円<大阪が上というのも訪日外国人の影響をうかがわせる>だったのに対し、立川店(東京都立川市)は10.0%減の93億円、泉北店(堺市)は7.2%減の119億円と低迷。こうした傾向は他社も共通している。各社とも郊外店の閉店は進めているが、このままでは一段のリストラを迫られそうだ。