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藤井聡太VS羽生善治、初対決 「早指しは若い方が有利」に立ちはだかる羽生の知られざるデータ

   天才中学生棋士・藤井聡太四段(15)と永世7冠・羽生善治竜王(47)の公式戦初対局が2018年2月17日、ついに実現する。

   舞台は、第11回朝日杯オープン戦の準決勝だ。持ち時間40分のいわゆる「早指し」で、瞬発力がモノをいう。若い藤井四段が有利か、それとも...。

  • 羽生善治竜王(写真は2017年2月撮影)
    羽生善治竜王(写真は2017年2月撮影)
  • 羽生善治竜王(写真は2017年2月撮影)

田中九段「若い人の方がだいたい強い」

   「早指し」は、明確な規定こそないが、一般的に持ち時間が1時間以内の対局を指す。短時間で読み切る力がモノをいう世界で、若手棋士に分がある――将棋ファンの間では常々、そんな声が上がる。

   「若い人の方がだいたい強い」。プロ棋士の田中寅彦九段も2018年1月17日、情報番組「モーニングショー」(テレビ朝日系)でそう指摘した。

   実際、藤井四段は早指しでも安定して勝っている。公式戦の通算成績は58勝11敗で、勝率は8割4分1厘だが、早指しの対局に限っても、通算27勝5敗で、勝率は8割4分3厘にのぼる。持ち時間が長かろうが短かろうが、数字で見る限り特段の差はみられない。

   一方、羽生竜王の成績はどうか。藤井四段が2016年12月24日に公式戦の初対局を迎えて以降、羽生竜王は公式戦で31勝23敗(不戦勝1)、勝率5割7分4厘の成績を収めている。早指しの対局は8勝5敗で、勝率6割1分5厘と上昇するものの、藤井四段のそれには及ばない。

   同番組によると、藤井四段はかつて「早指しは早指しの面白さがある。特に苦手だということはありません」(2017年7月のスポニチ記事)と述べていた。田中九段も「羽生さんは、藤井さんが影も形もない時から第1人者。実力ははるかに羽生さんの上のはずです」とした上で、

「勝負はやってみなければ分からない。そこをよく藤井さんは分かっていますね」

と期待を示した。

天才は「早指し」に強い?

   だが、羽生竜王が早指しを苦手としているかといえば、そんなことはない。むしろ羽生竜王は早指しの棋戦に強いことで知られている。

   早指しの代表的な棋戦に、NHK杯戦と将棋日本シリーズ、銀河戦があるが、羽生竜王は、NHK杯で過去最多の10度、将棋日本シリーズで5度、銀河戦で5度の優勝を誇る。こちらは2002年に終了したが、早指し将棋選手権でも3度の優勝経験をもつ。

   そして何より、羽生竜王は朝日杯にめっぽう強い。09年以降に5度、優勝したばかりか、13年から15年まで3連覇。決勝ではいずれも、渡辺明棋王や森内俊之九段といった強豪を打ち負かした。

   「ひふみん」こと加藤一二三九段(77)も、自著の「羽生善治論 『天才』とは何か」(角川oneテーマ21)で「天才の条件の一つとして、『早指し』に強いことをあげたい」と書き、早指しにおける羽生竜王の強さをこう認めた。

「勉強をしている、していないにかかわらず、早く指すことができて、しかも着手が正確で、なおかつ勝つこと──これは、間違いなく天才の共通点である。絶対だ」
「羽生さんにしても私にしても、持ち時間が与えられているから考える、というだけの話であって、最善と思われる指し手は瞬時に浮かぶ」

   若さあふれる藤井四段と、前人未到の境地を開いた羽生竜王。天才どうしの「初対決」の行方やいかに――。