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アニメファン反発 「映画ランキングの対象外に」の理由に納得せず

   日本の映画雑誌の老舗、「映画芸術」といえば毎年1回発表される「日本映画ベストテン&ワーストテン」で知られるが、2017年からアニメ映画をその選考対象から外したことが話題になっていた。

   アニメ映画を除外した理由を18年1月31日発売の最新号で説明をしているが、「映画はカメラの前で人間が演じるもの」などの理由に納得できない人たちからネット上で激しい批判を浴びることになった。

  • 「映画芸術462号」(写真はアマゾンより)
    「映画芸術462号」(写真はアマゾンより)
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「声優が出てきて、いわゆる劇映画じゃないんです」

   「アニメーション作品は対象外といたします」。どうしてこんな決定を下したのか。同誌は映画監督で映画評論家の稲川方人さんの進行で、映画監督の河村雄太郎さん、映画プロデューサーの寺脇研さん、同誌の発行人で映画監督の荒井晴彦さん3人の討議を掲載した。

   まず、映画評論家の吉田広明さんから来たという選考員辞退の申し出メールを紹介し、アニメを除外しては日本映画の現状を正確に反映できない、などと書かれていたとした。

   進行の稲川さんは、昨17年のベストテン1位がアニメの「この世界の片隅に」であり、「映芸」としては何かしっくりこない、どう考えていいのか分からなかった、と明かし、

「単純に、映画はカメラの前で人間が演じるものだと思っているからです。デジタルのアニメは、カメラがないわけです」

とした。それを受けて河村さんは映画を成立するためにはスジ(ストーリー)とヌケ(映像)とドウサ(生身の演技)の3要素が必要だが、アニメにはドウサがなく作り手と演技者の間の戦いのサジ加減は作り手が自在に操る。

「観客に与えるサプライズや感動は、フィジカルな実在である人間を被写体にしなければ生まれません。コンピューターのデータ入力によって調整しながら製造したり消去したりする作業とは一線を画すんです」

と河村さんは語った。荒井さんは最も分かりやすい例として、アニメ監督が監督賞を受賞しているけれども、女優賞、男優賞はどうするのかということであり、

「舞台挨拶でも声優が出てきて、いわゆる劇映画じゃないんです」

と切り捨てた。また、CGを多用した映画があるけれども、いくらバーチャルな加工をしても生身の人間が演じていれば「実写だ」と河村さんは語った。そして、映画スターの名前で観客が劇場に足を運ぶのが映画の魅力の原点だ、とした。

   こうした「アニメは映画ではない」との論調に激しい批判が相次ぐことになった。というのも今の日本映画界はアニメ作品無しには語れない状況で、興業通信社調べによれば17年の興行成績ランキングトップテンにはアニメの「名探偵コナン」「ドラえもん」のシリーズ作品が入っているが実写はゼロ。11位に「銀魂」があるけれども、これはマンガが原作でテレビアニメ化、劇場版アニメ化された作品だ。

アニメ映画に支配されたから、悔しくて対象外にしただけじゃん

   こうした討議の内容を知った人たちは掲示板に、

「アニメーションという技術で映画を作っているだけで、作品に芸術性があるかないかはまた別だろ」
「実写もアニメもやっていることは変わらない。実写=筋書通りに俳優が演じる。アニメ=筋書通りにキャラクターを動かし、声優が演じる」
「明らかにアニメ映画にランキング支配されたから、悔しくて対象外にしただけじゃん。 アニメが嫌いって素直に言えばいいのに」
「役者どもが小銭稼ぎのために見せるインスタントな演技より、貧困にあえぎつつ情熱と鉛筆一本で観客と一分一秒真剣勝負してるアニメーターの方がずっと素晴らしい」

などといったことが書き込まれた。

   そしてこの討議では、「アニメは対象外です」とストレートに書いてしまったため「排除だ!」という批判が出ることになってしまった、との説明もされた。日本映画だけを対象にしていて、なぜ外国映画を選考から外すのかとの声が上がってもおかしくはない、とも。寺脇さんと河村さんは、映画雑誌の「キネマ旬報」が総合商社だとすれば「映芸」は個人経営の専門商社にすぎない。そんな「映芸」が、取扱商品の集中と選択をした結果であり、

「実写かアニメに限らず、こういう範囲で決めていますとはっきりすれば、何の問題もないんじゃないですか」(寺脇さん)

と語っている。