J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

ASKA紹介の突発性難聴「対処法」は危険 耳鼻科医「絶対にマネしてはいけない」

   歌手のASKAさん(59)がブログで、自己流の方法で突発性難聴が治ったというエピソードを明かした。耳たぶの裏を指で何度も押すというもので、読者にも「試してみてください」と勧めている。

   ASKAさんのブログには、「試してみます」「知人に教えました」といったコメントが相次いでいる。しかし、J-CASTニュースの取材に応じた耳鼻科医は、「絶対にマネしてはいけません」と注意を呼び掛ける。その理由は...。

  • ASKAさんのCDアルバム「Too many people」(DADAレーベル)
    ASKAさんのCDアルバム「Too many people」(DADAレーベル)
  • ASKAさんのCDアルバム「Too many people」(DADAレーベル)

ASKA「『突発性難聴』が治ったのです」

   ASKAさんは2018年1月28日のブログで、過去に突発性難聴を患ったことを告白。「実デビュー7~8年目頃だったかな?ある日、突然右耳が聞こえなくなりまして...」と切り出し、当時訪れた病院では「治療法がない」との説明を受けたと振り返った。

   そこでASKAさんは自己流で対処を始めた。耳の中に「物が詰まった」ような感覚があったことから、トイレが詰まった際に使う「すっぽん」(ラバーカップ)を思いついたとして、

「あの(編注・ラバーカップの)原理を、耳に当てはめてみたのです。耳たぶの裏に人差し指を当て、耳の穴に向かって数回連続で素早く押し続けてみたのです。『ぴゅぱぴゅぱ』そんな音がしました」

と説明。その上で、「一瞬、本当に一瞬ですが、(症状が)薄らいだ気がした」ともつづっている。

   結果として、ASKAさんは耳たぶの裏を1時間ほど繰り返し押し続けたところ、耳の感覚が元に戻ったという。今回のブログでは「当時、『治療法がない』と言われていた『突発性難聴』が治ったのです」とも断言している。

   その上でASKAさんは、「もちろん、度合いによっては、この方法でも治らないこともあるでしょう」としつつも、

「僕の友人のケースでは全員元に戻ってます。もし、みなさん『突発性難聴』になられた時には、この方法を、まず試してみてください」

と読者にも同じ方法を勧めている。

   さらに29日のブログでASKAさんは、指で押す箇所を示した後頭部の写真を掲載。続けて、このやり方を実践する際のコツについて、

「要は、塞いで圧縮された耳の穴の空気がポンっと外に飛び出すようにするのです」
「スピードは、『お前は、もう死んでいる』の、『北斗の拳』のケンシロウが、『アタタタタタタタタター!!!!』と、やるスピードを、ちょいと遅くした感じくらいです」

などと説明。ただ、30日には「僕は『この方法で確実に治る』とは、言っていません。『僕をはじめ、治った方がたくさん居る』と、お伝えしているだけです」とも補足していた。

耳鼻科医「何の効果もないでしょう」

   ASKAさんの突発性難聴に関する情報発信を受けて、ブログの読者からはコメント欄に、

「早速、突発性難聴で悩んでいる知人に教えました。ありがとうございます」
「私も最近耳が詰まって、聞こえが悪くなったので耳鼻科に行きました。ASKAさんの方法を試してみようかな」
「この先、私の周りで突発性難聴の人を見かけたら、絶対にこの方法を教えます」

といった投稿が相次ぐことに。一方で、ツイッターなどには、「鼓膜が破れる危険性があるのでは」などと、安易にマネすることは控えるよう注意を呼び掛ける投稿も出ている。

   実際のところ、ASKAさんが紹介した方法は医学的に見てどうなのか。J-CASTニュースは2月1日、耳鼻咽喉科「日本橋大河原クリニック」(東京・中央区)の大河原大次院長に見解を聞いた。

「非常に問題です。絶対にマネしてはいけません」

   取材の第一声でこう訴えた大河原氏。続けて、「(ASKAさんの方法は)骨を触っているだけで、突発性難聴には何の効果もないでしょう」と指摘する。

   そもそも大河原氏によれば、突発性難聴の治療で最も大切なのは、発症後1~2週間以内に適切な治療を受けること。「逆にいえば、その期間を過ぎてしまうと、難聴や耳鳴り、めまいなどの症状に一生悩まされる恐れが高まります」という。

   そのため、今回のASKAさんのブログについて大河原氏は、

「ご本人がやられる分には、個人の自由なので...。ですが、ブログで紹介された方法を信じ、適切な治療を受けるのが遅くなる患者が出る恐れがあります。そういう意味では問題があると言えるでしょう。繰り返しますが、皆さんマネはしないでください」

と強く訴えていた。