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内紛で窮地のジャマイカに、下町ボブスレーが呼びかけ検討 「私たちのソリはいつでも準備が整っている」

   平昌五輪のジャマイカ代表ボブスレーチームが、コーチ辞任に伴って、使用予定のソリを使えなくなるかもしれない。

   ジャマイカチームは日本の町工場が中心となって製作された「下町ボブスレー」を使うことで約2年前から契約していたが、五輪直前で使用拒否し、ラトビアの「BTC」社製のソリに乗り換えた経緯がある。ところがここに来て、そのソリが使えない可能性が。下町ボブスレー側はJ-CASTニュースの取材に「私たちのソリはいつでも準備が整っていると呼びかけようかと相談しています」と明かすとともに、今回辞任するドイツ人コーチについても、その事情を語る。

  • 下町ボブスレーの新10号機(写真提供:公益財団法人・大田区産業振興協会)
    下町ボブスレーの新10号機(写真提供:公益財団法人・大田区産業振興協会)
  • 下町ボブスレーの新10号機(写真提供:公益財団法人・大田区産業振興協会)

「チームにとって破壊的な影響力を持っていた」

   ジャマイカ・ボブスレー・スケルトン連盟(JBSF)は2018年2月14日、ドイツ人コーチのサンドラ・キリアシス氏が辞任したと公式ツイッターで発表した。ジャマイカが出場する平昌五輪の女子2人乗りは、開催が20日に迫っている。

   14日の地元メディア「ジャマイカ・グリーナー」によると、キリアシス氏は自分の所有物だとして競技に使うソリごとチームを離脱しようとしており、連盟は同氏が所有しているとの主張に異議を唱えた。連盟のクリス・ストークス会長は「彼女はチームにとって破壊的な影響力を持っていた。彼女が離脱して、チームの相乗効果は遥かに良くなり、緊張は緩和し、選手たちはより健康的な環境の中で集中できる」とコメントしている。この記事は連盟公式ツイッターがシェアしている。

   また、英BBC(ウェブ版)は同日付で「生涯最も重要なレースは、内紛によって危険にさらされている」とジャマイカチーム内の現況を報じた。

   ジャマイカのボブスレーチームといえば、東京都大田区の町工場など150以上の企業・団体が協力して開発を進める「下町ボブスレー」プロジェクトのソリを平昌五輪で使用すると16年1月に契約し、連携してきた。好成績を収める試合もあったが、17年12月にキリアシス氏が持つラトビアのBTC社製ソリに乗り換えると、平昌五輪直前になって下町ボブスレーのソリ使用を拒否した。

   下町ボブスレー側は18年2月7日に公式サイトで、五輪で自分たちのソリを使うようジャマイカに求める声明を発表。スピードがBTC社製より速いことや、レギュレーションチェックに合格し安全性に問題がないことを主張しており、平昌にソリを持って行っていることなどを伝えている。

   こうした状況で、連盟が下町ボブスレーのソリ使用に再度動いていないか。下町ボブスレーネットワークプロジェクトの担当者は15日昼、J-CASTニュースの取材に

「ジャマイカの連盟から個別に連絡は来ておらず、町工場のみなさんもメディアを通して辞任やソリの件を知りました。我々としては、無理にお勧めはしませんが、お困りであればソリはいつでも準備が整っていると呼びかけをしようかと相談しているところです」

と明かす。

「BTC社のソリを強烈に押していたのがキリアシス氏でした」

   「内紛」という情報も出回っている中、担当者は「今回の辞任についてチーム内の事情は特に入ってきていませんが」としたうえで

「BTC社のソリを強烈に押していたのがキリアシス氏でした」

とも話す。

   キリアシス氏は選手時代、02年ソルトレークシティ五輪のボブスレー女子2人乗りで銀メダル、06年トリノ五輪では金メダルを獲得。世界選手権でも03、04年に銀、05、07、08年に金メダルという輝かしい戦績を収めてきたエキスパートだ。

   下町ボブスレー担当者の話では、キリアシス氏は当初、ジャマイカ代表のジャズミン・フェンレイター選手の「パーソナル・コーチ」として帯同していたとし、チーム全体を率いる立場ではなかったという。それが「いつからか変わったのか、17年11月辺りから全体コーチのような立場になっているようです」と話す。

   17年12月にBTC社製に乗り換えたと先述したが、下町ボブスレー側の7日の声明によると、「欧州への輸送時にドイツでの輸送機関のストライキにより下町ボブスレー10号機が届かず、BTCというソリを調達したという連絡がありました」と、ジャマイカが輸送トラブルに巻き込まれたため急きょ用意したという事情を伺わせる。ただ、「ドイツ輸送会社のストライキは実際にあったものの、ジャマイカ連盟はBTCの最新ソリを用意した上に、ステッカー類も万全であった」といい、この状況に「我々は衝撃を受けました」と不可解さをにじませていた。なおこの声明には、「クリス・ストークス会長は1月20日に『五輪は下町で』と両国大使館に表明しています」との記述もある。

   また、懸念点として持ち上がっている「レギュレーションチェックの通過」について、担当者は「軽微な修正点を指摘されただけで直っているので問題ないというのがこちらのスタンスです。レギュレーションチェックは通常、大会後に実施して違反があれば失格になるというものですが、今回はジャマイカ側が不安を感じているので、それなら現地に持ち込んでいるので平昌五輪前にもう一度しましょうと持ちかけているのですが、返事を頂けていません」と話していた。