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「おるちゅばんエビちゅ」韓国で大人気 懐かしの日本キャラ、なぜ若者の心つかんだか

   韓国で今、日本のある漫画キャラクターが、若者の間で爆発的な人気を呼んでいる。スタンプは大ヒット、コラボ製品が次々と発売され、ショップには開店前から行列が――。

   そのキャラは、伊藤理佐さんの漫画「おるちゅばんエビちゅ」の主人公、ハムスターの「エビちゅ」だ。人気を博したのは1990~2000年代で、日本ではいわば「懐かし」の作品である。そんな「エビちゅ」は、なぜ韓国の若者の心をつかんだのか。

  • 「エビちゅ」グッズの一例。(左)(右下)はロッテリア、(右上)はセブンイレブンとそれぞれコラボ
    「エビちゅ」グッズの一例。(左)(右下)はロッテリア、(右上)はセブンイレブンとそれぞれコラボ
  • 「エビちゅ」グッズの一例。(左)(右下)はロッテリア、(右上)はセブンイレブンとそれぞれコラボ
  • 原作コミック
  • 人気の火種となったカカオトークのスタンプ

かわいいキャラと「大人」な笑い、日本でヒット

   「エビちゅ」は「アクションピザッツ」(双葉社)などで1990年~2007年にかけ連載された。ハムスターの「エビちゅ」と、飼い主の「ご主人ちゃま」らの日々を、かわいらしい絵柄と、過激な「大人向け」のギャグで描く。1999年には、あの庵野秀明さんの企画でアニメ化され、話題を呼んだ。

   とはいえ、アニメの放送から19年、連載終了からも11年が経つ。日本では目立った展開もなく、特に若い世代の間では、それほど知られた作品とは言い難い。

   ところが......。

「キャー!」
「ワーオ!」

   YouTubeで20万回以上再生される、1本の動画がある。所は韓国の街角、K-POPに合わせて踊るのは、5体の「エビちゅ」の着ぐるみだ。丸っこい体を揺らし、短い手足をパタパタと振りながら、リズミカルにステップを踏む。エビちゅたちがかわいらしくポーズを決めるたび、取り囲む観衆から歓声が上がる――。

   そう、海を渡って韓国は今、「エビちゅ」現象の真っただ中なのだ。

「ぬいぐるみに始まり、文具・生活用品・食器・アパレル雑貨など、多くの商品を製作しています。また多くの百貨店、小売店さまからの引き合いがあり、ロッテ百貨店や現代百貨店といった大手百貨店などでのポップアップショップを数多く展開しています」

そう説明するのは、版権を管理する双葉社の担当者だ。これらの特設ショップには開店前から行列ができたり、好評を受けて期間延長が決まったりと、それぞれ大反響を呼んでいるという。

ネットで人気拡散...有名ブランドも次々コラボ

「エビちゅは多くの有名ブランドからも注目されており、これまでにハイマート・ロッテマート・セブンイレブン・LOHB's・SHOOPENなどとコラボいたしました。いずれも大変好評だったと聞いております」(双葉社)

   実際、韓国メディアでは、そのブームの分析記事や商品の人気を伝える記事が、大手紙・朝鮮日報から若者向けのネットニュースまで、次々と掲載されている。

   「エビちゅ」人気の起点となったのは、ネットだ。韓国の百科事典サイト「ナムウィキ」によると、2012年ごろから掲示板やSNSなどで、アニメ版の一場面を切り出した画像が貼られるようになり、話題を呼び始めたという。

   こうした人気に着目したのが、現地企業のコーグル・プラネットだ。双葉社に接触し、正式にライセンスの取得を打診した。「韓国で話題になっているのであれば、『エビちゅ』をより多くの方々に知っていただける新しいチャンスになるのでは」と双葉社も快諾、こうして発売されたのが、通信アプリ「カカオトーク」用のスタンプだ。これが大ヒット、ブームに火が点いた。

「大人向け」の原作をどう展開する?

   人気の秘密はいったいどこにあるだろうか。

「一番は、やはり見た目がとてもかわいらしいからでしょうか。それだけでなく、いつもご主人様の力になりたいと頑張っているのに毎回失敗ばかりして、結局報われない姿がいじらしく、皆さんが『エビちゅ』に感情移入して見ていただいているのかなと感じます」

こうしたかわいさ、「一度見たら忘れないヴィジュアルの強さ」がデジタルと相性がよく、スマホ・ネットの利用率が高い韓国社会と特に相性が良かったのでは、とも担当者は分析する。

   また、展開においても工夫があったという。

「原作のコミックは、元々大人向けの作品でしたので、大人にしか理解しにくい表現が含まれています。それももちろん『エビちゅ』の魅力のひとつなのですが、韓国で展開するにあたっては、よりファン層を広げたいという目的がありましたので、原作の雰囲気を大切にしつつ、『エビちゅ』のかわいらしいヴィジュアルや、いじらしい姿を全面に出す戦略をとりました」

こうした戦略が功を奏する形で、子どもたちや10代前半にもファン層は広がった。

日本にも「逆輸入」、原作者による新シリーズも!

   韓国では電子コミック版が配信されるなど、作品自体にも注目が集まり、さらに「現在、新たなアニメーションの放映を目指している」という。また、中国上陸も果たし、「スマートフォンの着せ替えコンテンツや、電子コミックの配信がスタートしており、今後も注力していきます」。

   日本にもその人気は「逆輸入」、2017年11月の東京・原宿を皮切りに、都内でポップアップショップが複数回催された。現在も、福岡県のスーパースピンズ福岡天神コア店で実施中だ。

   さらに、原作ファンには嬉しい情報もある。

「現在、原作の伊藤理佐先生の『エビちゅ』新シリーズ連載の準備を進めております。韓国でのブレイクを経て、日本でも今後改めて認知を高めていければと思っております」