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大韓機事故で「ルール破り」続出 CAの指示きかず荷物持ち出し、事故機間近で写真...

   2016年5月に羽田空港で大韓航空機のエンジンから出火した事故の報告書が18年7月26日に国の運輸安全委員会から発表された。事故原因はエンジン部品の製造ミスだと推定されているが、大韓航空側の不手際や乗客の不適切な行動も多数明らかになった。

   荷物を持ったまま脱出するなど、客室乗務員(CA)の指示に従わなかった乗客が多数いたことが複数の証言で明らかになっており、報告書では、CAの指示に従うことは「自他の生命を守るために極めて重要」だと訴えている。

  • 2016年の大韓航空機事故では約40人が軽傷を負った(写真は運輸安全委員会の報告書から)
    2016年の大韓航空機事故では約40人が軽傷を負った(写真は運輸安全委員会の報告書から)
  • 2016年の大韓航空機事故では約40人が軽傷を負った(写真は運輸安全委員会の報告書から)

「多くの乗客が荷物を持って脱出」

   事故を起こしたのは羽田発ソウル・金浦空港行きのKE2708便(ボーイング777-300型機、乗員乗客319人)。C滑走路を離陸滑走中に左側のエンジンから出火し、離陸を中止して滑走路に停止。非常脱出中に乗客40人が軽傷を負った。報告書では、エンジン内部の「タービン・ディスク」という円盤状の部品に製造ミスがあり、金属疲労で破断した結果燃料や潤滑油が引火したと推定している。

 

   飛行機から緊急脱出する際には、荷物を持つのは「御法度」。だが、今回の事故では、それに反した乗客が多数いたようだ。報告書では、CAが

「荷物は持たずに、右側から脱出するようにアナウンスし、各客室乗務員も乗客に対して荷物は持たずハイヒールは脱ぐように叫び続けていたが、多くの乗客が荷物を持って脱出した」

と証言し、空港消防隊員は

「R3(編注:右側の前から3番目のドア)の補助者は誰もいなかった。脱出後、乗客たちは機体の近くで写真を撮ったり、電話連絡をしたりしており、空港消防隊員の誘導・指示になかなか応じなかったため、誘導棒により海側の場周道路へ誘導した。多くの乗客はバッグ等を携行しており、中には大きなスーツケースを持っている者もいた」

とも。こういった状況に、報告書では

「非常脱出時には、運航乗務員及び客室乗務員の指示に従うことが自他の生命を守るために極めて重要であることを理解して行動することが望まれる」

と警鐘を鳴らしている。

脱出手順書の冊子が見つからず、タブレット端末から探し出す

   大韓航空側の不手際も多かった。機長は、

「機長は副操縦士に非常脱出チェックリストの実施を急ぐよう要求したが、チェックリストが定位置になかったため、副操縦士はすぐにチェックリストを実施できなかった」

と証言。チェックリスト(手順書)入りの冊子をすぐに見付けることができずに、脱出に手間取ったことが明らかになった。副操縦士の証言によると、

「その後、タブレットの中にチェックリストがあることを思い出し、ダブレットの非常脱出チェックリストを読み上げた」

という。さらに、ビデオの解析などから

「脱出方向にある第2エンジン停止前に非常脱出の指示が行われ、最初のドアが開けられてから、約28秒後に第2エンジンが停止されたものと推定される」

ことも明らかに。

「エンジン停止前に非常脱出すれば、乗客がエンジン後流によって吹き飛ばされる等の危険がある」

と指摘している。この事故を受け、大韓航空では、書類の搭載状況を点検したり、エンジン停止後に脱出するように訓練の手順を改めたりする対策を講じたという。