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店が潰れない?「しまむら神話」 山里亮太、社長を直撃!(3)

しまむら 北島常好社長(左)とJ-CASTニュース名誉編集長の山里亮太
しまむら 北島常好社長(左)とJ-CASTニュース名誉編集長の山里亮太

   埼玉を拠点としながら、最近は東京都心の原宿や丸の内界隈への進出がウワサされている「ファッションセンター しまむら」。

   1回目、都心進出は本当にあるのか、2回目は激安のヒミツを北島常好社長に聞きました。

   3回目は「しまむら」次の一手についてです。というのも、この「しまむら」、最近はアパレルばかりではないようです。

   ベビー用品・子供服や靴、雑貨、そしてことしは神戸に寝具・インテリアの専門店をオープンするなど、業態の多角化に乗り出しています。

   そしてもうひとつ気になるのがお店が潰れない「しまむら神話」について。

   このあたりを、北島社長に直撃しました。

年間で完全閉店は1つか2つ

山里 「しまむら」さんって、お店が全然潰れないですよね? めちゃくちゃ長いことありませんか? 地元(千葉県)へ行くと洋服屋さんって、それこそユニクロとかもですけど、けっこうなペースで閉まっていくんですよ。気がつくと「あっ、ここ閉店したんだ」ってなる。でも、しまむらは「続いてる」って、いつも思うんですよね。

北島社長 しぶといですよ(笑)。でも、ちゃんと見ていただけて、感謝です。店舗数は今、グループで約2000ありますが、年間で完全に閉めるのは1つ、2つですね。

山里 え? それだけですか?

北島 そうですよ。ただ、業態を変えて、改めて出店することはあります。たとえば、新しい寝具の専門店をやりたくて、この5月に神戸の「ディバロ」(靴業態)を、「寝具・インテリア館 Zzz...と(ずっと)」に変えてオープンしました。そういうことはあります。

山里 完全閉店がほとんどないって、レアですよね。なにか秘訣があるんですか。

北島 あるとすれば、それは「約束を守る」ことでしょうか。
土地を借りてお店を建てたり、建物のスペースを借りたりと、そのたびに地主さんとかオーナーさんと契約を結んでいるんですけど、たとえば20年間、この契約で行きましょうとなれば、20年間、そのお約束をきちんと守ります。 そして20年経ったところで、さらにもう1回やりましょうか、って。

山里 長いですね。

北島 長いですよー。でも、地主さんにしてもオーナーさんにしても長く続けることができれば、すごく儲かるんです。
もちろん、20年も経てば建物が傷みますから、そこはお互いに少しずつお金を出して、お店をもう一回きれいにして10年間延長しませんか、とご提案します。そうすると、オーナーさんたちもまた契約してくれる。そうやって、いい関係を築いているんです。 なので、そんなオーナーさんたちの信頼を裏切らないためにも、閉店しません。

山里 なるほど。オーナーさんと話し合いながら、だったんですね。
最近は、アパレルだけじゃなくて、いろんな業態があるじゃないですか。たとえば、番組(編註:日本テレビ系「ヒルナンデス!」内の「3色ショッピング」)でよくお世話になっている「サニーモール西葛西」のお店は、ベビー・子供服の「バースデイ」と、しまむらが併設していますよね。

「しまむら流」出店方法とは

北島 そうですね。おっしゃるように、ベビー・子供服の「バースデイ」は、西葛西にもあります(全国272店舗)。そのほか、女性向けの雑貨&ファッションの「シャンブル」(98店舗)やカジュアルファッションとシューズの「アベイル」(317店舗)。
靴もお店があるんですよ。総合靴店の「ディバロ」(16店舗)はレディースと、その子供とご主人の幅広い層がターゲットです(店舗数は2018年2月末時点)。

山里 いろいろありますね。

北島 それらに加えて、5月には、しまむら初の寝具・インテリア専門店の「Zzz...と(ずっと) 」がオープンしまして。こうして、さまざまな業態をそろえることで、多様化するお客様のニーズに対応するよう、心がけています。

Zzz...と(ずっと)
Zzz...と(ずっと)

山里 専門的なお店が多いですね。たとえば寝具のお店とか、どのタイミングでやろうと考えられるんですか。

北島 靴の新しい業態(ディバロ)を出店してから、17、8年くらい経つんです。それ以来、新しい業態ってオープンしていなかったんですね。だから、そろそろ本気で(新業態の)出店を考えないと、と思っていたところではあるんですが......。
寝具の取り扱いはこれまで、しまむらでコーナーを設けて実験販売してきました。じつはシーツや布団カバーとか、だいたいのお店で置いているんですよ。そうやって、少しずつ寝具コーナーを広げて、大型店ではベッドを入れるなどして、ヒュッと売り場をつくったりするんですね。そこから、スピンオフみたいに外へ出していくのが、「しまむら流」とでもいいましょうか。寝具に限らず、ベビー・子供服や靴、ビジネススーツなどもそんなやり方で進めていました。
ただ、寝具の場合は最初から、これはすごく珍しいんですけど、わりとうまくいったので、今年度(2018年度)後半に、もう一つふたつ売り場を拡大してやってみようかなと考えているところです。

山里 そう言えば、ここ数年は「睡眠」が大きなテーマになっていますよね。テレビ番組で取り上げられて、高機能のマットレスや枕が話題ですもんね。

寝具もやっぱり「しまむら価格」

北島 そうなんですよ。お客様も「睡眠」に対して、かなり意識されています。
最近、「睡眠を科学する」とか、「眠る」ということに対して、みなさん、もの凄くエネルギーもお金も使うじゃないですか。たとえば5万円の枕などはいいお値段ですが、売れています。枕が首周りにピタッとはまって、それで眠ると本当に毎朝スッキリします。そういったアイテムを使って、家にいる時間、とくに眠りとか、リラックスするとかの時間をとても大切にする風潮がだいぶ広がっています。そんな商品をご提案することで、睡眠をもっと追求してもらう、そのきっかけになるかなと考えました。

山里 睡眠ニーズですね。

北島 それに寝具店って意外と身近に少なくて、僕が知っているだけでも、そんなに種類がないんですよ。それこそ100~150坪を超えるような大型店舗、専門の大型店となるとホントにないんです。
それもあって、来るべきタイミングに、我々もきちんと参入できるフレームをつくってやりましょう、という構想が膨らんでいきました。

山里 品揃えは、どのようなものを置いているんですか? 高機能のマットレスとかも、あります?

北島 ほとんど置いていますね。ほぼ、フルアイテム。しまむらでやりきれていないベッド用品とか、高機能寝具もそろえていますよ、「Zzz...と」には。ちょうど夏場で、暑くて寝苦しいけど、少しでも涼しく眠れるように冷感シーツもご用意しています(笑)。

山里 やっぱりお値段も「しまむら価格」なんですよね???(期待)

北島 それがですね、そこは寝具の専門店ということなので、リーズナブルなものもご用意していますが、わりと上位ランクの商品までそろえているんです。

山里 え!

北島 というのも、しまむらのひとつのコーナーでは取り扱いきれない商品を専門的に売ろうという、そのための専門店なのですから、上のゾーン(価格帯)もきちんとやろうと。
たとえば、2万円を下回る羽毛布団を販売しているんですが、それにとどまらず、ワンランク上の3万9800円とか5万9800円とか、いわゆるホワイトグースダウン100%のような高級寝具まで、品揃えの幅を広げて展示販売しています。

山里 高い...ですね。

北島 ですよね。でもね、そうしたら、1万円から2万円くらいのゾーンがわりとスイスイと売れてしまって。そんなことで自信がつきました(笑)。
我々が取り扱っている寝具って、まあまあ強いです。それでも、やっぱり「しまむら」なので、基本的には他所と比べるとびっくりするくらいの値段なんですよ。たぶん、あくまで推測ですが、いろいろと比べると寝具が一番安いかもしれません。しまむらの寝具はホントにお得だと思いますよ。

山里 今、しまむらで買うなら寝具なのか......。

(つづく)

   次回は、「しまむら」の海外展開とECサイトについて。あと、しまむらファッションショーもあります。8月8日(水)公開予定。お楽しみに!



プロフィール

北島 常好(きたじま・つねよし)
しまむら 代表取締役社長
1983年、流通経済大経卒、同年しまむら入社。2009年に取締役、12年台湾「思夢樂」股份有限公司董事長、13年に常務取締役(開発部・店舗建設部統括)、15年取締役専務執行役員を経て、18年2月から現職。
埼玉県出身、59歳。

しまむら
衣料品・日用品などの総合小売りチェーン。中核事業の「ファッションセンター しまむら」をはじめ、ベビー・子供用品「バースデイ」やCASUAL&SHOES「アイベル」、雑貨&ファッション「シャンブル」、靴の「ディバロ」、2018年5月には初の「しまむら 寝具・インテリア館「 Zzz...と(ずっと) 」を神戸にオープンした。
グループ全体で、国内2089店舗。台湾45店舗(いずれも、2018年2月20現在)。中国11店舗(17年12月31日現在)を展開する。