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夏の甲子園で「誤審」指摘が相次ぐ 「雰囲気に流されて...」と不満も

   夏の甲子園(第100回全国高校野球選手権記念大会)の2回戦・横浜(南神奈川)-花咲徳栄(北埼玉)戦(8-6)で、花咲徳栄が最終回に放った内野安打が「アウトだったのではないか?」と誤審の疑問がくすぶっている。

   この試合に限らない。勝敗を左右する終盤、首を傾げてしまうような判定が複数あり、インターネット上では「審判が勝敗を決めるなんて有り得ない」といった言葉も漏れている。「判定が間違っていたとなれば、審判側はその場で覆すべきです」と指摘するスポーツジャーナリストもいる。

  • 阪神甲子園球場
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1点返した9回ウラの「内野安打」

   夏連覇をめざした花咲徳栄は2018年8月14日の2回戦で横浜と激突した。4-8と4点ビハインドの9回ウラ、一死満塁の好機で、打席にはエースで4番の野村佑希投手。インコース高めをバットに当て、ボールは横浜の三塁手の前に転がった。全力疾走の野村はヘッドスライディングすると、一塁送球に対してセーフの判定となった。この内野安打の間に三塁走者が生還し、花咲徳栄が1点を返した。

   だがスロー映像を確認する限り、一塁送球の方が早い。一塁手が捕球した時、打者走者は塁に手が届いていなかった。アウトに見えるのだ。

   複数のユーザーがこのシーンのキャプチャー画像をツイッターなどにアップ。誤審ではないかと指摘したほか、負けている花咲徳栄に有利な判定となったため、

「今のサードゴロ完璧にアウト その場の雰囲気に流されてセーフにしたとしか思えない」
「もう会場の雰囲気ですよね。審判が試合を作りますよね」
「審判が勝敗を決めるなんて有り得ないからな?」
「今のセーフか? 花咲徳栄応援してるほうにしたらありがたいけど、審判はゲームを面白くしたいんか?」

といった不満も続出することになった。

旭川大高のスライディングキャッチが「落球」に

   試合終盤の判定に対する疑問は、6日の1回戦・佐久長聖(長野)-旭川大高(北北海道)戦(5-4)でもあった。旭川大が2-3の1点リードで迎えた、8回表の守備の場面だ。2死走者なしで佐久長聖の2番・上田勇斗内野手が打ち上げた飛球は、旭川大の左翼手・持丸泰輝が地面すれすれでスライディングキャッチ。グラブを高々とあげ、チェンジと思われた。

   ところが塁審は「落球」として安打の判定になった。持丸は一瞬苦笑いを浮かべた。中継したNHKの実況アナウンサーは「うーん、映像ではダイレクトで捕っているように見えますが...」と漏らした。

   勝敗に直結したシーンだったかもしれない。佐久長聖はこの直後、四球で2死1・2塁とすると、その後走者2人を生還させ、4-3と逆転した。旭川大は9回ウラに4-4の同点に追いついたが、延長タイブレークの14回表、1点を勝ち越されて敗北した。8回の左翼の落球判定は「試合を決めた誤審」とネット上でも揶揄され、物議を醸した。

「好ゲームをこんな消極的な幕引きは許さん」?

   6点差を1イニングでひっくり返し、大会史上初の逆転サヨナラ満塁本塁打も記録した12日の2回戦・星稜(石川)-済美(愛媛)戦(11-13)でも疑問が生じた。12回ウラ、済美の一死満塁の場面で、カウント3ボール1ストライクから投げられた5球目は低めいっぱい。打席の代打・徳永幹太の膝より低く入ったようにも見えたが、ストライク判定だった。

   仮にボールならサヨナラ押し出し四球の幕切れ。ネット上では「カウント3-1からの判定には『好ゲームをこんな消極的な幕引きは許さん、きわどいのは全部ストライクとるから振れよ!』という甲子園ルールが垣間見える」と憶測も漏れた。

   徳永が三振に倒れると、8番・武田大和外野手も、フルカウントから同じように低めに入った6球目がストライクとなり、三振でチェンジ。続く13回からのタイブレークで、あの劇的な本塁打が生まれることになる。

   盛り上がりとしてはこれ以上ない展開となり、「あの押し出しの場面しっかりストライク取ってあげて ああいうのを見ると人間がやってる良さもあるっていうのがわかる」などと前向きに捉える向きもある。だが、「明らかにラスト押し出しって球をストライク判定してて高校野球ってクソだなって思った」と腑に落ちないファンは数多い。

「チーム側も、アウトかセーフかの確認要求は許されていい」

   こうした誤審や疑惑の判定について、スポーツジャーナリストの菅谷齊氏はJ-CASTニュースの取材に、

「審判は球審と各塁審で4人います。判定に疑義があれば、審判側はその場で集まって確認作業はすべきでしょう。特にアウトかセーフかは大きな問題です。間違っていたという結論になれば、素直にその場で覆すべきです」

と、審判団による確認作業の必要性を指摘した。また、

「チーム側にも、アウトかセーフかの確認を要求するのは許されていいと思います。選手は一生懸命試合をしているわけですから」

と、対戦する両チームの権限についても考えを示した。

   一方で、ファンや観戦客に対しては、「そういうこともあるのかと、見る側は『寛容さ』を持つことも必要です」と指摘。加えて、

「数々のドラマが生まれ、これだけの人気を博してきた高校野球の歴史には、ジャッジも大きく関わっていると言えます。審判のクセを見抜き、逆に利用するのが戦い方として必要になることもあります。明らかな誤審はもちろんダメですが、審判も人です」

と話す。

   プロ野球では「リクエスト」、米大リーグでは「チャレンジ」というビデオ判定制度が導入されており、高校野球にも必要ではないかという声は根強い。だが菅谷氏は、「最終的には全て『機械化』しろという話になってくるかと思いますが、高校生がアマチュアでやっている競技です。そんなにお金をかけられるスポーツではないでしょう」との見解を述べていた。