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鳥人間「絶対王者」、補助員に「飛び降りろ!」に批判続々 読売テレビ「本気ではなくプライドの表現」

   手作りの飛行機で空を飛ぶ「鳥人間コンテスト」で、絶対王者と呼ばれる男性(48)が、失敗の記録が残らない「失格」にするため、メンバーに高さ10メートルから「飛び降りろ!」と指示した。

   その様子が日本テレビ系の放送で2018年8月29日夜に流れると、ツイッタ―上などで批判が相次いだ。これに対し、主催者の読売テレビ(大阪)は、J-CASTニュースの取材に対し、男性は本気で言ったわけではなくプライドの表現だったと説明した。

  • 鳥人間コンテストの公式サイト
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別のチームでは、補助員が10メートル下に落下

   滋賀県内の琵琶湖で7月末に行われた41回目の鳥人間コンテストは、台風12号の影響で突風が吹く荒れたコンディションになった。

   ビルの3、4階に当たる高さ10メートルの滑走路のプラットホームから湖に向けて飛行機を飛ばすが、各チームとも、テイクオフには苦しんだ。プラットホームが雨で濡れ、助走に失敗するチームが続出したからだ。

   「あっと、今誰か落ちたか?」。動力を使わずグライダーのように空を飛ぶ「滑空機部門」で、首都大学東京の学生チームがテイクオフすると、こんなアナウンスが流れた。

   見ると、補助員の学生1人が足を滑らせて、プラットホームの先端から転げ落ちていく。後で流れた映像では、学生は、1回転しながら10メートル下の湖面に落下して水しぶきが上がるほどだったが、すぐに水上バイクのレスキュー隊に助けられた。

   学生チームは、学生記録を更新する飛距離を飛んだ。しかし、司会の羽鳥慎一アナは、補助員が落ちたということで、ルール上は失格ということになると告げ、学生らは泣いて悔しがった。

   続いて、過去に13回も優勝した絶対王者と呼ばれる男性のチームが、プラットホームにスタンバイした。

「そしたら、失格でさ、記録残らなくない?」

   男性は、1年前に2位に終わった雪辱を期して、今回のために機体を改良し、1年間かけて準備してきたと意気込んだ。

   そして、補助員とともにプラットホームを駆け抜けて飛ぶと、直後から左方向に傾いて失速、そのまま湖面に突っ込んだ。風がやや強めに吹いており、台風の突風で煽られてしまったらしい。

   湖面では、すぐに男性が泳いで出てきた。「ケガは?」「ケガない?」と声がかかるが、レスキュー隊のボートに乗り込んだ男性は、「何?今の」と納得がいかない様子だ。

   いきなり立ち上がってプラットホームに顔を向けると、「飛び降りろ! おーい、おーい、飛び降りろ!」と右手を振って補助員らに合図を送る。男性は、再度叫んだ後、「そしたら、失格でさ、記録残らなくない?」と笑っていた。テレビでは、補助員らが黙ってうつむいている様子が流された。

   放送後には、ツイッター上などで、男性が10メートルの高さから飛び降りるように指示していたとして、疑問や批判の声が相次いだ。「全然笑えない」「発言にドン引きした」「飛び降りてその人が怪我したらどうすんだよ」と書き込まれ、炎上状態になっている。

   読売テレビの総合広報部は8月30日、男性の「飛び降りろ!」という呼びかけについて、次のように説明した。

過去には、落下して2週間以上の内出血のケースも

「危険は十分承知で、『飛び降りろ』との発言は、本気で飛び降りろと思っておっしゃったのではなく、失敗に終わったフライトに対して記録を残したくないという彼のプライドが表現されたものだと考えています」

   補助員落下で失格とするルールについては、「ギリギリまで粘って機体を飛び出させようとあえて飛び込む補助員が出ないよう、危険を回避するために設けたものでもあります」とした。そして、「およそ60人のレスキュー隊を配置するなど、競技にあたっては万全の安全対策を行っています」と説明している。

   過去に鳥人間コンテストで補助員になった男性にJ-CASTニュースが取材すると、この補助員経験者は、プラットホームで足を滑らせて、今回の首都大学東京の補助員のように、1回転して湖面に落下して失格になったと明かした。胸を強く打って2週間以上の内出血のケガをしたという。

(J-CASTニュース編集部 野口博之)