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大谷翔平がセカンドオピニオン求めた医師とは 角界も信頼の「駆け込み寺」

   右肘靱帯(じんたい)の手術を勧められているエンゼルス・大谷翔平が、セカンドオピニオンを日本で求めていると米経済誌フォーブス(電子版)が2018年9月16日(日本時間17日)、伝えた。同電子版によると、古巣日本ハムのチームドクターで、東京・同愛記念病院院長・土屋正光医師による診察を受けたいと球団に話しているという。土屋医師は昨秋、大谷の右肘のPRP治療を行っている。PRP治療とは、再生療法の一種で、自らの血液から抽出した多血小板血漿(たけっしょうばんけっしょう)を注射する治療法である。

   大谷の右肘手術の可能性を探る前に、まずここに至った経緯をまとめてみたい。大谷が海を渡る前の昨秋、大谷の右肘靭帯を診察した土屋医師は靭帯損傷の程度を3段階のうちの「グレード1」と診断。「グレード1」とは違和感がある状態のもので手術の必要はないとされ、この時はメスを入れないPRP治療を受けた。これはあくまでもMLBのマウンドに上がるための「予防的措置」であり、周囲からの不安の声はなかった。

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野球に関しては「かなり慎重」な側面

   靭帯の新たな損傷が発覚したのが、開幕から2カ月後の6月8日(日本時間9日)。右肘の内側側副靱帯の損傷で、故障者リスト入りしたと球団が発表した。6月6日(日本時間7日)のロイヤルズ戦で右肘に違和感を覚え、球団が故障者リスト入りを発表する前日6月7日(日本時間8日)にPRP治療を受けていた。この時の右肘の状態は、靭帯が部分断裂しているが機能している状態の「グレード2」。渡米前よりも右肘の症状は悪化していた。

   ここでもまた右肘にメスを入れることなくPRP治療を選択し、9月2日(日本時間3日)のアストロズ戦で先発。88日ぶりにMLBのマウンドに立ち、2回を無失点に抑えたものの、突如急速が落ち始めた3回に2点本塁打を浴びて降板した。この登板から3日後に右肘靭帯に新たな損傷が発覚し、医師から靭帯再建手術(通称トミー・ジョン手術)を受けることを勧められた。

   右肘にメスを入れるか否か、大谷と球団との話し合いが行わる中、エンゼルスのマイク・ソーシア監督が「来年、彼は投げないだろう」とフライング発言。大谷が最終決断を下す前のコメントだったが、これはすでに球団内で手術の方向で方針が固まったということを示すもの。大谷が出した答えを球団が容認したものとみられる。

   大谷がセカンドオピニオンを求めるのは、自身が下した判断の後押しがほしいと推測される。大谷は同愛記念病院の土屋医師に全幅の信頼を寄せているといわれる。シーズン終了後に帰国し、土屋医師の見解を今一度聞いてから靭帯再建手術に臨むシナリオだろう。

   日本のプロ野球関係者は「大谷はあの若さでしっかりと自分の意見を持っている。性格はおおらかだけど野球に関してはかなり慎重。肘に関しても、色々なことを自分で調べて勉強している。その中で土屋先生を選んだのだから、相当信頼しているはず」と言う。

あの曙復活させた実績も

   土屋医師とはどのような人物なのだろうか。同愛記念病院の院長である土屋医師は、球界はもちろん、角界でも靭帯の権威として古くから知られている。大相撲の国技館が蔵前にあるころから相撲部屋とのつながりがあり、高砂部屋とは特につながりが深いといわれている。国技館が両国に移転してからも関係性は続いており、同愛記念病院が両国国技館に隣接した場所にあることから、本場所中に靭帯を損傷した力士の「駆け込み寺」ともなっている。

   当時、高砂部屋系列の東関部屋に所属していた元横綱曙もまた、土屋医師の手によって復活した力士のひとり。長年、靭帯損傷によって両膝の痛みに悩まされていた曙だったが、土屋医師の治療によって回復し、2000年九州場所で復活優勝を遂げた。球界のみならず角界での確かな実績が、大谷の信頼に結びついている。

   米国の医師が手術を勧めていることから大谷の右肘の状態は、靭帯が断裂した状態で手術を要する「グレード3」に近い「グレード2」だと推測される。現時点で土屋医師が手術を勧めるかどうかは不明だが、手術を否定するとは考えにくい。また、球団は投手として1年の猶予を容認する意向を見せており、打者としての来季の展望は明るい。最終的な判断を下すのは大谷本人であるが、周囲の環境は整っており、手術に向けて大きな障害は見あがらない。