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書籍「コンビニオーナーになってはいけない」を店頭に並べたコンビニ 「ブラックジョークではない」その真意

   「コンビニオーナーになってはいけない」なんて本を、現役のコンビニオーナーが「おススメ」している―――?

   2018年10月19日、あるユーザーがツイッターにこの本が並んだ店内の様子をアップ、「こんなブラックジョーク効いたファミマ初めてだわ」と一文をつけて投稿すると、ツイートは瞬く間に拡散した。

  • 店長おすすめの「コンビニオーナーになってはいけない」(高中隆行さん提供)
    店長おすすめの「コンビニオーナーになってはいけない」(高中隆行さん提供)
  • 店長おすすめの「コンビニオーナーになってはいけない」(高中隆行さん提供)

「自分で読んで、本当にお勧めしたいと思った」

   投稿された写真は、一見なんの変哲もないファミリーマートの雑誌・書籍売り場の光景だ。ところがそこに並んでいるのは、『コンビニオーナーになってはいけない』(コンビニ加盟店ユニオン・北健一著、旬報社)。コンビニの労働環境などを取り上げた書籍だ。しかも、「オーナー店長のおすすめ」というPOPまで付けられている。

   この投稿を見たユーザーからは、様々な声が寄せられている。

「なってる本人が言っちゃてるよ」
「体を張って笑い取りに行ってる」
「ダイイングメッセージでは、、、、」
「後悔しとるんやろか...。」

   ツイッターの様子を見ていたのか、写真のファミリーマートの店長本人が「取り上げ頂き、ありがとうございます。残念ながら、ジョークではないんですよねぇ~」と、この投稿にリプライ(返信)を送っている。

   J-CASTニュースは2018年10月22日、そのご本人こと、高中隆行さん(54)を取材した。高中さんはフランチャイズ経営で、千葉県の四街道駅北口店の店長を約2年半、千葉南三丁目店は約5年務めている。

   高中さんによれば、「コンビニオーナーになってはいけない」を「おススメ」にしたのは、「ブラックジョークのつもりではないんですよね。内容を事前に聞いていて、本当にお勧めしたいと思ったからです」だと話した。同時にコンビニを巡る諸問題に「関心を持ってほしい」とも話しており、ツイッターやインスタグラムに売り場の様子をあげたのも、そのためだという。本はアマゾンで10冊購入して店頭に並べたところ、22日17時までに3冊売れている。

「若い人だったら経験としてやるのはいいけど...」

   高中さんは実際に、「コンビニオーナーになってはいけない」と思っているのだろうか。

   この問いに対し、高中さんは「オーナーになって良かった」という気持ちが「2割、3割」だと回答した。前職で大手専門店グループに勤めていた高中さんは、「雇われる側」であった当時より「雇う側」である今の方が、「精神的には楽」だという。しかし、その一方で、体力面ではかなり大変なようだ。

「私のところは夜勤に入ってくれる従業員がおり、私が夜勤に入ることはないですが、他店舗ではオーナー自ら入るところが多いと聞きます」

   そんな理由もあってか、高中さんは、「若い人だったら経験としてやるのはいいけど、儲けようと思ってるならやめた方がいいです」と話し、年長者にはあまりお勧めできないとのことだった。

   問題のツイートはかなり拡散されているが、ファミリーマート本社からは、何か連絡があったのだろうか。21日にはツイートの拡散を知った営業所の所長が高中さんのもとを訪れたという。「こういった行為をするのはあなたもやめたいということですか?」という旨の質問を受けたが、高中さんは「現時点ではオーナーを辞めるつもりはないが、店に出てる時間と収入のバランスが悪い」「そんな契約条件を改善したい」と訴えたと話した。

ファミマ本社「経営者の判断を尊重」

   しかしコンビニオーナーが「コンビニオーナーになってはいけない」という本を店頭に並べても大丈夫なのか――。J-CASTニュースは10月24日、ファミリーマート広報部にも取材した。

   広報担当者はこのような本を並べることに対して、「独立した加盟店の経営者の判断を尊重させていただいてる」と話した。店長が自身で買った本を並べたことに関しても、「加盟者の契約条件に基づいて決定しております」とのことだった。

   また、高中さんも指摘した長時間労働への対策も聞いたところ、

「揚げ物用の大型フライヤーやセルフレジの導入など、オペレーション負荷の軽減や店舗の効率化を行っています」

と回答した。