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ドコモでも、ソフバンでもなく「KDDI」だった理由 楽天連携の背景を読む

   KDDIが楽天の持つスマートフォン決済や物流のインフラを活用する代わりに、通信設備を一定期間、楽天に貸し出す。楽天は2019年秋に携帯電話事業に参入するため、KDDIにとっては競合関係になるが、設備を貸し出すことによる「副収入」に加え、非通信分野のノウハウを吸収できる利点は大きいと判断したようだ。

  • 楽天の目論見とは?(1月撮影)
    楽天の目論見とは?(1月撮影)
  • 楽天の目論見とは?(1月撮影)

ともに「経済圏」目指す両雄

   両社の目指す姿は、重なり合う部分が多い。単一事業にとらわれず、通信、Eコマース、金融など、生活に必要な様々な分野を自社グループで囲い込む戦略を掲げており、KDDIは「au経済圏」、楽天は「楽天エコシステム(経済圏)」とそれぞれ名付けている。

   それぞれに得意分野、不得意分野はある。KDDIは、契約件数が約5300万件に上る業界2位の携帯電話会社だ。携帯電話事業を中心に着実な成長を遂げており、年間の営業利益は1兆円に迫る。

   だが、「非通信分野」の事業は弱い。生命保険・損害保険・住宅ローン・決済といった金融サービス、総合ショッピングモール「Wowma!(ワウマ)」を通じたEコマースサービスをてがけているが、知名度は高くない。携帯契約件数が頭打ちとなり、政府からの「値下げ圧力」も強まる中、非通信分野の育成は急務となっている。

「兆」単位のコストかかる基地局整備

   一方、楽天は、ショッピングモール「楽天市場」を中心とする約9870万人の会員基盤が強み。EC分野は米アマゾンに攻め込まれているが、金融サービスを含めた総合力で勝負する。QRコードを使ったスマホの決済サービス「楽天ペイ」は、この分野での利用者が最も多いとされる。

   楽天の最大の課題は携帯基地局整備で、兆円単位のコストがかかり、数年単位で時間を要する。2019年秋の参入時に全国でサービスを展開するには、ひとまず、既存の事業者の通信設備を借りる必要があった。

   このように、それぞれの弱みを補う形で、今回の提携が実現した。KDDIは、2019年4月から、バーコードやQRコードを使ったスマホ決済サービス「auペイ」を開始する。その際、楽天グループが契約している全国約120万店で、楽天とauの相互利用を促進し、普及に弾みをつける。さらに注文から配送までを一括管理する楽天の物流サービスを2019年4月から、「ワウマ」でも利用できるようにする。

ドコモはdポイント拡大中、ソフバンは非通信主力

   一方、楽天は、通信ネットワークを借り受けるローミング協定を締結。東京23区、大阪市、名古屋市を除く、全国エリアでKDDIの通信ネットワークを使う。契約期限は2026年3月末。それまでに楽天は自前で基地局を整備し、順次切り替えていく。

   楽天の参入決定以来、組む既存事業者はどこか、高い関心を集めた。NTTドコモが最有力だとみる業界関係者は多かったが、ドコモは既に「dポイント」を中心に非通信事業を拡大している。ソフトバンクグループは、非通信事業が主力となっており、楽天から吸収できるノウハウはない。最も相乗効果がありそうなのが、KDDIとの組み合わせだった。通信会社の勢力図が将来どうなるのか、今回の提携が大きく影響しそうだ。