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「インド」に翻弄されるスズキ株価 それでも未来は明るい?

   「トンネル」を抜ける日はそう遠くない――?

   スズキの株価が下落基調となっており、2018年11月2日には年初来安値を更新した。主力のインドで自動車販売が足踏みしたりインドルピー安に見舞われたりするなどの逆風があり、業績にブレーキがかかったためだ。ただ、長期的にはインド経済は成長するとみられている。当面は足元の経済指標などに株価も左右されそうだ。

  • インド子会社「マルチ・スズキ」の公式サイト
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「足踏み」を市場見逃さず

   2日の株価急落は1日の取引終了後に発表された2018年9月中間連結決算が材料となった。一見、決算の内容自体は悪くない。営業利益は前年同期比14.8%増の1984億円、純利益は30.7%増の1361億円となり、いずれも過去最高を更新した。問題となったのは2018年7~9月期の業績と、2019年3月期通期の業績予想の修正だった。

   2018年7~9月期の営業利益は、前年同期比6.6%減の819億円。為替が101億円の減益要因となっており、このうち半分以上(59億円)がインドルピーによるものだった。

   堅調な景気を背景に米国で利上げが続いた影響で、新興国の通貨が下落を続けており、インドルピーも例外ではない。スズキにとってはインドルピーから円に換算する利益が目減りするほか、インド国内に輸入する燃料や部品の調達費もかさむ。また、インド経済が洪水などによってやや停滞したことも影響し、インド国内の四輪車の販売台数は4~6月期(46.4万台)に比べ7~9月期は45.5万台と1万台近く減少した。

   4~9月期の半年でみると前年同期比11.3%増の91.9万台ではあるのだが、4~6月期まで2桁成長してきたのに足踏みしたことを市場は見逃さなかったわけだ。四輪車でみれば世界販売の約半分を占めるインドの動向がスズキの業績に与える影響は大きい。

「上方修正」でも売られた理由は

   通期の業績修正については、上方修正ではあった。営業利益は従来予想より100億円多い3500億円、純利益は従来より150億円多い2200億円。純利益については減益予想から前期実績2157億円を超える増益予想に転じた。しかし市場予想の平均(2481億円)に届かない修正だったことが失望売りを呼んだのだった。

   スズキもその辺りは意識していて、業績修正のニュースリリースで、7~9月期は4~6月期より「増収増益幅が縮小する減速決算」だったと、力強い上方修正ではない理由を説明している。

   2日の株価は取引開始直後から急落、一時前日終値比10.4%(587円)安の5056円まで売り込まれた。当日高値(5518円)が前日安値(5532円)を下回る「窓をあける下落」でもあったが、その乖離は14円にとどまった。

インドの成長力なお続きそう

   2日の終値も前日比2.5%(142円)安の5501円まで戻しており、「売られすぎでむしろ買い場」と判断した投資家も多かったとみられる。とはいえ、その後も2日終値(5501円)を下回ることが多く、上場来高値(7680円)をつけた8月7日のころのような勢いはみられない。

   国内外の証券各社は夏以降、スズキの目標株価を引き下げているが、おおむね強気の格付けを据え置いており、インドの成長力やスズキの底力を高く評価しているようだ。野村証券も1日付のリポートで「中期的にインドやパキスタンの自動車市場が大きく拡大するとの見方に変化はない」と記した。10月のインドの新車販売が前年同月比6%増と4カ月ぶりにプラスに転じるなど明るい材料も出ている。株価は足元のインドの経済指標などをにらんだ展開になりそうだ。