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「3G消滅」の思わぬリアクション KDDIが22年終了を発表したら...

   「5G時代」の到来が近づく中、その2世代前の「3G」をめぐる動きが、ある企業の株価に影響を与えているようだ。KDDIである。

   KDDIの株価は2018年11月半ば、「7連騰」を記録した。その後も微減を挟みつつ、28日には2719円に。29日は下落に転じたものの、比較的順調な流れだ。その要因の一つとみられているのが、16日に発表した第3世代(3G)の携帯電話サービス終了である。

   ただ、政府による通信料金の値下げ圧力とこれを受けたNTTドコモの値下げの動きは依然としてKDDIにとっての先行き不透明感を醸し出しており、上値の重い展開となっている。

  • 一つの時代が終わる(画像はイメージです)
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ガラケー時代を作った企画

   株価が連続で上昇したのは12日(月)から20日(火)にかけての7営業日。大方の中間決算発表が終わるなか、順調に増益を果たす有力内需株として改めて投資家の物色先となっていたところ、「3G終了」のアナウンスが株価を押し上げた。ただ、上昇率は7日間合計で5.1%(125円)にとどまった。

   KDDIは2003年に3Gサービスを始めた。ドコモの「iモード」など、「ガラケー」で楽しめるデータ通信の本格化に寄与した規格で、一部のスマホにも対応している。ただ、ガラケーの利用者が減少する中でガラケー契約者がほとんどを占める3G利用者も減少したため、2022年3月末に終了することにした。終了時期を明示した通信会社はKDDIが初めてだ。

   3Gを終了することは対応基地局の維持コストを削減することになるため、株式市場は好感した。ちなみに、その約2週間前の11月1日に発表した2018年9月中間連結決算は、売上高が前年同期比1.9%増の2兆4622億円、営業利益が3.4%増の5611億円、純利益が4.9%増の3454億円だった。auブランド契約者の減少、新料金プランのキャンペーン割引などによって通信料収入は減ったが端末関連収支の改善などによって営業増益を確保するというまずまずの内容だった。

「ドコモ値下げ」はどう影響?

   実は最近、KDDIの株価には大きな動きがあった。中間決算と楽天との提携(これも市場に驚きを与えた)を同時発表した11月1日の前日、10月31日にドコモが通信料金を2019年4~6月に2~4割引き下げると発表したのが、そのきっかけだ。

   もともと菅義偉官房長官が8月、日本の携帯電話料金について「今より4割程度下げる余地がある」と発言して以降、政府による値下げ圧力が続いている。これを受けてドコモが具体的な値下げ時期と幅を公表したインパクトは大きい。「KDDIは追随値下げに追い込まれる」との見方から株が売り込まれ、11月1日の終値は前日比16.1%(454.5円)安の2360円となった。当日高値(2465円)が前日安値(2772.5円)を307.5円も下回って大きな窓をあける展開は市場の驚きを表現したともいえる。

   KDDIは1日の決算発表の記者会見で高橋誠社長が「従来比で最大3割値下げした新プランを導入済み」と述べて追随値下げを否定する一方、順調な決算や相乗効果が期待される楽天との提携を発表したが、2日の終値は前日比2.1%(50円)高の2410円と戻りは鈍かった。

   値下げできると繰り返す官房長官の発言やこれを受けたドコモの対応を見れば、「本当にこのまま値下げに動かずに済むだろうか。仮に値下げせずに済んでもその場合は顧客が流出するのではないか」という市場の疑念が消えていない。そのため、「7連騰」も今一つ勢いに欠けるものとなった。

   年明け以降、ドコモの新たな料金プランの具体的な内容が公表されるはずだ。そうした中でKDDIの株価が上昇気流に乗るのは容易ではないとの見方も強い。