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社員のキャリア形成 模範企業10社を厚労省が表彰

提供:厚生労働省

   厚生労働省が主催する「グッドキャリア企業アワード2018」が、平成30年11月27日に東京・時事通信ホールで開催された。

   同賞は、従業員の自律的なキャリア形成支援について、他の模範となる取り組みを行っている企業などを表彰する賞で、今年度は「大賞」に5社、「イノベーション賞」に5社の計10社を選出。それぞれ賞状とトロフィーが贈られた。

  • 大賞を受賞した5社の代表者と鈴木厚生労働事務次官(中央)
    大賞を受賞した5社の代表者と鈴木厚生労働事務次官(中央)
  • 大賞を受賞した5社の代表者と鈴木厚生労働事務次官(中央)

パネルディスカッションで具体的取り組み披露

基調講演を行ったLIFULL執行役員の羽田幸弘・人事本部長
基調講演を行ったLIFULL執行役員の羽田幸弘・人事本部長

   表彰式では鈴木俊彦厚生労働事務次官の挨拶(大臣代読)に続き、表彰状の授与、審査の総評、LIFULL執行役員の羽田幸弘・人事本部長による「社員が自律的に挑戦する組織のつくりかた」をテーマとした基調講演、休憩をはさんで、「グッドキャリア企業―社員が成長できる企業―とは」とのテーマでパネルディスカッションが行われた。

   パネルディスカッションでは、法政大学キャリアデザイン学部の坂爪洋美教授がコーディネーターを務め、この日受賞した企業10社のうち4社(KMユナイテッド、コニカミノルタ、UTエイム、東邦銀行)のパネリストが各社の取組事例を紹介した。

パネルディスカッションでコーディネーターを務めた法政大学キャリアデザイン学部の坂爪洋美教授
パネルディスカッションでコーディネーターを務めた法政大学キャリアデザイン学部の坂爪洋美教授

   KMユナイテッドは、ICTを活用した一流職人からの技能伝承と、セルフ・キャリアドックを軸とした多様な人材の育成について発表。これに対し、坂爪教授は「人を育成する方法は無限に広がり得ることが伝わってきた」と講評。 続いて、コニカミノルタが、時代の要請に対応した自律的なキャリアビジョンの実現を、本人・上司・会社の三位一体で支援する取り組みを発表。坂爪教授は取り組みの内容について、「毎年毎年ブラッシュアップされている点が素晴らしい」と講評した。

   UTエイムは、無期雇用や転籍制度をベースとした派遣労働者の中長期的キャリアの総合的できめ細かな支援について発表。坂爪教授は、「派遣の方はともすれば成長機会を逃しがちですが、その機会を提供しつつ、なおかつ、将来を見せていくことを見事にマッチングさせた取り組み」と講評。 東邦銀行は、「ダイバーシティ・マネジメント」に基づく、従業員の多様なキャリアデザインの設定について発表。坂爪教授は、「東邦銀行さんの取り組みは年に数回聞かせていただく機会があるが、そのたびに新しい取り組みをなさっている」と日ごろの努力を評価していた。

坂爪教授が総括で4点指摘

   パネルディスカッションの総括として、坂爪教授は4点を指摘。第1に、「従業員を育成する立場の人、学びを提供する人も同時に学び続けなければいけない」と、教える人も常に上手になっていかなければならない点を強調した。次に、「自社という壁を越えたキャリア支援」。学習のリソースは社外にあっても良いという点を指摘した。

   3点目は、「『働き方改革』を実行した結果、時間が空くが、その空いた時間をどう学習に結び付けていくか」。その時間の活用の仕方を従業員に示していくべきであると指摘。最後に、「『One on One』をいかに実現させていくか」。従業員が「私は会社について本音で話せる」という関係性を作ることが自律的なキャリアの土台になると指摘。その話す対象が誰になるか(社外のコンサルタント、社内の上司、上司以外)は各社異なるが、必須のことになるであろうと語った。また、「今大事なことは何なのか?」を受賞された企業は常に考えており、そうした事が今回の受賞に繋がったのではといった説明もあった。こうしたやりとりに来場者は熱心に聞き入り、大変盛況なパネルディスカッションであった。

●受賞した企業はつぎのとおり

大賞受賞企業(5社)

大賞受賞:株式会社アシックス

受賞理由:次世代リーダーを育成する選抜型プログラム「ASICS Academy」の実施や、個人のキャリアアスピレーションに合わせた海外派遣。また、女性社員を対象とした、「管理職になる自信がない」「育児との両立ができるか不安」など、女性特有の課題に向き合ったキャリアデザイン研修の実施が評価された。

大賞受賞:株式会社KMユナイテッド

受賞理由:「キャリア修得の時短」を目指すための適切なキャリア支援のプログラムやロードマップの作成、「チャレンジシート(厚生労働省の推奨するジョブカード様式準拠)」を活用した経営幹部と従業員による面談、外国人や女性の円滑なキャリア形成の支援が評価された。

大賞受賞:コニカミノルタ株式会社

受賞理由:各自が「3年後のありたい姿」を描きながら、自己の棚卸しと今後1年間の能力・キャリアの開発目標と計画する「CDS(Career Development Support:自己申告)」の実施、全従業員を対象に節目となる年齢(30・40・50・55歳)でのキャリアデザイン研修、公募型自己啓発教育「コニカミノルタカレッジ」など、多面的なキャリア支援が評価された。

大賞受賞:東海東京フィナンシャル・ホールディングス株式会社

受賞理由:社員一人ひとりが自己啓発ニーズに応じて自由にコースを選択できる「カフェテリア研修」と、研修の成果を昇格等に反映させることを目的とした「資格マイレージ制度」の導入、社内公募制度を活用した自律的なキャリア形成の促進、若手社員が「金融のプロフェッショナル」として成長できるよう、AFP資格の取得を推進している点が評価された。

大賞受賞:UTエイム株式会社

受賞理由:社内「キャリアパートナー」(管理担当者の8割が認定を取得)による面談、顧客企業への転籍を支援する制度「Next UT」の推進、論理的思考や問題解決、会計などビジネススキルやマネジメントが学べる「スーパーマネージャースクール」、未経験からエンジニア職への職種転換を支援する「エンジニア育成研修」などが評価された。

イノベーション賞受賞企業(5社)

イノベーション賞:コネクシオ株式会社

受賞理由:新卒社員とメンターそれぞれから月報を人事に提出させ、早期退職の兆候があるといったサインを発見した場合は、早期に対策を実施。また、100科目以上のeラーニングを正社員・非正規雇用問わず全従業員に無料で提供し、正社員登用や社内での昇格の際に指定科目を修了することを課すなど昇格・登用制度と学習の連動によりチャレンジを促進している点が評価された。

イノベーション賞:白鷺電気工業株式会社

受賞理由:キャリアコンサルタントの資格を持つ社員が年2回の個別面談を実施し、キャリアビジョンの設定の支援を従業員に実施。また、30代~40代の中堅社員から「中期経営計画策定メンバー」を3年ごとに選抜し、社長と共に経営者の視点で考えることができる社員を育成している点が評価された。

イノベーション賞:株式会社東邦銀行

受賞理由:新入行員が模擬店舗で受講するロールプレイングをはじめとする「2か月間研修」の実施、テレビ会議システムを活用し、全店へのリアルタイム配信が可能な講座「TOHO Morning School & Evening School」の実施、30・40・50歳時に行う「ライフプラン研修」の実施が評価された。

イノベーション賞:株式会社ナンゴー

受賞理由:研修費用の原則全額会社負担(金額の上限なし)、従業員の研修中、他の従業員がその業務をフォローできるようにするため、各自の業務内容の共有出来る仕組みを構築したり、技術力向上のため、加工に関する社内テストを月1回実施、社員同士のコミュケーションツールの1つとして、感謝の念を手書きでつづる「サンクスカード制度」の導入が評価された。

イノベーション賞:社会保険労務士法人ハーモニー

受賞理由:社員を6、7名単位の1つのチームに振り分け、毎週のチームミーティングなどを通じて目標達成への課題の確認、月1回のチーム横断での「コンサル勉強会」、半年に1度の異業種研修の場「ロウムカフェ」の開催、さらに、2016年4月からは社会保険労務士試験合格者へのお祝い金制度を導入した点などが評価された。