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10代の「性の誤解」を打ち砕く NHK本気の性教育番組が反響

   「性にまつわる誤解を打ち砕く番組」――。真正面から「性」について考えた「ハートネットTV」(NHK Eテレ)の放送が、インターネット上で大きな反響を呼んでいる。

   番組では「教えて!性の神さま」をテーマに、若年層の悩みや疑問を、スタジオのタレント・ぺえさん、ゆきぽよさんらと共に考え、最後に専門家の知見を交えた答えを提示。「避妊はピルとコンドーム、どっちの方がいいのですか?」など直球のテーマが、真剣ながらも軽妙なトークで語られていく内容は、視聴者に衝撃を与えた。J-CASTニュースはNHKに放送の経緯について聞いた。

  • NHK Eテレの「ハートネットTV」に反響が広がっている(画像はNHK公式サイトから)
    NHK Eテレの「ハートネットTV」に反響が広がっている(画像はNHK公式サイトから)
  • NHK Eテレの「ハートネットTV」に反響が広がっている(画像はNHK公式サイトから)

「処女を卒業する時まったく痛くなかったんですよ」

   「今日はすごい収録になりそうね」。2018年12月3日放送の「ハートネットTV」は、ぺえさんのこんなセリフで始まった。10~20代の男女から寄せられた性に関する200の疑問から8問をピックアップし、それぞれについてスタジオトークしていく。

   1問目は「タンポンで処女膜は破れないのですか?」という疑問。ゆきぽよさんは

「周りからは『すごく痛い、処女膜が破れて超痛い』と聞いていたんですけど、ゆき、処女を卒業する時まったく痛くなかったんですよ。だから、処女膜というものは存在しないと思うんです」

と実体験を交えて意見を述べていた。

   その後ナレーションで、「処女膜は膣の入り口にある、ひだのようなもの。膜が張っているのではなく、破れるようなものではありません。真ん中が2センチほど空いていて、タンポンはここを通るのです。処女であろうとなかろうと、女性に処女膜はずっとあるものなのです」という答えを、女性気のイラスト付きで示している。

   「カミングアウトしたいけど、気持ち悪く思われそうで親に言えません」というLGBTの悩みには、ぺえさんが自身の経験を明かした。

「私も面と向かって親にカミングアウトできたのは3年前...2年前か。親に言う前にテレビで言っちゃったの。オンエアされる前に伝えたかったのね。迷惑かかるかもしれないから、ごめんねって伝えたかったんだけど...放送日を迎えちゃって。親が連絡くれて『よく言ったね、覚悟を決めたんだね。背中を押すよ』って言われて、心救われて」

   その上で「ある程度の覚悟を持ったうえでカミングアウトするのが、うまくいくやり方なのかなと思う」と自身の見解を示していた。番組では「カミングアウトはゴールではありません。そこから色々なことを乗り越えていく人生が続きます。カミングアウトしない選択肢もあります。心に秘めたままの人も大勢います」とナレーションが入っていた。

「日本の保健体育で必修なことだと思うわ」

   扱う悩み・疑問は以下のように多岐に渡った。

「女子のマスターベーションはよくないのですか?」
「避妊はピルとコンドーム、どっちの方がいいのですか? 両方使う必要があるのですか?」
「ペニスは大きい方が女性は快感を得やすいのですか?」
「好きな相手とセックスしたくなりません。なぜみんなセックスしたがるのですか?」

   いずれも地上波ではほとんど扱われてこなかったような内容だが、性教育の重要なテーマといえる。出演陣のトークや、性器のイラストも交えた説明、さらに放送時間が20時といわゆるゴールデンタイムであったことなども相まって、

「今日のハートネットTV、全員必見だろ。性にまつわる誤解を打ち砕く番組。処女膜、女性のオナニー、ピルとコンドーム」
「ハートネットTVでやった性教育こそ日本の保健体育で必修なことだと思うわ」
「性について話をする時はただゲスい いいづらい エロいやつって思われるから真面目に話をする機会ってなかなかない 親子で見られないのがほとんどだろうな この番組はいい機会だよ」

といった反響がツイッターであがっている。

「誤った情報に触れ、そのまま信じてしまう実情がある」

   NHKはなぜ今回の企画を制作・放送したのか。広報担当はJ-CASTニュースの取材に対し5日、

「今、中高生の多くが、性の悩みなどをネットで調べて誤った情報に触れ、そのまま信じてしまう実情があると多くの学識経験者などが指摘しています。こうした状況を踏まえて、高校生や学識経験者などに参加してもらいプロジェクトチームをつくり、10代に必要な性の情報は何か・どうやって伝えたらいいかを考える番組を4月から11月まで5回にわたって放送しました。この番組での議論やホームページに寄せられた意見も踏まえて、今回の番組を制作しました」

と回答した。200問から選んだ8問については「誤った情報を簡単に取り込みかねない環境にあることを踏まえて、プロジェクトメンバーの会議で選びました」と、関心の高さや情報の錯綜しがちな分野を重視したという。

   ツイッターなどでは上記のように好意的な反響の一方、「『みんななんでそんなにセックスがしたいのか』はノンセク(編注:ノンセクシュアル)のところまで詰めて欲しかった」といった要望の声や、「女の子に『セックスは好きですか?』はたとえ番組の進行で必須でもセクハラに踏み込んだようなヤバさを感じる」といった指摘もあがっている。番組では、ぺえさんの「セックスは好き?」という質問に、ゆきぽよさんが「好きです。好きな人とだったら気持ちいいです」と答える場面があった。

   こうした声に対し、NHKの広報担当は、「今回の反響を踏まえて、性について正しい知識を伝えられる番組づくりに生かしていきたいと考えております」と答えている。