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巨人・上原、疑問の再契約 新手の「プロテクト外し」との見方も

   巨人から自由契約となった上原浩治投手(43)が2018年12月14日、自身のツイッターを更新し、巨人と再契約することを明らかにした。今シーズン終了後の10月に左膝のクリーニング手術を受け、直後に自由契約となった。上原は現役続行を目指して米国でリハビリを続けていた。

   今季、メジャーから10年ぶりに日本球界に復帰。中継ぎとして36試合に登板して勝ち星なしの0勝5敗、防御率3.63に終わった。手術後に自由契約となり、その去就が注目されていたが、この日、自身のツイッター上で「来年もジャイアンツにお世話になります。いろんな意見があるのは承知ですが、応援してくれると嬉しいです。よろしくお願いします」と、巨人と再契約することを報告した。

   ところが上原の巨人との再契約を巡って、ネット上ではFA制度のルールの盲点をついた「プロテクト外し」だという声が殺到。プロ野球関係者からも同様の指摘があり、今後、FA制度のルール改正の必要性を訴える声も上がっている。

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広島へのリスト提出からわずか...

   上原が左膝のクリーニング手術を受けたのが10月23日。これを受ける形で巨人は10月29日に上原の自由契約を発表した。翌日の30日には、上原が自身のブログを更新し「ちゃんと監督と話し合っての決断です」とコメント。球団からの一方的な通達ではなく、球団、上原双方合意の上での自由契約であったことを主張した。

   今回の再契約にあたっては、ルール上、何も問題はないが、そのタイミングが議論を引き起こす引き金となった。巨人は今オフ、FAで西武から炭谷銀仁朗捕手(31)、広島から丸佳浩外野手(29)を獲得。西武、広島はそれぞれ、巨人から金銭補償、人的補償プラス金銭補償のいずれかを求めることができ、巨人はこれに備えて両球団に人的補償に伴う28人のプロテクトリストを提示する必要があった。

   すでに巨人は7日までに西武に、広島には12日までに28人のプロテクトリストを提示。その直後の再契約だっただけに、上原の自由契約は「プロテクト外し」が目的だったのかと、巨人に疑いの目が向けられている。

   前球団がFAの人的補償を求めた場合、28人のプロテクトリストから外れた選手が獲得の対象となる。リスト外でこの対象とならないのは、FA権取得により外国人枠の適用外になった外国人選手と、直近のドラフトで獲得した新人選手のみ。当然、支配下登録外の自由契約の選手も対象外となる。

   プロテクトリスト外の支配下選手で獲得の指名を受けた選手は、これを拒否することは出来ない。当該選手が拒否した場合、選手はプロ野球選手としての資格を停止され、他球団への移籍はもちろんのこと、グラウンドに立つことが出来なくなる。

背番号「19」が空いたタイミングも...

   再契約のタイミングとともに「疑惑」の要因のひとつとなるのが背番号だ。現在、上原が入団から10年間、背負っていた「19」が空いており、来シーズンから背負うことが見込まれる。

   この背番号「19」を巡っては、まず11月25日に菅野智之投手(29)が「19」から「18」に変更となり、今季、上原が背負っていた「11」を山口俊投手(31)が付けることが今月4日に決定。原辰徳監督(60)の背番号シャッフルにより、「19」が空きとなった時点でファンの間では上原の巨人復帰説が囁かれていた。

   今季、未勝利とはいえ、巨人にとって上原は功労者。現役選手として期待する一方で、日米通算20年のプロキャリアを持つベテランの経験は、若手選手にとって生きた手本となる。また、将来的にコーチとして入閣する可能性もあることから、上原が支配下登録されていれば28人のプロテクトリストから外すという選択肢は考えにくい。

   過去には、巨人はドラフト制度のルールの死角を突いた形で江川卓氏の獲得に動いた例がある。これは「空白の一日」事件として社会問題にまで発展。結果、巨人が取った行動は無効とされ、江川氏は一度、阪神への入団が決まり、後に小林繁氏とのトレードという形で巨人に入団した。この事件は球界の「負の歴史」として刻まれている。

   巨人は上原を自由契約としてからわずか46日での再契約となる。上原の左膝が順調に回復し、来季のメドが立ったと判断しての再契約と見られる。ルール上、何ら問題はないものの、ファンから「プロテクト外し」の声が多く上がっているのも事実で、悪しき「前例」になりかねないと危惧する関係者もいる。