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高橋大輔「復活2位」手放しで喜べない 浮き彫りになった男子フィギュアの「課題」

   フィギュアスケートの全日本選手権は2018年12月24日、男子フリーが行われ、ショートプログラム(SP)2位の高橋大輔(32)=関大KFSC=がフリー4位の151・10点をマークし、合計239・62点で2位に入った。SP1位の宇野昌磨(21)=トヨタ自動車=が、フリーでも1位となり、大会3連覇を達成した。

   「2番でびっくりしたし、違和感があった」。戦いを終えた高橋のこの言葉が全てを物語っていた。2012年の全日本選手権以来となる表彰台。4年ぶりの現役復帰を果たしたばかりで、国内最高峰の大会での2位は、高橋にとっては喜びよりも「驚き」と「違和感」の感情が大きく上回った。

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合計50点近く差をつけられ...それでも2位

   高橋が抱いた思いは当然のことだろう。SPで2位につけたとはいえ、この日のフリーでは計7度のジャンプのうち5度のジャンプでマイナス評価を受けた。冒頭に挑んだ4回転トウループは3回転となり、3連続ジャンプでは最後の3回転サルコーで転倒。この日はジャンプの精度を欠き、ジャンプの得点だけで宇野に30点以上もの差を付けられる結果となった。

   トップの宇野とは合計で49.48点の大差を付けられての2位だった。4年ぶりの現役復帰、32歳の年齢などを考慮すれば、高橋がこの日に見せた演技は称賛に値するものだが、現実に目を向けると、羽生結弦(24)=ANA=、宇野に続く第三の選手がおらず、若手の台頭も見られないという結果だった。また、3位の田中刑事(24)=倉敷芸術科学大大学院=に至っては、宇野に52.65点差を付けられている。

   ここ10年間で、全日本選手権で1位と2位の差が40点以上開いた大会はない。採点基準の変更などがあるため、あくまでも参考程度に過ぎないが、ここ最近で一番点差が開いたのは、2014年の35.58点。トップの羽生が2位の宇野を圧倒したもの。歴史的に見ても今回の49.48点差は異例の数字で、しかも絶対的エース羽生を欠いての大会だっただけに男子フィギュアスケートが抱える問題が、より一層鮮明な形で表面化した。

   男子は、高橋から羽生への世代交代はスムーズに進んだ。全日本選手権での交代劇を見ると、2011年に高橋が1位で、羽生は3位に入り、初の表彰台に立った。翌年の大会では羽生が高橋を抑えて初優勝を果たし、2015年まで4連覇を成し遂げた。2016年から今大会まで羽生は欠場しており、その穴を埋めるように宇野が3連覇を達成。羽生に続く2番手として着実に成長している。

「高橋大輔が一番驚き、かつ悲しく思っている気がする。」

   ネット上のファンの間では、高橋の復活劇を称える一方で、羽生、宇野のツートップと若手の実力の差に、改めて男子の層の薄さを指摘する声も上がっている。

   「層の薄さってのが深刻かもしれない。」「高橋大輔が一番驚き、かつ悲しく思っている気がする。」「今回は若手で4回転をきちんと決められたのは14才の佐藤選手だけと言うのが本当に寂しいし、将来に不安を感じる!」「下が育ってきてない証拠。」

   フリーでは、ジャンプでのミスをステップと表現力でカバーした高橋。この日の結果を受けて世界選手権代表に選出されたが「世界と戦う覚悟が持ちきれていない」との理由で辞退し、「若い選手が(世界の)舞台を経験することの必要性も大きい」と代表の座を若手に譲ることの意義にも言及した。

   4年ぶりに復帰した32歳の高橋の2位入賞で、思わぬ形で課題が露呈した男子フィギュアスケート。若手の台頭が待ち望まれるなか、依然としてその注目度は高く、羽生が欠場したとはいえ、12月24日放送(フジテレビ系)の男子フリーは平均15・4%をマーク。瞬間最高は高橋がフリー演技を終えた場面の23・9%(いずれも関東地区、ビデオリサーチ調べ)だった。