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「ベストセラー文芸書」不在の2018年 上位の顔ぶれには「既視感」も

   出版不況が続いているが、2018年の年間ベストセラーは「マンガ系」が上位を占めた。

   出版取次最大手の日本出版販売の集計(2017.11.26~2018.11.24)によると、トップは、『漫画 君たちはどう生きるか』(吉野源三郎、 羽賀翔一著、マガジンハウス)。2位はコミックエッセイ『大家さんと僕』(矢部太郎著、新潮社)。文芸関係ではベスト10に入る作品がなかった。

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『ざんねんないきもの事典』はシリーズでヒット

   トップの『漫画 君たちはどう生きるか』は17年8月発売。すでに17年のランキングでも19位に入っており、18年になってさらにその勢いが加速した。文章だけの『君たちはどう生きるか』も9位にランクインしている。

   『大家さんと僕』は週刊新潮に連載されているエッセイマンガを17年10月に単行本化したもの。「1階には大家のおばあさん、2階にはトホホな芸人の僕」という設定のほっこりマンガだ。手塚治虫文化賞短編賞を受賞し、8月末には58万部を突破した。お笑いコンビ「カラテカ」のボケ担当でもある矢部さんの実話的作品だ。マンガとはいえ、読者対象は大人を想定している。

   このほか上位には、17年もベスト10に入っていた『ざんねんないきもの事典』(高橋書店)が3位に、『モデルが秘密にしたがる体幹リセットダイエット』(サンマーク出版)が4位と、既視感のあるラインナップになっている。

   『ざんねん』は「続編」が6位に、「続々編」が12位に入っており、シリーズでの健闘ぶりが際立つ。監修者の今泉忠明さんは自伝『気がつけば動物学者三代』(講談社)、さらに『わけあって絶滅しました。』(ダイヤモンド社)も出すなど引っ張りだこだ。

テレビで紹介されて復活した作品も

   文芸関係では、13位に『かがみの孤城』(辻村深月著、ポプラ社)、15位に『おらおらでひとりいぐも』(若竹千佐子著、河出書房新社)が入った。17年には、『密蜂と遠雷』(恩田陸、幻冬舎)が3位、『騎士団長殺し』(1・2、村上春樹著、新潮社)が5位に入っていたのに比べると、やや寂しい。新書では『極上の孤独』(下重暁子著、幻冬舎)が14位と気を吐いている。

   珍しいところでは7位にノミネートされている『頭に来てもアホとは戦うな!』(田村耕太郎著、朝日新聞出版)。14年の出版だが、18年に入って、テレビのバラエティ番組で紹介され復活、勢いが付いた。

   健康ものでは、『医者が教える食事術 最強の教科書』(牧田善二著、ダイヤモンド社)が5位に、『ゼロトレ』(石村友見著、サンマーク出版)が8位に入っている。このほか児童書の『おしりたんてい』(トロル著、ポプラ社 )シリーズが、16位、19位に。テレビアニメにもなったので人気が続きそうだ。

   17年は『うんこ漢字ドリル』が大ヒットしたが、子ども向け作品は『ざんねんないきもの』『おしりたんてい』に引き継がれている。