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金正恩氏に「3月1日」ソウル訪問報道 南北がそろって対日批判?

   韓国と北朝鮮の間で合意されていた北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長のソウル訪問が、2019年3月1日前後で検討されていると韓国メディアが1月16日に相次いで報じた。3月1日は、1919年に日本統治下の朝鮮半島で独立運動が起こった記念日(3・1節)で、19年は100年の節目にあたる。

   北朝鮮の指導者によるソウル訪問は初めてで、仮に両首脳が3・1節に一緒に記念の言葉を述べれば「歴史的な重みが増す」と韓国メディアは指摘している。ただ、こういった場面で両首脳が顔を揃えるとなれば、徴用工問題や慰安婦問題をめぐって南北が歩調をそろえて対日批判を展開する可能性もある。

  • 独立運動の記念日に南北首脳会談は行われるのか(写真は18年9月の首脳会談の様子。労働新聞から)
    独立運動の記念日に南北首脳会談は行われるのか(写真は18年9月の首脳会談の様子。労働新聞から)
  • 独立運動の記念日に南北首脳会談は行われるのか(写真は18年9月の首脳会談の様子。労働新聞から)

2回目の米朝首脳会談と連動

   2018年9月に平壌で行われた南北首脳会談後に出した共同宣言の最後には、

「金正恩国務委員長は文在寅大統領の招請によって近いうちにソウルを訪問することにした」

という1文が盛り込まれている。韓国側は18年中の実現を目指していたがかなわず、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は19年1月10日の記者会見で、

「私は必ず実現されると考えている。しかし、2回目の米朝首脳会談と連動しているので、2回目の米朝首脳会談が先に行われれば、それ以降の金正恩委員長の答礼訪問は、よりスムーズに進めることができるのではないか」

などと見通しを示していた。

   実現の時期が焦点になるなか、国民日報とソウル新聞が19年1月16日、大統領府(青瓦台)が、正恩氏の「3・1節」に合わせたソウル訪問を「推進している」「案が浮上している」などと政府関係者の話として伝えた。両紙は、その意義を

「100周年を南北が一緒に記念するという歴史的な重みが加わるだろう」(ソウル新聞)
「歴史的な意味に加えて民族的な意味も振り返ることができる」(国民日報)

などと解説している。

日本の反発は織り込み済み?

   ただ、ソウル新聞によると「まだ南北間の具体的協議は進んでいない」といい、その実現可能性は不透明だ。文大統領が指摘しているように、米朝首脳会談の結果を受けて南北首脳会談が開かれ、非核化などの問題が議論される見通しだ。そのため、米朝首脳会談が2月中旬以降にずれ込めば、「3・1」に合わせた南北首脳会談は困難になる。ただ、その場合でも、金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常任委員長らによる代表団がソウルを訪問する「プランB」もありうるという。

   なお、国民日報は

「このような(日韓関係が悪化する)中で、南北首脳の大々的な行事が3・1節に行われると、日本の戦争犯罪が世界的に喚起される可能性が高いため、日本政府が不快に感じる可能性がある」

と指摘しており、日本の反発はある程度織り込み済みのようだ。

   青瓦台の金宜謙(キム・ウィギョム)報道官は、1月17日の記者会見で、2回目の米朝会談が行われて初めて正恩氏のソウル訪問に向けた議論ができるとして、「その前に議論することも構想することもない」と発言。現時点では報道内容を否定している。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)