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月裏側着陸で湧く中国 アメリカへの「貢献」語る科学者

   2019年1月11日、中国国家宇宙局は、世界で初めて月の裏側に着陸するという無人探査機・嫦娥(じょうが)4号の任務が完全に成功したことを対外的に公表した。人類が月着陸に成功してから既に半世紀。地球から見ることができず、神秘のベールに包まれてきた月の裏側に、人間の目が届いた年明けだった。中国メディアはほとんどお祭り騒ぎで「偉業」を伝える。宇宙を巡る「国際貢献」の姿勢を示す科学者もいる。

  • 中国のネットに掲載された、鵲橋(右端)と地球、月の位置イメージ
    中国のネットに掲載された、鵲橋(右端)と地球、月の位置イメージ
  • 中国のネットに掲載された、鵲橋(右端)と地球、月の位置イメージ

「5戦5勝だ」

   2007年の嫦娥1号打ち上げ以来、月裏側の探査に向けて打ち上げられた衛星は5機。月面の3次元画像取得、有用元素の含有量や地殻の解析など主な任務だった1号。それに続く2号(2010年)、3号(2013年)、そして2018年の中継通信衛星・鵲橋(じゃっきょう)。それらは「4号着陸成功」に向けての着実な布石で、こうした経緯を「5戦5勝、連戦連勝」と伝えるメディアもある。

   直接地球との通信ができない月裏側との交信に向けた準備がとにかく難しかった。地球から見える軌道に打ち上げられ、同時に月の裏側と電波を中継できる鵲橋が動き始めてようやく、地球からの指令電波が嫦娥4号に届き、逆に4号から、月の裏側の映像を地上に送ることが可能になったのだ。この先も、今年末予定の5号打ち上げに続き、6号以降3機が打ち上げられる。宇宙への積極姿勢は続く。

「大国の態度と風格、見せる時」

   中国中央テレビが伝えた、月探査プロジェクトの総リーダー、国家国防科学技術工業局の呉偉仁博士のインタビューは、興味深いものだった。中国による鵲橋打ち上げを知った時、ある米国の科学者が国際会議の席上、協力を求めてきたのだという。鵲橋の使用期間を延ばせるかなどを尋ねてきた、と述べた。

「私はその米国人に尋ねたんです、使用期間が延びたとして、それで何をしたいのかとね。しぶしぶという感じで彼は答えました。我々が月探査をする際に使うことができれば、と。私は『問題ない』と答えましたよ」

   呉博士はさらに、嫦娥4号の計画確定後、着陸時間と地点を事前に伝えてほしいと米側が求めてきたことも公にした。米国には、自分たちの衛星を通じて月の裏側着陸についての正確なデータを収集する狙いがあったという。

   中央テレビの記者は中国と米国との目下の「様々な関係」を考えれば、伝えない選択もあっただろうと突っ込んだ。それに対して、呉博士は「我々は大国の態度と風格を見せねばならない」と答えた。多大なコストと時間をかけて「宇宙強国」の道をめざす中国は、米側のコスト削減に協力する構えがあることを示したわけだ。

   「最近何百年間、中国は遅れており、科学技術については西側の国々から恩恵を受けてきた。いまや我々の経済も発展し、科学技術も世界的な水準に追いついたのだから、世界の科学技術の発展に貢献せねばならない時だと思います」とも。

   呉博士によれば、月の裏側探査については、多くの国が中国との協力をもちかけており、「嫦娥4号には5、6種類の国際協力のミッションがある」という。「国際協力」の行方を日本も注目するべきだろう。

(在北京ジャーナリスト 陳言)