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激化する「第三のビール」戦争 先頭走るキリン、二段構えのサントリー、王者アサヒは...

   2018年は「ストロング」が席巻した酒市場だが、2019年は「第三のビール」をめぐる覇権争いが激化しそうだ。

   ビール大手各社が価格の安い「第三のビール」を強化する。2018年に大ヒットしたキリンビールの第三のビール「本麒麟」に続こうと、各社が新商品を投入する。2019年秋の消費増税を控え、消費者の節約志向が強まることも見越し、各社は低価格を武器に、ブランドの浸透を図る考えだ。

  • 2018年大ヒットとなった「本麒麟」
    2018年大ヒットとなった「本麒麟」
  • 2018年大ヒットとなった「本麒麟」

「金麦」新製品と復活「マグナムドライ」

   2種類の大型商品を投入するという異例の対応を取るのは、サントリービールだ。2019年2月5日に新発売する「金麦<ゴールド・ラガー>」は、「金麦」ブランドとしては5年ぶりの通年新商品。うまみ成分(たんぱく質)を多く含む二条大麦麦芽を使用し、「ザ・プレミアム・モルツ」で培った製法を採用することで、「力強い飲みごたえとコク」を実現したという。赤色のパッケージを採用し、金メダル風のブランドロゴを配して、「本格感」を演出した。アルコール分は6%。発売13年目となる元祖「金麦」(アルコール分5%)は、中身、パッケージとも大幅にリニューアル。「金麦<糖質75%オフ>」(アルコール分4%)も刷新し、「金麦」ブランド全体で、前年比8%増となる3750万ケース(1ケースは大瓶20本換算)の販売を目指す。

   もう一つは、「マグナムドライ<本辛口>」だ。かつて発泡酒として販売していたブランドだが、第三のビールとして4月2日に復活する。2018年は第三のビールの販売量が前年比2%減の4192万ケース、ビール類全体も3%減の6299万ケースと振るわなかった。2019年は6460万ケースと強気の目標を掲げる。

2018年は苦戦したアサヒとサッポロ

   王者、アサヒビールは2019年1月29日、「アサヒ 極上<キレ味>」を新発売する。「シャープなキレ」と麦100%の飲みごたえが特徴で、年間300万ケースの販売を目指す。アサヒの2018年のビール類販売は7%減の1億4720万ケースと精彩を欠いた。中でもクリアアサヒを中心とした第三のビールが足を引っ張っただけに、新商品で巻き返しを図る。

   サッポロビールは4月2日、「サッポロ 本格辛口」を新発売する。「史上最強炭酸」と銘打ち、「本物の辛口」を実現したとアピールする。サッポロは2018年、「麦とホップ」などが振るわず、第3のビールが14%減の1217万ケース、ビール類全体で8%減の4466万ケースと大苦戦だった。2019年は4450万ケースの販売を計画する。

「本麒麟」パワーアップで迎え撃つキリン

   キリンは新ブランドを出さず、「本麒麟」のリニューアルなどでブランドに磨きをかける。本麒麟は「ビールに期待されるコクと飲みごたえ」を追求し、過去10年の同社新商品で最大のヒットとなった。2018年の第三のビールは前年比29%増の5520万ケースを販売。ビール類全体でも5%増の1億3510万ケースと、大手4社では唯一プラスを維持し、アサヒに迫っている。2019年も前年超えを目指す。

   各社の新商品は「本格」「飲み応え」「辛口」などをキーワードとし、ビールに近い味わいを目指したのが特徴。2019年10月の消費増税で節約志向が強まれば、第三のビールの需要拡大が見込める。価格が高い自社のビールから流れることも想定されるが、それでも「他社に持っていかれるよりもマシ」と考えているようだ。