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大相撲、ケガ人多すぎ ジム偏重と四股軽視の関係

   大相撲初場所が負傷者続出で危機的状況に陥っている。10日目の相撲でケガを負った西前頭13枚目琴勇輝(27)=佐渡ヶ嶽=、東前頭15枚目千代の国(28)=九重部屋=が11日目から休場することが決定。幕内では横綱鶴竜(33)=井筒=、大関栃ノ心(31)=春日野=に続いての休場となり、西十両二枚目隆の勝(24)=千賀ノ浦=の11日目からの再休場も決まった。

   5日目の横綱稀勢の里(32)=田子ノ浦=の引退に始まり、横綱鶴竜、大関栃ノ心、小結御嶽海(26)=出羽海=(11日目から再出場)と、番付上位陣の休場が相次ぐ中、休場の波はついに平幕までをも飲み込んだ。8勝2敗で賜杯争いの一角にいた千代の国、3役返り咲きへの足固めの場所だった琴勇輝。さらには再入幕を目指していた十両の隆の勝も負傷により再休場を余儀なくされた。

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休場5力士の負傷箇所、全員が下半身

   幕内の休場力士の負負傷箇所をみてみると、5人の力士全員が下半身である。鶴竜は古傷の右足首、栃ノ心は右太ももの肉離れ、琴勇輝、千代の国、御嶽海に至っては3人とも膝の負傷が直接の原因で休場している。膝を痛めた力士らは取組後、しばらく動けないほどのダメージを受け、支度部屋まで自力で歩けずに力士用の車椅子で運ばれるシーンがテレビ中継で見られた。

   膝を負傷しやすい要因のひとつとして力士の大型化があげられるが、相撲関係者は「四股不足」を指摘する。近年ではフィットネスジムで筋力トレーニングに励む力士が増え、上位力士のなかでは一般化しつつある。かつて器具を使用した筋力トレーニングは相撲の稽古には不要であるという時代もあったが、角界ではトレーニングの近代化が進んでいるようだ。

   筋力トレーニングの先駆者とされるのが、元横綱千代の富士である。ただ、千代の富士の場合、肩の脱臼癖を補うための筋力補強であり、現在のパワーをつけるために特化した筋力トレーニングとは趣旨に若干の差異がある。前出の相撲関係者は、近代的なトレーニング法に警鐘を鳴らし、四股の重要性を主張する。

「硬い筋肉ではケガをしやすくなる」

「ジムでの筋トレでも確かに下半身は鍛えられます。しかし、それは相撲に必要なものではなく、ただ単に筋力を付けるもの。相撲に必要なのは、柔軟性のある下半身です。四股は相撲独特のもので、重心を移しながら四股をしっかり踏むことで柔らかな下半身を作り上げ、体幹を鍛えることもできる。いくら筋トレで鍛えても硬い筋肉ではケガをしやすくなる。若い力士は相撲の基本である四股をもっと踏むべき」

   過去の大横綱は四股を踏むことの重要性を心得ており、稽古のほとんどを四股に費やしていた横綱もいたという。平成の大横綱、貴乃花は晩年、稽古場では番数を減らす一方で入念な準備運動から、ゆっくり時間をかけて四股を繰り返すことで柔軟な下半身を維持してきた。

   初場所では相次ぐ休場者により、幕内の取組が日に日に減少する緊急事態にある。11日目から御嶽海が再出場するという朗報もあるが、これに引き換え2人の力士が休場。負傷者は幕内、十両に止まらず、幕下以下でも見られ、それはまるで勢いを増しているかのようだ。前出の関係者は「協会の将来のためにも、改めて稽古のやり方を見直す必要がある」と訴えた。