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バカッター動画の「再拡散」、企業がとれる法的対応は? 弁護士に聞いてみた

   カラオケルーム「ビッグエコー」の従業員のユニフォームを着た人物が不適切行為をする動画が出回った騒動で、運営会社の第一興商(東京都品川区)は2019年2月7日、新たにお詫び文を発表した。

   動画は2カ月前、既に出回り、会社側が対応を進めていた。動画が新たに拡散されたことに、同社は「厳正に対応していく方針であります」と強い調子でコメントした。

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企業側の法的対応はどうなるのか

   J-CASTニュースが19年2月8日、同社経営企画部の広報担当者を取材したところによると、今回、新たに動画が拡散されたのを受け、同社は7日に警察と相談。法的手段を取るかどうかについては「検討中」と答えるに留めたが、「無責任にされても困る」と困惑気味だ。

   一度ネット上に掲載された動画が新たに拡散され、風評被害が広まる懸念--。こうした場面に直面した際、企業側による法的対応はどうなるだろうか。グラディアトル法律事務所の刈谷龍太弁護士に話を聞いた。

   拡散投稿された動画への対応として、企業側は掲載サイトに削除請求や発信者情報開示請求をすることが考えられ、「動画が企業の社会的評価を低下させるものとして、企業の名誉権を侵害していると主張することになる」。一方で今回の場合は、「(企業への)社会的評価の低下はある一方、(動画を拡散した側に)違法性がないのでは」とも指摘する。

違法性の有無を決める「3つの条件」

   判例上、「(1)公共の利害に関する事実にかかわり、(2)もっぱら公益を図る目的で、(3)暴かれた事実が真実であった場合」には、違法性がないとされる。今回のケースに照らし合わせれば、「これだけニュースにもなっているので、公共の利害に関する事実についてのものといえるし、動画がねつ造でないかぎり、暴かれた事実が真実ともいえるだろう」と持論を展開した。

   残る「公益を図る目的があれば、違法性がない」という点については、刈谷弁護士は「解釈が分かれるが」と前置きしたうえで、今回の事例では「公益を図る目的は認められない」と断言した。

「既に動画をあげられて、企業も警察も対応に動いている以上、拡散する必要性はないといえる。社会的評価を低下させる違法な投稿動画として、掲載サイトに削除請求や発信者情報開示請求をしていくことになるだろう」(刈谷弁護士)

(J-CASTニュース編集部 田中美知生)