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メルペイは、キャッシュレス決済の「ひとつの完成形」だ 「お得より便利」メルカリの決断

   フリマアプリ「メルカリ」に2019年2月13日、新機能「メルペイ」が搭載された。メルカリ(東京都港区)の子会社、メルペイが三井住友カードと事業提携してできた決済サービスで、開始当初はiOS端末(iPhone7以降など)先行で提供される。

   一見すると、メルカリで品物を売って得た「売上金」を、コンビニなど街のお店でも使えるようにするサービスだ。メルカリユーザーのみがターゲットに感じられるが、詳しく分析してみると、それ以外の人にも使うメリットはありそうだ。

  • タッチ決済できるのがポイント
    タッチ決済できるのがポイント
  • タッチ決済できるのがポイント
  • 利用するたびプッシュ通知が届く

ライバルと一線...iDとの連合

   キャッシュレス決済業界で先行する「PayPay」や「LINE Pay」などが、還元率による「お得さ」を売りにしているなか、メルペイ(以下、提供済みのiOS版を指す)は「利便性」に重きを置いている。最大のポイントは、Apple Pay(アップルペイ)に対応していること。iD(アイディー)加盟店のカードリーダーにタッチするだけで、スムーズに決済できる。PayPayなどのQRコード決済では、いちいちアプリを立ち上げ、客か店員が読み取る必要がある。コード式の方が導入コストは安いが、快適さはカードリーダー式が勝る。

   すでに知名度のある「iD」ブランドを採用しているのは強みだ。この1年ほどで新たな決済サービスが立て続けに始まり、店頭で「〇〇Payでお願いします」と言っても、店員が手間取るケースも多々ある。「メルペイで~」ではなく、「iDで~」と言えるのは、隠れたメリットになり得る。また、一から開拓しなくても、スタート時から約90万か所が加盟しているのも、運営会社とユーザー双方に有益となる。

   クレジットカードを持っていない人にも、メルペイは支払い手段の選択肢を与える。クレカを契約せずにiDを使う方法としては、これまでも「ソフトバンクカード」や、NTTドコモの「dカード プリペイド」、三井住友銀行の「SMBCデビット」などがあった。しかし、いずれもメルペイのように、アプリ内で即時発行できるわけではない。思い立って、すぐ使えるとなれば、精神的なハードルは一気に下がる。

   メルペイは今回の決済サービスのみならず、将来的に「新たな信用を生みだし、様々な金融サービスを提供」することを目指すという。「メルカリ経済圏」を築くにあたって、独自で戦うのではなく、決済分野に強いパートナー(今回は三井住友カード)とタッグを組んだのは、ライバルと一線を画す点だ。

メルカリ未経験だけど、メルペイを使ってみた

   メルカリ初体験だったが、ぜひ試したくなった決済サービス愛好家の記者は、実際にメルペイを使ってみた。電話番号などの必要事項を入れて、アカウントを作成。入会特典として600円分のポイントが付与されたが、これはメルペイでも使えるのだろうか......。ちょっと心配なので、銀行口座からチャージすることにした。連携できる銀行は、2月14日午後現在で30行。3大メガバンクや一部地銀などはリストにあるが、ゆうちょ銀行や、ネット専業の銀行は対象外だ。

   近所の電子マネー対応のコカ・コーラ自販機で試してみることにした。飲み物を選んで、iDを選択。iPhoneをタッチすると――。なんだか悲しげな音が鳴った。どうやらここでは使えないようだ。そういえばdカードプリペイドは、飲料自販機やガソリンスタンドでは使えないとアナウンスされている。メルペイも、これに準じている可能性があり、利用時には気を付けておいた方がよさそうだ。

   気を取り直して、コンビニへ行くと、いつものiDと同じように支払いができた。モバイルSuicaへのチャージも試してみたが、こちらも問題なく行えた。決済すると、プッシュ通知とメールで利用明細が届く。どうやらチャージ残高よりも、ポイントから先に引き落とされたようだ。

   不用品を売り払い、そのお金で物を買って、不要になったらまた出品。これは、キャッシュレス社会の「ひとつの完成形」とも言える。このサイクルが定着すれば、チャージや残額を意識しなくても、売上金のみでやりくりできるユーザーも珍しくなくなるはず。不要になった財布が、メルカリに大量出品される日も近いかもしれない。

(J-CASTニュース編集部 城戸譲)