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東京新聞が「書かなかった」官邸とのやり取りとは 菅長官VS望月記者の舞台裏

   菅義偉官房長官の定例会見をめぐって、首相官邸が記者クラブ「内閣記者会」に対して「問題意識の共有」を求める文書を送っていた問題では、官邸側が問題視している望月衣塑子(いそこ)記者が所属する東京新聞との応酬が続いている。

   東京新聞は2019年2月20日付の紙面で「検証と見解」と題した1ページの特集を掲載し、官側の主張に反論した。その中で、官邸が9回にわたって行った「申し入れ」と東京新聞側の回答を表にしてまとめているが、菅氏は「両者の間のいくつかの重要なやり取りが掲載されていない」などと揺さぶりをかけた。果たして、紙面に載っていない「重要なやり取り」とは何なのか。

  • 検証記事の「表」に載っていない「重要なやり取り」とは何だったのか
    検証記事の「表」に載っていない「重要なやり取り」とは何だったのか
  • 検証記事の「表」に載っていない「重要なやり取り」とは何だったのか

望月記者への「狙い撃ちであることは明白」

   今回の東京新聞の検証記事は、総じて官邸の主張に反論する内容だ。例えば内閣記者会に官邸が文書を送るきっかけになった沖縄県名護市辺野古沖の埋め立ての「赤土」をめぐる問題では、質問に至るまでの背景を説明した上で「官邸側の『事実誤認』との指摘はあたらない」と主張。臼田信行・編集局長の署名入り記事で、

「正しい情報を基に質問することが必要ですが、不正確な情報で問いただす場合もあり得ます。そんな時でも取材相手がその場で修正したり否定したりすれば済む話で、一般的には珍しくありません。権力が認めた『事実』。それに基づく質問でなければ受け付けないというのなら、すでに取材規制です」

と訴えた。さらに別の記事では、「1分半の質疑中 計7回遮られる」の見出しで、上村秀紀・官邸報道室長が、望月記者が質問を始めるのとほぼ同時に「簡潔にお願いします」「質問に移ってください」などといった声を出す問題を指摘。会見の最後にならないと望月記者が指名されないことや、望月記者以外の記者が望月記者より長い質問をしても上村氏から声がかからないことなどを挙げ、「上村氏が本紙記者に質問妨害や制限を行っているのは明らかだ」「狙い撃ちであることは明白だ」と訴えた。

「そのような発言はない」→「言い間違いだった」

   菅氏は2月12日の衆院予算委員会で、東京新聞に9回にわたって抗議し、一部については「事実誤認があった」といった回答があったことを明かしている。検証記事ではその9回の「申し入れ」の内容と東京新聞側の回答を紹介している。具体的には、

「官房長官というお立場での(1日2回の)会見削減ということをいいたいのかなあと思うのですが」(18年3月29日、望月記者の会見での発言)
「質問ではなく意見だ」(同、官邸)
「質問の前提として記者の認識を示したもので『意見』に当たらない」(4月2日、東京新聞)
「午前中の会見で菅長官、『個々の相談記録は個別に答えない』というお話出てましたけれど」(5月29日、望月記者の会見での発言)
「そのような発言はない」(5月30日、官邸)
「記憶に基づいた発言で、言い間違いだった」(6月1日、東京新聞)

といったやり取りが表でまとめられている。

「官邸とのやり取りの中で謝罪したことはありませんが...」

   この表に菅氏が異論を唱えた。19年2月20日午後の会見で、菅氏は

「両者の間のいくつかの重要なやり取り、これが掲載をされていないなど、個人的に違和感を覚えるところもあるが、内容の詳細について政府としていちいちコメントすることは控えたいと思う」

と発言。この「重要なやり取り」の内容を確認しようとする質問には「政府としていちいちコメントすることは控えたい」と繰り返し、

「東京新聞側は、よくお分かりになっているのではないか、こういう風に思います」

と述べた。

   J-CASTニュースは、(1)東京新聞としては紙面に掲載されていない「重要なやり取り」があったと考えるか(2)官邸とのやり取りの中で、東京新聞が官邸に対して謝罪や遺憾の意、再発防止に触れたりするような記述はあったのか、の2点について東京新聞に確認を求めたところ、東京新聞編集局は、

「本紙が重要だと考える部分は、2月20日朝刊に掲載しています。官邸とのやり取りの中で謝罪したことはありませんが、事実誤認等について『記者への指導を徹底する』と述べたことはあります」

と回答した。

   なお、「記者への指導を徹底する」という文言は、検証記事には登場していない。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)