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メルカリは投資家の期待を超えられるか? 「メルペイ」は今のところ好感

   メルカリ(東証マザーズ)の株価が、このところ好調だ。2019年2月7日から7営業日連続で終値が上昇する「7連騰」。その後はしばらく横ばいが続いたが、その後再び上昇に転じ、21日時点で3000円台もにらむラインに届いている。

   直近の業績は必ずしも良くないがその内容から成長を期待できると受け止める投資家が多く、スマートフォンによる決済サービス「メルペイ」の提供開始(13日発表)も好感された。ただ、一定の水準まで上昇を待って売ろうとする投資家の売り圧力もあり、一本調子の上昇が続くかどうかは見通せない。

  • 注目を集めるメルペイ
    注目を集めるメルペイ
  • 注目を集めるメルペイ

国内、米国ともに「流通総額」大きな伸び

   7連騰が始まった2月7日の取引終了後にメルカリが発表した2018年12月中間連結決算は、広告費がかさんだことなどから営業損益は36億円の赤字、純損益が44億円の赤字だった。売上高は237億円(メルカリは2018年6月に上場したばかりで2017年12月中間決算の財務諸表を作成していないため前年同期の比較ができない)。

   これだけ見るとメルカリ株を買い急ぐこともないようだが、投資家が目をつけたのは決算短信に記された「流通総額」だった。メルカリのビジネスモデルは消費者同士が中古品を出品し、成立した取引の売買代金の10%を手数料として受け取る、というもの。手数料はメルカリの売上高とニアリーイコールとなる。システムを完成させて損益分岐点を突破すれば、後は流通総額が増えれば増えるほど、メルカリの利益が増えることになる。消費者同士の売買代金の総額が流通総額で、メルカリの事業規模を示す最重要指標と言えるものだ。

   流通総額は国内が2018年7~12月の半年間に2280億円で前年同期比710億円(45.2%)増、米国では178億円で75億円(72.8%)増だった。国内、米国ともに大きな伸びを見せており、将来性への期待が高まった。また、営業赤字額が市場予想平均(46億円)より小さかったことも買いを促した。

PayPayやLINE Payに対する「メルペイ」の優位性

   中間決算の発表を受けて8日のメルカリの株価は一時、前日終値比10.2%(238円)高の2560円まで上昇した。当日安値が前日高値を上回る「窓を開ける」急伸で、節目感を演出した。もっとも、上場時に6000円まで上がった株を「高値づかみ」した投資家の戻り待ちの売りもあったとみられ、終値は5.7%(133円)高の2455円まで押し戻された。

   次の大きな買い材料は13日のスマホ決済メルペイのスタートだ。メルペイ導入によって利用者の利便性は飛躍的に高まる。従来はフリマアプリ上で得た売上金はアプリ内で別の中古品の購入に回すか、手数料を払って銀行口座に振り込むしかなかった。スマホ決済メルペイを活用することで、NTTドコモの決済サービス「iD」に対応した決済端末を持つ全国90万カ所のリアル店舗で、アプリ内の売上金を使って買い物をすることが可能になった。

   スマホ決済は市場が立ち上がったばかりで、LINEの「LINE Pay」、ソフトバンクとヤフーが出資する「PayPay」が決済額の一部を還元する一大キャンペーンを展開し、利用者確保に躍起になっている。これに対しメルペイは1000万人を超えるフリマアプリの顧客がすでにおり、その多くは売上金をアプリ上に持つため、新たに入金したり、個人情報を登録したり手間がなくスマホ決済ができる。

   メルペイによるスマホ決済導入はフリマの取引活性化、流通総額増加につながるという相乗効果も期待できるとして、メルカリ株が買われた。14日は一時、前日終値比9.1%(238円)高の2859円まで上昇し、またも「窓を開ける」伸びを示した。週末の17日、日本経済新聞系メディアが、「スマホを通じた国内利用者数で昨年、メルカリが『ヤフーオークション』を追い抜いた」と報道したことも、週明け18日までの連騰を後押しした。

   ただ、7連騰した18日の終値は2845円で、まだ上場来高値(6000円)の半分に満たない水準。今後、成長期待が株価の戻りを待つ投資家の売り圧力をこなせるか、注目される。