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平和賞欲しさに大譲歩も? 迫る米朝会談、不安は「トランプ氏の勇み足」

   2回目の米朝首脳会談が2日後に迫る中、具体的な成果が見込めないとする見方が米国で広がっている。2018年11月の段階では、首脳会談では「施設への査察と核兵器廃棄への計画」を北朝鮮側に認めさせることが不可欠だとしていたが、トランプ政権は最近になって、これを「最終的には」とトーンダウンさせた。

   米国が北朝鮮側に要求しているハードルが下がった上に、トランプ大統領が北朝鮮に対して「過大な見返り」を与えてしまう懸念も出ている。推薦者として安倍晋三首相の名前も取りざたされた、ノーベル平和賞の問題だ。

  • 2回目の米朝会談で具体的な成果はあがるのか(写真はポンペオ国務長官のツイッターから)
    2回目の米朝会談で具体的な成果はあがるのか(写真はポンペオ国務長官のツイッターから)
  • 2回目の米朝会談で具体的な成果はあがるのか(写真はポンペオ国務長官のツイッターから)

わずか3か月で変わった米側の方針

   18年6月にシンガポールで行われた会談では「会ったこと」自体に意味があった面があったのに対して、19年2月27日から28日にかけてベトナム・ハノイで行われる会談では、何らかの具体的な成果が挙げられるかが焦点だ。とりわけ重要なのが非核化に向けた具体的な道筋を示せるかどうか。ペンス副大統領は18年11月の米NBCテレビのインタビューで、北朝鮮が持つ核兵器と関連施設場所について「完全なリスト」の提出を事前に求めることはないとしながらも、

「次の首脳会談では、問題になっている兵器と開発施設を特定し、施設への査察と核兵器廃棄への計画を認めるといった計画を打ち出すことが不可欠」

だと念を押していた。

   だが、わずか3か月でこの方針は後退したようだ。複数の米メディアが報じたところによると、米政府高官は19年2月21日、記者団を前に

「非核化のプロセスを完了させるためには、最終的には(査察や廃棄の計画の)完全な宣言が必要になるだろう。(非核化プロセスの)最後までにはできるだろう。大量破壊兵器除去の問題への取り組みは、基本的には国際的な基準に基づいたものになるだろう」

   などと話し、具体的な査察や廃棄の計画は、プロセスの終盤にならないと明らかにならない可能性を示した。米国の会談への期待値が下がっていることもうかがえる。CNNによると「ホワイトハウスに近い人物」が

「会談の結果として何か内容があることが出てくるという、本当の高い期待があるかは分からない」

などと発言。ホワイトハウス内部では、多くの人が首脳会談で「何かあっと驚くようなこと」が起こるとは期待していない、とも述べたという。

あいまいな約束で「重要カード」切ってしまうリスク

   さらに問題なのが、トランプ氏が北朝鮮に譲歩しすぎてしまう問題だ。トランプ氏は1回目の米朝首脳会談後の記者会見で、米韓合同軍事演習について

「戦争ゲームをやめ、多額の節約ができるだろう」

と発言。国防総省が3か月間にわたって軍事演習を中止すると発表したのはトランプ氏の発言から10日も経った6月22日のことで、トランプ氏の勇み足を受け、事務方の調整に時間がかかった可能性がある。これが、今回の会談でも繰り返される可能性がある。例えばニューヨーク・タイムズ紙が、トランプ政権から説明を受けた専門家の話として指摘しているのが「いくつかの核施設とミサイルを開放、廃棄するという約束」と引き換えに平和条約を結んでしまう可能性だ。あいまいな約束と引き換えに、米国にとっては重要なカードを切ってしまうリスクだ。トランプ氏は2月19日に「最終的には非核化を望んでいる」としながらも、「核実験がない限り急がない」と述べたばかりで、同紙は

「トランプ氏は、金正恩氏との外交的働きかけがノーベル平和賞に値すると信じており、それを隠そうともしない」

と指摘している。

   北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長は2月23日午後に専用列車で平壌駅を出発。同日夜に国境を越えて中国に入った。2月24日に朝鮮中央通信が平壌出発を報じたのを最後に、25日夕方時点では正恩氏の滞在地に関する続報は出ていない。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)