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財布には辛い「食品値上げラッシュ」だけど... 株式市場で起きた意外な影響

   大手食品メーカーが相次いで商品の値上げを発表している。私たちの財布にはなかなか厳しい話だが、株式市場では、一般消費者からするとちょっと意外な反応が起きているという。

   その好例が、即席麺「マルちゃん」シリーズが主力の食品メーカー、東洋水産の株価だ。2月に入り反転上昇気流に乗りつつあり、下旬は2018年10月以来4カ月ぶりの高値水準で推移した。株価を下支えしているのは即席麺などの6月以降の値上げの表明。今後、株価をさらに上向かせるにはどうすれば。

  • 消費者には厳しいが投資家には嬉しい?
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「マルちゃん」値上げを好感

   2月に入って株式市場が東洋水産に大きく反応したのは7日。大和証券が6日付で東洋水産の投資判断を5段階で真ん中の「3」から、上から2番目の「2」に格上げしたことが材料だった。目標株価も4000円から4500円に引き上げた。即席麺の値上げが長期的にみて営業利益を押し上げると予想したことが背景にある。

   この時点でまだ東洋水産は値上げを発表していないのだが、ライバルの日清食品ホールディングス(HD)が5日に「6月1日出荷分から『カップヌードル』『チキンラーメン』『日清ラ王』など主要商品の希望小売価格を4~8%値上げする」と発表したことを受けて、東洋水産も早晩同調する可能性が高いと踏んだのだった。7日の東洋水産株は一時、前日終値比1.7%(70円)高の4140円まで上昇した。

   株式市場で次の節目は20日だった。大和証券の予想通りに東洋水産は19日、「マルちゃん」ブランドの即席麺の大半にあたる約200品目について6月1日出荷分から希望小売価格で5~8%値上げすると発表した。値上げは約4年半ぶり。例えばレギュラーサイズの「赤いきつね」「緑のたぬき」シリーズなら180円(税別)から193円(同)に上がるという内容で、日清食品HDにほぼ追随するものだった。東洋水産の株価は既に値上げを織り込みつつあったわけだが、実際に発表されたことを受けて20日、一時前日終値比1.1%(65円)高の4205円まで上がった。20日にはゴールドマン・サックス証券が目標株価を3300円から3400円に引き上げるなど市場に歓迎ムードが広がった。

勝負は値上げ始まる「6月」以降

   食品産業は原材料価格の高騰や人件費・物流費の上昇を受けて企業の利益が圧迫されている。東洋水産が1月31日に発表した2018年4~12月連結決算では、売上高は前年同期比2.2%増の3061億円だったが、営業利益は11.2%減の197億円、純利益は9・4%減の147億円だった。同じ時期の日清食品HDも売上高が2.1%増の3367億円、営業利益が3.3%減の347億円、純利益が14.9%減の247億円で、同じような傾向にある。

   いわゆる「軽減税率」によって食品は2019年10月の消費税率引き上げの対象ではないが、それだけに、他業界よりいわば優遇されているだけに、その前後に値上げには動きにくい。「6月出荷分」というのは最後のチャンスであっただろう。そのチャンスをものにしたことを市場が歓迎しており、日清食品HDが2月5日の取引時間中に値上げを発表した際、その株価は一時、前日終値比9.2%(650円)高の7690円まで上昇した。

   今後の焦点は消費者の反応だ。今はNHKの連続テレビ小説「まんぷく」の効果でチキンラーメンが飛ぶように売れるという現象も起きているが、6月以降、実際に値上げされた場合にどうなるか。市場では「買う人にとっては生活必需品なのであまり影響はない」との見方もあるが、「多少の買い控えは覚悟が必要」との指摘もあり、行方が注目されている。