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東京マラソン棄権続出の「不手際」 猛暑の東京五輪は大丈夫?

   東京マラソンが2019年3月3日、東京都庁~東京駅前42.195キロで行われ、日本記録保持者・大迫傑(27)=ナイキ=が29キロ地点で途中棄権した。スタート時間の午前9時の気温は5.7度と低く、大迫は寒さの影響から体が動かなくなったとして途中棄権。4度目のマラソンで初の途中棄権となったが、大迫の他にはアジア記録保持者エルハサン・エルアバシ(34)=バーレーン=らが途中棄権し、レース後に病院に運ばれた選手もいた。

   東京マラソンは2010年の第4回大会から2月の最終日曜日に開催してきたが、今年から3月開催(3月の第一日曜日)に変更した。大きな理由として挙げられるのが、新天皇の即位に伴い、2020年から天皇誕生日が2月23日になること。大会開催日が天皇誕生日に重なるケースが出てくることから、同大会のゴールとなるJR東京駅前が、天皇誕生日の一般参賀者と選手でごったがえすことが想定され、混乱を避けるために3月開催に踏み切った。

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「10年やった中で1番体の芯まで冷えるくらい」

   また、3月に開催することで2月の過酷な気象条件が緩和されることも目的のひとつ。より良いレース環境を選手に提供し、世界記録や日本記録などの好タイムが出れば大会そのものの価値が上がる。だが、今大会にいたっては関係者の思惑とは裏腹に雨天でのレースとなり、2月並みの寒さとなった。東京マラソンの早野忠昭レースディレクターは「10年やった中で1番体の芯まで冷えるくらい」と、これまでにない悪条件でのレースだったと振り返った。

   今大会で途中棄権が続出した要因のひとつとして挙げられるのが、雨の影響による選手の体温低下だ。降りしきる雨が選手の体温を奪ったもので、雨にさらされながらスタート地点で数十分、待機したことも影響したとみられる。招待選手は直前までアップをしていたが、それでもスタート地点で10分近くの待機を余儀なくされ、一般ランナーからは40分以上、スタート地点に釘付けされたとの声も上がっている。

   一般ランナーやマラソン関係者からは運営の不手際を指摘する声が寄せられる中、来夏に開催される2020年東京五輪マラソンの運営に関して早くも不安の声が上がっている。今大会は寒さが大敵となったが、真夏の8月に行われる東京五輪マラソン(女子8月2日、男子8月9日)は猛暑が懸念される。近年、8月の東京は35度近く気温が上昇し、早朝でも30度を超えることも。市民レースの東京マラソンと五輪では出場選手の数が大きく異なるが、運営側に不適際があれば、今回のものとは比較にならない「惨事」が予想される。

「一歩間違えば、選手生命まで奪いかねません...」

   マラソン選手をかかえる実業団チームの関係者は、今大会の結果を踏まえて東京五輪について次のように指摘した。

「東京マラソンの結果を見て、マラソン関係者は不安を口にしています。今回は気温が低かったので選手の途中棄権で済みましたが、真夏の東京でのレースを考えると頭が痛い。一歩間違えば、選手生命まで奪いかねませんから。選手のアップ場所や、スタート時の待機時間など改めて見直す必要がある」

   大迫ら有力選手が途中棄権する一方で、アフリカ勢は相変わらずの強さを発揮。厳しい条件となったレースにもかかわらず、ビルハヌ・レゲセ(エチオピア)が2時間4分48秒で優勝した。日本勢は5位の堀尾謙介(中大)の2時間10分21秒が最高で、瀬古利彦マラソン強化戦略プロジェクトリーダーは「日本選手はまだまだ力が足りないと認めないといけない」と語った。

   前出の関係者は「現時点で世界との差は歴然です。今回のレースでも分かるように、アフリカの選手はどのような気象条件でも結果を出してくる。寒さより暑さに強いので、東京オリンピックでも力を発揮するでしょう。東京オリンピックで日本勢の惨敗は見たくありませんが、現実は厳しいですね」と語った。

   大迫は3月4日、自身のツイッターを更新し、「言い訳はありません、強くなって9月帰ってきます!!」と、9月に行われるマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)での巻き返しを誓った。