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「富士急ハイランド」無料化でニンマリ 次の一手は「NARUTO」施設

   富士急行株が上昇気流に乗っており、29年ぶりの高値圏で推移している。レジャー・サービス事業の主力である「富士急ハイランド」(山梨県富士吉田市)が、2018年7月以降実施している入園料無料化によって来場者が増加し、業績改善に貢献。19年7月には海外でも人気の漫画「NARUTO(ナルト)」をテーマにしたアトラクションを設ける予定で、訪日客のさらなる取り込みが期待されている。

   直近の2018年4~12月期連結決算(2月6日発表)の内容をみると、売上高は前年同期比4.1%増の419億円、本業の儲けを示す営業利益は15.7%増の54億円。純利益は21.8%減の21億円だったが、15億円の投資有価証券評価損を計上した特殊要因によるもので、立派に成長軌道を進んでいるとみていいだろう。

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ハイランド以外の遊園地施設も好調

   経営の柱であるレジャー・サービス事業においては、2018年7月14日より富士急ハイランドの入園(中学生以上1500円)を無料化した効果で、富士急ハイランドとその周辺を訪れた人は4~12月期でみて前年同期より2割以上、増加した。それまで取っていた料金をとらなくなると、相当な減収要因となりそうだが、そうでもないようだ。

   東京ディズニーランドやユニバーサル・スタジオ・ジャパンは入園料(名称はそれぞれ異なる)を払えば、アトラクションは基本的に乗り放題だが、富士急ハイランドはアトラクションごとに利用料金をとっている。「絶叫コースター」と呼ばれる人気の「FUJIYAMA」や「ド・ドドンパ」は入園無料化後、1回1000円だったものを1500円(繁忙期は2000円)に値上げした。入園客の約8割が購入するというアトラクション乗り放題の「フリーパス」は、入園料込み大人5700円だったものを入園無料化後も5700円据え置きと、実質値上げと受け取れる対応で、減収を心配する必要はなさそうだ。つまり、入園無料化はそれまでフリーパスを利用していた多くの若者たちに金銭負担の影響はなく、入園料が壁になっていた富士山観光の高齢者や絶叫マシンが苦手な人などを引き込み、地元グルメを重視した園内の新規飲食店に誘導することなどによる増収効果がありそうなのだ。

   「さがみ湖リゾートプレジャーフォレスト」(神奈川県相模原市)のようなハイランド以外の遊園地施設も好調で、系列ホテルは訪日外国人によって潤ったことから2018年4~12月期のレジャー・サービス事業全体の売上高は前年同期比3.7%増の208億円、営業利益は17.6%増の27億円だった。

首都圏から客を運ぶ相乗効果

   入園無料化はグループの鉄道、バス運営に首都圏から客を運ぶ相乗効果を与えており、2018年4~12月期の運輸事業の売上高が前年同期比5.5%増の153億円、営業利益が15.4%増の20億円だった。

   一方、富士急ハイランドは2019年7月、「NARUTO」をテーマとしたアトラクションを導入する。アトラクションの新設は2年ぶり。NARUTOは週刊少年ジャンプに連載され、テレビアニメ化された漫画作品。主人公の少年忍者が仲間の大切さを感じながら成長するストーリーで、中国をはじめ海外での人気も高い。富士急ハイランドは訪日外国人にも人気の富士山を間近に望めるだけに、新アトラクション導入でさらに訪日客の取り込みを図りたい考えだ。

   株式市場はこうした富士急行の成長力を認めており、三菱UFJモルガン・スタンレー証券が3月4日に目標株価を2400円から3000円に引き上げると、6日には一時前日終値比1.1%(45円)高の4195円まで上昇し、1990年3月以来、29年ぶりの水準に到達。7日も前日終値比2.3%(95円)高の4285円をつけ、その後も高値圏で推移している。今後は新アトラクションの効果などが株価を左右することになりそうだ。