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公示地価「プラス」も進む二極化 調査地点の約5割は下落続く

   2019年1月1日時点公示地価が3月20日朝刊で一斉に報じられた。国土交通省が19日に発表した。これまで3大都市圏に比べ、地方圏の地価の回復が遅れていたが、今回は地方圏の住宅地が前年比0.2%上昇し、1992年以来27年ぶりにプラスに転じた。地方圏は商業地が1.0%上昇、全用途平均が0.4%上昇といずれも2年連続でプラスとなり、地方圏の地価の回復が明確になった。

  • 福岡市など中枢4市のプラスが、地方の数字をけん引したが…
    福岡市など中枢4市のプラスが、地方の数字をけん引したが…
  • 福岡市など中枢4市のプラスが、地方の数字をけん引したが…

「中枢4市」が数字けん引するも

   東京、大阪、名古屋の3大都市圏も上昇が続き、全国平均は住宅地が0.6%上昇で3年連続、商業地(2.8%上昇)と全用途平均(1.2%上昇)は、いずれも4年連続のプラスになった。戦後最長を更新したとされる景気回復と日銀のマイナス金利政策の効果もあり、地価は上昇基調が続いている。

   今回の公示地価について、不動産協会の菰田正信理事長(三井不動産社長)は「全国平均で全用途平均などが4年連続の上昇となり、地方圏では住宅地が27年ぶりに上昇に転じた。3大都市圏を中心に継続している緩やかな地価の回復傾向が地方圏にも波及しており、不動産に対する堅調な需要が継続していることが地価に反映された」と評価している。

   公示地価は2014年に3大都市圏と札幌、仙台、広島、福岡の「中枢4市」がマイナス圏を脱し、緩やかに上昇することで全国平均の地価をけん引してきた。地方圏も中枢4市の上昇が貢献し、マイナス幅を縮小してきた。今回、地方圏は最後まで下落が続いていた住宅地がプラスとなり、先行する商業地、全用途平均と合わせ、3指標とも水面上に浮上した格好だ。

   もっとも、地方圏の地価の上昇は統計上の数字であり、すべての地方の地価が上昇したわけではない。中枢4市を除いた地方圏の地価は、商業地が0.014%上昇し、こちらも27年ぶりにプラスに転じたが、住宅地と全用途平均はいずれも0.2%の下落で、マイナス圏のままだ。地方圏全体の数字を、好調な中枢4市が引っ張る構図は今回も変わらなかった。

県庁所在地は上昇しても...

   中枢4市を除く地方圏の住宅地と全用途平均も、これまでの回復ペースが続けば、2020年にプラスに転じる可能性はある。しかし、地方圏は今回も全国の調査地点の約5割で下落が続いている。駅前再開発が進む県庁所在地などで地価が上昇しても、過疎地などを抱える周辺の自治体では地価の下落が続くといったパターンが多い。日本の人口が減少する中、都市部と過疎地の格差を埋めるのは現実的には困難で、地価の二極化が進むのは今後も避けられそうにない。

   一方、全国の公示地価の最高額は東京都中央区銀座4の「山野楽器銀座本店」で、1平方メートル当たり5720万円。バブル期のピークだった1991年の3850万円(銀座4の数寄屋橋交差点付近と東京都新宿区西新宿1の2地点)を2016年に超え、4年連続で最高値を更新したが、上昇率は前年の9.9%から3.1%に縮小した。国交省は「銀座の地価の上昇率は落ち着いてきている。転売や投機を目的に急上昇したバブル期とは異なる」と説明している。