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貴景勝も...なぜメディアは「力士の親」を取材したがる?

   大相撲の関脇貴景勝(22)=千賀ノ浦=が夏場所での大関昇進を確実にした。平成最後の大関誕生にスポーツ紙をはじめとし、一般紙やテレビのワイドショーでも大きく取り上げられたが、そんな中で目立ったのは貴景勝の両親の存在。昨年九州場所で貴景勝が初優勝した際には、両親がメディアに引っ張りだこに。貴景勝のケースに限らず、力士の親がメディアに取り上げられることが多く見られるが、なぜ力士の親がメディアに露出する機会が多いのだろうか。J-CASTニュース編集部は、他のスポーツと比較しつつ分析した。

   貴景勝の両親がメディアに露出し始めたのは、貴景勝が幕内初優勝を飾った昨年九州場所から。父・一哉さん(57)が貴景勝を力士に育て上げるため幼少時代に行ったスパルタ式教育が注目され、メディアはこぞって一哉さんと貴景勝とのエピソードを紹介した。また、母・純子さん(52)の教育方針も注目され、その一方で「美しすぎる母」としても評判を呼び、春場所でも大いに注目を集めた。

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背景には角界の「礼」が?

   角界では、力士の親がメディアに取り上げられることが多く、最近でいえば元横綱稀勢の里(現荒磯親方)の父・萩原貞彦さん(73)が頻繁にメディアで取り上げられていた。この他にも大きく出世した力士の親がメディアに登場するケースは多々あり、外国出身力士の親が新聞やテレビに出演したことも。プロ野球でいえば元マリナーズのイチロー氏や、松井秀喜氏の父は有名なところだが、この他に選手の親がメディアに頻繁に登場することはあまりみられない。

   なぜ力士の親はメディアに取り上げられるのか。それは力士の体質に関係しているのではないだろうか。角界は古くから「礼儀」が重んじられ、勝負後の支度部屋で力士が多くを語ることはあまりなかった。なぜかといえば、勝敗に関わらず対戦相手に「礼」を尽くす意味で、相撲内容に関してあまり語りたがらない力士が多かった。いわゆる昔気質の力士で、最近では少なくなったものの、これを継承する力士は確かに存在する。

   大相撲を中継するNHKの勝利者インタビューは、相撲ファンならば一度は目にしたことがあるはず。その中での定番の文言が「自分の相撲を取りました」。相手のスキや弱点を突くのではなく、自分の相撲を取ることで勝利を目指した。これが対戦相手に対する角界流の礼儀である。番付が上がるにつれて口数が減る傾向にあり、元横綱稀勢の里などはそのいい例である。番付上位、なかでも大関、横綱に関しては当然、新聞では広いスペースが割かれ、多くの原稿が要求される。いかに読者に訴えるエピソードを添えるか。そこで登場するのが親御さんというわけだ。

高校野球と角界の共通点とは

   米国などでは昔からプロスポーツ選手はメディアの取材にきちんと対応し、自身の考えを発信してきた。近年、日本のプロスポーツ界でもこのような傾向にあり、なかでもプロ野球選手とメディアとの壁は以前よりも一段と低くなっている。選手の私生活や幼少時代のエピソードなど、直接本人から取材で聞くことが出来るため、メディアが親を取材する必要が生じない。ただイチロー氏や松井氏クラスになると、それが難しくなるため親御さんへの取材が不可欠となってくる。

   相撲のケースと似ているのが高校野球だ。高校球児の親がテレビで取り上げられることはあまりないが、スポーツ紙などでは頻繁に登場する。それはなぜかといえば、高校球児への取材時間が限られているため。学校教育の一環として行われる高校野球に関しては、通常の取材で監督に話を聞くことができても、選手個人への取材を制限している学校が多い。甲子園で勝ち進んでも選手から話を聞けるのは試合後のわずか数分間。そこで球児の親が取材対象となる。苦肉の策という点でいえば、相撲と高校野球は共通しているだろう。

   平成生まれながら昭和の力士の風格を持つと言われる貴景勝。激しい相撲とは相反して支度部屋では口数が少ないという。角界の最高峰まであと一歩のところまで到達し、今後さらにメディアの露出が増えることが予想されるが、その「無口」さゆえに、ご両親のさらなるメディア露出が予想される。