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カブス田沢を縛る「田沢ルール」 「マイナーより即日本球界」無理なワケ

   MLBカブスが2019年3月26日(日本時間27日)、田沢純一投手(32)とマイナー契約で合意に至ったことを発表した。田沢は今年1月にカブスとマイナー契約を結び、招待選手としてメジャーキャンプに参加。今月23日(日本時間24日)に契約解除されたが、今回、再契約という形でチームに戻った。田沢はすでにチームに合流し、メジャー昇格に向けて練習を再開している。

   契約解除から一転、空白の3日を経てカブスと再契約した田沢だが、23日の契約解除後は他球団でのプレーを視野に入れ、代理人が他球団と交渉していたという。日本人のメジャーリーガーのなかには、マイナー契約よりも日本球界復帰を選択する選手が過去に多く見られたが、田沢の場合、ひとつのルールが大きな障害となり、即時の日本球界復帰が出来ない現実がある。

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ルールの是非めぐる議論が再燃

   そのルールは「田沢ルール」とも呼ばれるもので、田沢がMLB入りした2008年に設けられた。どのようなルールかといえば、日本のプロ野球チームのドラフト指名を拒否して海外のプロ野球球団と契約した選手は、海外の球団を退団後、一定の期間、日本の球団と契約が出来ないというもの。大卒・社会人は2年間、高卒選手は3年間と定められており、田沢のケースでは、MLB球団を退団後、2年間は日本の球団と選手契約出来ない。

   田沢は高校卒業後、新日本石油に入社し社会人野球でキャリアを積んだ。都市対抗野球など活躍が評価され、2008年のドラフト1位候補として名が挙がっていた。しかし、田沢が選択したのは日本球界ではなくMLBだった。ドラフトを控えた9月にMLB挑戦を表明し、日本のプロ12球団に対して、ドラフトで指名を見送ることを求める内容の文書を送付。結果、田沢を指名する球団はなかったが、田沢のMLB入りを受けて上記の「田沢ルール」が設けられた。

   「田沢ルール」を巡っては、ドラフト制度の崩壊を危惧するものや、職業選択の自由を訴えるものなど、これまで様々な意見が上がり、議論がなされてきた。エンゼルスの大谷翔平投手(24)が高校卒業の進路を決める際にも多くのメディアで「田沢ルール」が取り上げられた。当初、大谷は日本のプロを経ずにMLB挑戦を熱望しており、これが実現した場合、大谷に「田沢ルール」が適用されるのかが論点となり、ルール撤廃を求める意見もみられた。結局、大谷はドラフトを経て日ハム入りしたため事なきを得たが、ここにきて「田沢ルール」問題が再燃の様相を呈している。

「マイナーで埋もれてしまうのはもったいない」

   一度は契約を解除されたとはいえ、田沢の力が衰えたとみる関係者は少ない。実際、オープン戦では6試合に登板して許した安打は2本のみ。5回3分の2を無失点で切り抜け防御率は0.00で健在ぶりを見せていた。中継ぎ、リリーフ要因として貴重な存在であり、田沢に興味を示す日本の球団もあるだろう。だが「田沢ルール」がある限り、即時の日本球界復帰は叶わない。

   日本の球団関係者は「田沢選手の即時の日本復帰が可能なら手を挙げる球団はあるでしょう。投手不足にある球団は多いですから。ただ、メジャーに行った経緯が経緯だけに、球団の首脳陣の中には拒絶反応を示すものもいる。田沢選手がメジャー入りした時は球界で大きな問題になりましたし。それにしても、このままマイナーで埋もれてしまうのはもったいない。個人的にはそろそろルールを見直してもいいかと思います」と田沢の日本球界復帰について言及した。

   近年ではMLBに移籍する選手が増える一方で、キャリアの最後を日本球界に求める選手も多い。中日の松坂大輔投手(38)のように成績だけではなく、その人気から観客動員に貢献する選手も。日本球界からMLBへの移籍に関しては、ポスティングシステムの導入など、オープン化に向けて制度の見直しがなされてきた。変わりゆく日米球界の中で、10年以上も前に設けられた「田沢ルール」は今もなお田沢を縛り付けている。