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那須川、メイウェザー、パッキャオ... 「RIZIN」話題独占の一方、ボクシング界は「葛藤」

   総合格闘技イベント「RIZIN」は2019年4月9日、ボクシングの世界6階級制覇のマニー・パッキャオ(40)が4月21日に横浜アリーナで開催される「RIZIN.15」に来場することを発表した。「RIZIN」のCEOを務める榊原信行氏(55)によると、今回はパッキャオの「参戦」はなく、パッキャオが推薦するフィリピン人格闘家、フリッツ・ビアグダン(23)がキックボクシングルールで那須川天心(20)=TARGET=と対戦する。

   榊原氏は前日8日、自身のツイッターを更新し、フィリピンでパッキャオと接触したことを明かした上で、「メイウェザーに続き、RIZIN15ではこの男と新たな仕掛けを行います。帰国したらすぐに発表しますので、楽しみにしていてください」と投稿した。これを受けた世界各国のメディアが、「パッキャオが『RIZIN』と何らかの契約を結んだ」と大きく報じ、その内容に注目が集まっていた。結果は「肩透かし」を食らった感があるものの、昨年末のフロイド・メイウェザー(42)=米国=に続いて、またも「RIZIN」が話題をさらった。

   昨年末に行われたメイウェザーVS那須川天心戦は、両者の体重差やルールについて賛否があったが、結果的には世界中の注目を集めた。実質、引退状態にあったボクシング無敗のメイウェザーを引っ張り出してリングに上げた時点で興行的には大成功とみていいだろう。これは榊原氏の手腕によるところが大きく、格闘技のイベントプロデューサーとして榊原氏の右に出るものはいないとさえいわれている。

  • 榊原氏のツイッター
    榊原氏のツイッター
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ボクシングで盛り上がるも、当のボクシング界は蚊帳の外に...

   メイウェザー戦で那須川は1回KOで惨敗したにもかかわらず、その名は一躍全国区に。この機運に乗じたのがAbemaTV。開局3周年特別企画として「那須川天心にボクシングで勝ったら1000万円」を予定しており、3月10日から挑戦者を応募したところ、応募者は1日で1000人を突破したという。応募者の内訳は公表されていないが、格闘技経験者やボクシング経験者らの応募があった模様だ。

   今回もまた、パッキャオを引っ張り出して話題を独り占めにした「RIZIN」。最近の格闘技界は、ボクシング関連の話題で盛り上がっているが、当のボクシング界は蚊帳の外といったところ。世界のボクシング界のレジェンド、メイウェザーが来日しても日本ボクシング界とは一切接触はなく、盛り上がりを見せる「RIZIN」をボクシング界はただ黙ってみているだけである。

   キック界では「神童」と呼ばれ、格闘技ファンから絶大な支持を集める那須川だが、一般的に名が知られるようになったきっかけは、やはり昨年末のメイウェザーとの一戦だろう。キックでの実力、実績もさることながら、「RIZIN」の高いプロデュース力が那須川をスターダムに押し上げたといっても過言ではないだろう。

「伝統」と「改革」の間で葛藤も...

   ボクシング界に目を向けてみると、いったい何人のスター選手がいるだろうか。世界3階級を制覇し、現在WBA世界バンタム級王者の井上尚弥(25)=大橋=は世界的なボクサーになりつつあるが、これに続く現役のスター選手といえば、元WBA世界ミドル級王者・村田諒太(33)=帝拳=や井岡一翔(30)くらいだろうか。村田、井岡ともに30代で、次世代スターとはいいがたい。なんとも寂しい限りである。

   「ボクシングは真剣勝負であり、派手なパフォーマンス、プロデュースは必要ない」。伝統ある競技ゆえに、ボクシングジムの年配の会長には、このような考えの持ち主が少なくない。実際、榊原氏のようにSNSを駆使して情報を操作する会長はあまりみられず、時代に取り残されている感じさえする。ただ、このような状況に危機感を持つ若手の会長がいることも確かで、SNSを有効活用してジムの会員募集を行ったりしている。

   100年近い歴史を誇る日本ボクシング界。浮き沈みの激しいプロ格闘技界において、一度もその存在を消すことなく母体を維持し続けてきた。脈々と受け継がれてきた伝統が、ボクシング界を縛り付けているのだろうか。若手の会長のなかには革新派もおり、「伝統」と「改革」の間で葛藤しているものもいる。今回のように世間をアッと驚かせる術にたける「RIZIN」は、ボクシング界の一枚も二枚も上を行っているように思えてならない。

(J-CASTニュース編集部 木村直樹)