J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

「アンチ」への丁寧な反論が、「ファン」を増やす ビッグイシューの「手本にしたい」対応

   ホームレスの自立を支援する雑誌「ビッグイシュー日本版」のオンライン版で公開した記事が、SNS上で共感を呼んでいる。

   同誌をめぐる誤解や偏見に「反論」する内容で、理解が得られない場合は「断交」するとも宣言している。公開の背景にはSNS上での執拗(しつよう)な嫌がらせがある。

  • ビッグイシューオンライン版より
    ビッグイシューオンライン版より
  • ビッグイシューオンライン版より

ビッグイシューは「ホームレスから搾取している」?

   「ビッグイシューを敵視する人々の主張/誤解と思い込みによる攻撃例とその反論」と題された記事は、2019年4月8日に公開された。

   1万字以上にわたる記事では、販売者やビッグイシューがよく受ける12の誤解、偏見に対し、「NO」を突きつけている。

   例えば、「ホームレスから搾取している」との批判には、「搾取とは『他人に帰属すべき利得を不正に取得する』ということかと思いますが、ビッグイシューの1冊の値段は350円。そのうち半分以上である180円が販売者の取り分です(中略)一般的には書店の取り分は2割程度と言われており、5割以上の取り分は、通常の出版社と比べると販売者に相当配慮したものとなります」と強調。

   また、「ビッグイシューの役員は私腹を肥やしている」との指摘には、「会社は現在赤字につき役員報酬どころではありません。また私腹を肥やしている人間もおりません。また、私たちは社会的企業です。黒字になった場合も、販売者サポートや誌面の充実等で販売者・お客様に還元します」ときっぱり否定している。

「クレーマー対応の手本になりますね」

   記事では、誤解や偏見にもとづくツイッター上の嫌がらせへの対応にも言及している。

「誤解についてはできる限り正していきますが、ビッグイシューのフォロワーの方などが仲裁に入ろうとして却って当人と口論やトラブルになったりすることもあるため、あまりに悪質・執拗な場合にはブロックさせていただくことがあります(中略)極力ブロックという形は取りたくないのですが、同じことを何度ご説明してもご理解いただけない場合もあります。その際は業務妨害に対処するため、及びフォロワーの皆さまにご迷惑をおかけしないため、やむを得ずブロックさせていただくことがありますこと、ご了承ください」

   一方で、ブロックは「その方の『SNSの利用方法』に対してであり、その方の存在や人格自体を否定するものではありません。販売者にお心を寄せていただいているからこそのビッグイシュー批判・攻撃だと考えております。残念ながらブロックという形をとらざるを得なくなってしまった場合は、別の方法でホームレス状態の人々の状況・待遇改善に向けてアプローチを頂ければと思います」とフォローもしている。

   記事はツイッター上で注目を集め、「クレーマー対応の手本になりますね」「相手に敬意を払いながらも、主張すべきことはきちんと主張する。この丁寧で知性的な態度は、お手本にしたい」と共感を呼んだ。ジャーナリストの佐々木俊尚氏も「こんなことにまで文句を付ける人がいるんだなあ...。丁寧に、しかしきっちりと反論していてとても素晴らしい」と賛辞を送った。

「きちんとご説明することで、その姿勢が拡散され...」

   ビッグイシューの担当者は4月10日、J-CASTニュースの取材に、公開の背景を次のように説明する。

「ツイッターで、ビッグイシュー日本の公式アカウント宛てに執拗に批判を繰り返す方が3月末ごろに現れ、様々な方とトラブルを起こしておられました。そのアカウントは他の方からの通報を受けてか、ツイッター社により凍結されました。その後一度沈静化していたのですが、4月8日に同じ方と思われる同名の別アカウントで再度嫌がらせ行為を始められたためです」

   実際、4月8日に、「ホームレスを食い物にするビッグイシューは潰れてヨシ!」などと誹謗(ひぼう)中傷を書き込むユーザーが現れ、同社は先の記事のリンクとともに「ビッグイシューを気にかけていただきありがとうございます。よくある誤解について下記に記事をまとめましたので、よかったらご覧ください。なお、今回を持ちまして残念ながらブロックさせていただきます。その理由についても上記記事に記載しております」と返信している。

   同社は誹謗中傷を受ける機会は少なくないというが、いたって前向きだ。「きちんとご説明することで、その姿勢が拡散され、フォロワーが増えたり、具体的なご支援を頂いたりする機会のほうが多いです。『炎上マーケティング』ならぬ『消火マーケティング』だと社内では有り難く考えています」(担当者)

(J-CASTニュース編集部 谷本陵)