J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

「令和」の日本国憲法の行方 「改憲」機運を新聞各紙はどう伝えた

   「令和」初の憲法記念日を迎えた2019年5月3日、新聞主要各紙は朝刊で安倍政権が掲げている「憲法改正」に関する世論調査を実施するとともに、その結果と「日本国憲法」の特集にページを割いた。

   安倍政権は、2007年5月(第1次安倍内閣)に憲法改正の手続きを定める国民投票法を成立させてから、憲法改正原案の審査などを行う憲法審査会を衆参両院に設置するなど、「改正」に向けた準備を進めながらも、慎重を期して国民の「改憲ムード」の高まりをうかがっている。その一方で、新しい天皇陛下が即位されたタイミングもあり、国民の「憲法」への関心は高まっている。

  • 「改憲」議論の行方は?
    「改憲」議論の行方は?
  • 「改憲」議論の行方は?

「令和」「新天皇即位」を1面で報じない新聞は

   日本国憲法が施行されて72年。直前に改元と新天皇陛下の即位があったことから、毎日新聞は1面トップで「令和の象徴へ 天皇陛下即位」を取り上げ、読売新聞もカタ記事で「令和の天皇」を掲載。新天皇即位にまつわるエピソードを続報した。

   4月1日の新元号発表、5月1日の新天皇即位と「天皇制」への関心が高まっているときだけに、クローズアップしたようだ。

   読売新聞は憲法に関する世論調査について、「象徴天皇『維持を』78%」「憲法議論『活発に』65%」を、見出しに報じた。「天皇制」について、「今の象徴天皇のままでよい」と答えた人が78%、「天皇制は廃止したほうがよい」は7%だった。

   毎日新聞も見出しに、「象徴天皇制『支持』74%」「安倍政権で改憲『反対』48%」をとった。調査では「現在の象徴天皇制でよい」と答えた人が74%。「天皇制の廃止」は7%だった。

   産経新聞の1面トップは「首相『改憲の旗掲げている』」の見出しで、安倍晋三首相のインタビュー記事を取り上げたほか、新天皇即位に合わせて行われる恩赦について報じた。

   5面(総合面)では、「憲法改正 自民の本気度は」と、憲法改正をめぐる近年の動きにふれつつ、「冷めてきた」議論の行方を憂いでいる。

   「野党の審議拒否戦術にはまり、打開策がなかなか見いだせない」とし、憲法改正をめぐる議論が長らく停滞するなか、「主張」の欄(2面)では「まず自衛隊明記が必要だ」と主張。7月の参院選で「改憲を訴えよ」という。

   また、朝日新聞が1面で報じたのは全国世論調査の結果。「改憲機運『高まっていない』72%」と伝えたが、「令和」や「新天皇即位」に関連する記事は1本もなかった。

憲法に「自衛隊」明記、賛否の「差」縮まる

   自衛隊と憲法9条をめぐる問題に踏み込み、紙面を割いた(13面)のは、朝日新聞。世論調査では、「憲法9条を変えるほうがよいと思うか」の問いに、「変えないほうがよい」との答えが64%(18年調査は63%)で、「変えるほうがよい」の28%(同32%)を上回った。

   また、安倍首相が提案している自衛隊の存在を明記する改正案について、「反対」は48%(18年調査は53%)、「賛成」は42%(同39%)だった。反対が賛成を上回ったが、賛否の差は縮まった。

   賛成の理由で最も多かったのは、「海外で活動しやすくなる」が43%、「憲法違反の疑いがなくなる」が31%、「隊員が誇りが持てる」は23%だった。反対の理由は、「海外活動が拡大するおそれがある」が58%で最多。次いで「これまでも合憲としており、変える必要がない」が29%、「2項(戦力を保持しないこと)を削るべき」が8%だった。

   一方、朝日新聞によると、憲法を変える機運がどの程度高まっているか聞いたところ、「あまり」と「まったく」を合わせた「高まっていない」は72%。改憲機運が「高まっている」と答えた人は22%だった。また、自民党支持層でも「高まっていない」は61%、無党派層では77%にものぼった。

   「安倍晋三首相は2020年の改正憲法施行を目指すが、有権者の意識は高まっていない」と、みている。

憲法改正の「主役」は安倍首相なの?

   憲法改正について、読売新聞は「憲法に関する議論を各政党が『もっと活発に行うべきだ』と答えた人が65%にのぼった」、と調査結果を明らかにした。

   憲法を「改正するほうがよい」は50%(18年調査は51%)、「改正しないほうがよい」は46%(同46%)。2年連続で賛成派が反対派を上回る、朝日新聞とは逆の結果となった。

   読売は2面で、「改憲議論 打開なるか」「自民、草の根啓発に力」の見出しで、「憲法改正の議論をリードしていくことが、わが党の使命だ」などとする、自民党の憲法記念日に寄せた声明を掲載。7月の参院選の街頭演説やインターネットで「啓発」への発信を強めていく方針を伝えている。

   また、毎日新聞の世論調査では、憲法を改正することに「賛成」の人は31%、「反対」が48%と、反対が賛成を上回った。自民党の支持層は「賛成」が61%、「反対」が24%と、賛成が反対を上回ったが、無党派層に聞くと「賛成」は21%で、「反対」は56%を占めた。

   毎日は社説で、「(改憲に向けた取り組みで、安倍首相は)やはり幾つもの無理が積み重なっている」と指摘。そのうえで、「首相権力に対する統制力の乏しさ」と国会機能の低下を問題視した。

   社説では、朝日新聞も「安倍1強」への懸念を示し、「(憲法改正は)主権者である国民が主導するものであるべきだ」と結んでいる。