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プロ野球選手は1試合に何本のバットを準備する? OBが明かす用具への熱いこだわり

   プロ野球が開幕して1カ月あまり。ゴールデンウィーク中も全国各地で数々の熱戦が繰り広げられた。長きにわたってプロ野球を観戦してきたファンや、今年から新たにプロ野球ファンになった方もいることだろう。

   プロ野球選手のことをよく知っているファンも、選手が使用するグローブやバットなどの用具に関して詳しく知るファンはそう多くはないかもしれない。そこでJ-CASTニュース編集部は、プロ野球選手が使用する用具に関して調べてみた。

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重さでは測れない独特の感覚が...

   プロ野球の試合でよく見られるのが、打者のバットが折れるシーンだ。球に差し込まれて詰まったり、バットの芯を外した時などに見られるものだが、当然のことながら折れたバットは二度と使用出来ず、次の打席からは代えのバットを使用することになる。2打席連続でバットが折れるというのは特段珍しいことではなく、過去には1打席中に3本のバットを折った選手も。

   プロ野球選手はいったい、1試合で何本のバットを用意するのだろうか。編集部は、ヤクルト、阪神などで活躍した元プロ野球選手で、野球解説者の野口寿浩氏(47)に聞いた。

   野口氏の場合、1試合で7本から8本のバットを用意したという。その内訳は、練習用のバット3本、試合用が4本から5本。長い遠征の時にはこれに1、2本加える程度で、選手の中にはバットの状態を一定に保つためにバットをジュラルミンケースに入れ、その中に乾燥剤を入れて持ち運びしていた者もいたという。重さでは測れない「誤差」が生じると、打撃に大きく影響することもあるという。

   また、プロ野球では他のチームの仲の良い選手からバットをもらうこともあるという。野口氏は阪神時代に、同級生の横浜ベイスターズ(現DeNA)の仁志敏久氏から試合前にバットをもらい、その日の試合で仁志氏から譲り受けたバットで横浜スタジアムのバックスリーンに本塁打を放った経験を持つ。好打者のバットを使うと、自身も打てる気持ちになる「効果」もあるようだ。また、野口氏は逆にバットを譲ったこともあるといい、案外、ファンの知らないところで、もらったバットで本塁打を打った選手は多いかもしれない。

新人時代は給料の半分ほどが用具代に

   では、グローブはどうだろう。プロ野球選手は1試合にいくつのグローブを用意するのだろうか。現役時代、捕手として活躍した野口氏は、キャッチャーミットを常時、3つ用意していたという。練習用、試合用、そして雨が降った時に使用するもの。また、野口氏は捕手の他に1塁や外野を守る機会があったため、ファーストミットと外野手用のグローブも携帯していた。選手によってはひとつのグローブをメンテナンスしながら長く使用する者がいるが、一日に140キロを超えるプロの投手の球を100球以上受けるキャッチャーミットは消耗が激しく、丁寧にメンテナンスしても、持って2年ほどだったという。

   1軍で活躍するプロ野球選手のほとんどが、野球用具メーカーとアドバイザー契約や用具提供契約などを結び、メーカーから用具を提供してもらっている。野口氏も長らく野球用具メーカーから用具の提供を受けていたというが、高卒で入団したヤクルトの1年目は全て自腹で用具を購入していたという。

   野口氏は「私がヤクルトに入団した当時は、球団の方針として高卒ルーキーはみな自分で野球道具を購入するようになっていました。スパイクだけは球団から支給されましたが、バットやグローブなどは全て自腹です。野球用具は決して安くはありませんから、当時、給料の半分ほどが用具の費用になりました。この球団の方針は、自分で用具を購入することで選手に用具の大切さを学ばせ、技を磨くことを目的としたもので、私も改めて用具の大切さを学びました」と振り返った。