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マークX生産終了で「FR」ますます希少種に 運転感好むドライバーもいるが...

   長らく愛されてきた名車の「終焉」の報が相次いで飛び込んできた。

   まずは、トヨタ自動車の高級セダン「マークX」。生産が2019年12月で終了する。

   マークXは前身の「マークII」が1968年にデビューして以来、50年余の歴史に幕を閉じることになる。トヨタのFR(フロントエンジン・リヤドライブ=後輪駆動)車は、レクサスを除けば事実上、高級セダン「センチュリー」「クラウン」とスポーツカー「86」だけとなる。

  • 4月に発売されたマークXの「ファイナル・エディション」
    4月に発売されたマークXの「ファイナル・エディション」
  • 4月に発売されたマークXの「ファイナル・エディション」

バブル期には「3兄弟」が一世風靡も...

   マークXは、1980年代に「ハイソカー」として一世を風靡したマークIIの後継モデルとして2004年に改名して登場。FRゆえのオーソドックスで自然な操縦性が魅力の一つだったが、ミニバンやSUV人気に押され、販売が振るわなかった。

   1968年デビューの初代は「コロナ・マークII」と呼ばれ、小型セダン「コロナ」の上級モデルとして登場。1980年代後半のバブル絶頂期には「クレスタ」「チェイサー」とともにマークII派生の3兄弟がハイソカーとして人気を呼んだ。ライバルの日産は1985年登場の7代目スカイラインがマークIIに対抗し、スポーティーカーからハイソカー志向に転じたが、マークII3兄弟の人気は絶大だった。

   しかし、バブル崩壊後はハイソカー人気も下火となり、マークIIはマークXに改名して再デビューを果たすが、マークII3兄弟時代の人気は戻らず、タクシーに利用されるなど、かつての高級路線から少しずつ逸脱していった。トヨタの売れ筋はハイブリッドカーの「プリウス」や「アクア」であり、高級セダンはFF(フロントエンジン・フロントドライブ=前輪駆動)車ベースの「カムリ」や高級ブランドの「レクサス」にシフトしていった。

トヨタはFRを高級車にシフト

   マークXの生産終了で、トヨタはもちろん、日本車全体を見回してもFR車はますます絶滅危惧種となる。後輪のみが駆動するFRは、アクセル操作でクルマを後ろから押し出す感覚があり、前輪の操舵と組み合わせ、クルマを自在にコントロールする楽しみがあり、スポーツドライビングに向いている。

   しかし、FRはエンジンの駆動力を後輪に伝えるプロペラシャフトなど部品点数と重量がかさみ、スペース効率も高くない。このため、乗用車は小型車を中心に効率性を重視し、FF化とFFベースの4WD化が進んだ。日本車でFRとして残っているのは「トヨタ86」「スバルBRZ」の姉妹車と、「マツダロードスター」、「日産フェアレディZ」などスポーツカーが中心で、日産も「スカイライン」など高級セダンの一部に残るのみ。

   トヨタの場合、マークXの生産終了でセダンのFRはセンチュリーとクラウンの高級車のみとなるが、高級ブランドのレクサスでは「IS」「LC」「GS」「LS」などでFRは健在で、トヨタがメルセデス・ベンツやBMW同様、FRを高級車にシフトしていることがわかる。

   トヨタは商用車ベースの「ハイエースワゴン」には後輪駆動車が存在するが、こちらは商用車として重い荷物を運ぶために後輪駆動となっているので別格だ。ミニバンも「エスティマ」「アルファード」など主流モデルは既にFFとなっている。SUVの「ハイラックス」はパートタイム4WDなので後輪駆動車としても使えるが、こちらは本格オフロード車として別格だ。

三菱ファンには辛い「パジェロ」の国内終了

   一方、三菱自動車はスポーツ用多目的車(SUV)「パジェロ」の国内向け生産を2019年8月で終了すると発表した。

   一方、三菱自動車はSUV「パジェロ」の国内市場向け生産を8月で終了すると発表した。パジェロは本格的なオフロード4WDとして1982年にデビュー。悪路走破性を競う「ダカールラリー」に翌1983年から参戦し、通算12回の総合優勝に輝くなど、町乗りにも使える本格オフロード4WDとして1980年代から1990年代にかけて人気を呼んだ。

   しかし、パジェロは2006年に現行モデルとなってから販売が伸び悩み、13年間一度もフルモデルチェンジされることなく国内市場から姿を消すことになった。海外向けのパジェロの生産は続けるという。三菱自は2000年代のリコール隠しや2016年の燃費データ不正でユーザーの信頼を失い、国内販売が低迷している。「ランサーエボリューション(ランエボ)」に続き、パジェロという看板車種を失うのは、三菱ファンには耐え難いだろう。