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久保建英デビューにかき消された「永井の躍動」 2得点獲得もスポットライト浴びず

   サッカー日本代表MF久保建英(18)が鮮烈デビューを飾る一方、過熱気味の報道に釘を刺す向きもある。

   キリンチャレンジ杯・エルサルバドル戦が2019年6月9日に行われ、日本代表は2-0で勝利した。その最大の功労者は久保でもなければ、「三銃士」と名付けられたMF中島翔哉(24)、MF南野拓実(24)、MF堂安律(20)でもない。代表初ゴールにして2得点のFW永井謙佑(30)だった。

  • 6月10日の日刊スポーツ(左上)、サンケイスポーツ(右上)、スポーツ報知(左下)、デイリースポーツ(中央下)、スポーツニッポン(右下)
    6月10日の日刊スポーツ(左上)、サンケイスポーツ(右上)、スポーツ報知(左下)、デイリースポーツ(中央下)、スポーツニッポン(右下)
  • 6月10日の日刊スポーツ(左上)、サンケイスポーツ(右上)、スポーツ報知(左下)、デイリースポーツ(中央下)、スポーツニッポン(右下)

「もっと永井くんのゴールにも」

   初ベンチ入りした久保に早速出場機会が訪れた。後半22分、南野と代わって途中出場。「飛び級」でA代表に選出された18歳はいきなり存在感を示した。

   FW大迫勇也(29)のポストプレーから右サイドでボールを受けた後半28分、相手2人がかりのチェックに怯むことなく突破を試みた。隙を突いて2人の間をすり抜けると左足を振り抜いていきなりシュートを放った。同37分には自らボール奪取すると、相手の後ろからのチャージにも倒れることなくドリブルを試みた。同アディショナルタイムには、現在の森保ジャパンで攻撃の中核を担う中島、大迫と鮮やかな連携を見せ、ゴール近くでのFK奪取につなげた。

   20分強の出場ながら、少年時代を過ごした「バルセロナ仕込み」の技術と打開力、積極性は大きなインパクトを与え、メディアでもこの試合の中心人物となった。一方で、その活躍が霞んでしまった選手がいる。先発した永井謙佑である。ツイッター上では、

「昨日の永井のゴールお見事やったのに、久保代表デビューにかき消されたよね。永井、良くやった。2点とも難しいやつや」
「『久保くん!』『久保くん!』って過剰にマスコミとか騒いでるけど、昨日2点とった永井とか2点目の起点となるパスを出した(DF)畠中(槙之輔)、2試合連続でクリーンシートの(GK)シュミット(・ダニエル)とか取り上げるのを忘れてないか?」
「久保くんは上手いし、強いし、本当に日本の宝で、明るい未来だと思うけど、もっと永井くんのゴールにもスポットを当ててあげてー!」

といった声が続々あがっている。

スポーツ紙の紙面は「久保一色」

   永井は今回4年ぶりに代表招集されると、誰よりも結果を残した。前半19分、DF冨安健洋(20)が長いスルーパスを出すと、オフサイドラインを見極めて右サイドのスペースへ。相手2人がブロックに入るも一度切り返し、後ろから来たもう1人のDFも振り切って、倒れ込みながら打ったシュートがゴールネットを突き刺した。同41分には畠中のスルーパスに反応したMF原口元気(28)がゴールラインギリギリで折り返すと、ニアサイドに走り込んだ永井がダイレクトシュート。前半だけで2ゴールと獅子奮迅の活躍を見せた。

   いずれも永井最大の持ち味である「俊足」を大いに生かしたゴール。得点シーン以外でも前半25分、MF橋本拳人(25)の縦パスから南野がはたいたボールを足元で受けると、前を向いてシュートに持ち込むなど、鋭い飛び出し以外の引き出しも見せた。永井の活躍はほぼ「大迫一択」だった代表の1トップにとって光明とも言える。

   だが10日のスポーツ紙の紙面は「久保一色」だ。日刊スポーツは1面で「強烈デビュー久保!!」、スポーツニッポンも1面で「久保にくぎ付け A代表デビュー!! 待ってました~!!」の見出しとともに、久保のシュートシーンの写真を掲載。スポーツ報知は最終面(裏1面)で「沸いたーー久保!! 抜いた打ったキレキレ27分間」、サンケイスポーツも同面で「久保 たった6分で即シュート!!」と見出しを打ち、写真もやはり久保のシュートシーン。デイリースポーツも代表戦を扱った7面カラーで久保を大きくクローズアップした。

   こうした風潮にもツイッターでは、

「今朝のスポーツ新聞 案の定久保一色だったな。それよりも、ワンチャンス×2回をモノにした永井をもっと評価してほしいな」
「久保建英と中島翔哉は大好きだけど2得点した永井が新聞の一面じゃないこの国のメディアは終わってる」

といった声が相次ぐことになった。

永井は笑顔で「なんで俺が点決めた時にデビューするんだよ!」

   サッカー解説者のセルジオ越後氏は10日、「サッカーダイジェスト」に「【セルジオ越後】マスコミは久保建英を持ち上げ過ぎ。サッカー強豪国なら新聞の見出しは『永井2ゴール』だよ」と題したコラムを寄稿。「それにしても、マスコミの取り上げ方はちょっと普通じゃないね」「日本のマスコミはアイドルが欲しくて仕方ないんだろう。でも、実力がなかったら、いくらメディアが作ろうとしても長持ちしないよ。もっとちゃんと結果を出してから取り上げるべき」と久保に関する報道に物申している。

   なお永井と久保の当人同士はFC東京の同僚でもあり、関係は良好。試合を中継したTBS系の「S☆1」では、試合後の2人が笑顔で交わしたこんな会話も放送している。

永井「タケ(=久保)、なんで俺が点決めた時にデビューするんだよ!」
久保「バーターっす」
永井「誰がバーターだよ!」

   6月18日に初戦を迎えるコパ・アメリカ(南米選手権)では、永井はクラブに戻るが、久保は代表入り。エルサルバドル戦後に久保は「今日は点を取れなかった。南米選手権では決めたい」と悔しさを口にした。次は「ゴール」で真の主役に躍り出るか。