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ラグビー界のレジェンド3人が語るW杯 日本代表はいかに戦うべきか?

   「ラグビーW杯2019日本大会」が、2019年9月20日に開幕する。

   サッカーW杯、五輪に次ぐ「世界3大大会」といわれる同大会開催へ向け、J-CASTニュースでは、元代表選手3氏の座談会を企画した。FB(フルバック)今泉清さん、SH(スクラムハーフ)永友洋司さん、HO(フッカー)坂田正彰さん。いずれも「桜のジャージ」をまとった、日本ラグビー界の「レジェンド」である。

   これから3回にわたり、W杯に向けての展望から、そして日本ラグビー界の今後にいたるまで、縦横に語っていただく。

(聞き手・構成/J-CASTニュース 山田大介)

  • 元ラグビー日本代表の3氏。左から坂田正彰さん、永友洋司さん、今泉清さん
    元ラグビー日本代表の3氏。左から坂田正彰さん、永友洋司さん、今泉清さん
  • 元ラグビー日本代表の3氏。左から坂田正彰さん、永友洋司さん、今泉清さん

元日本代表3氏の歴史を紐解く

   まずは、3氏の経歴を紹介しよう。

   ☆坂田正彰さん=1972年(昭和47年)、滋賀県大津市出身。兄の影響でラグビーをはじめ、高校は愛媛県の名門・新田高に進学。花園(全国高校ラグビー)にも出場、高校JAPANにも選出された。法政大に進学後は、大学日本一も経験。卒業後はサントリーに就職、また日本代表としてもプレー。ポジションは第1列(2番)で、スクラムの中でボールを足でかき出したり、ラインアウトではボールを投げ入れるスローワーとして活躍。日本代表キャップ(出場回数)33。

   ☆永友洋司さん=1971年(昭和46年)、宮崎県都農町出身。県立都城高からラグビーをはじめ、当時のポジションはFB。花園ではベスト4に進出し、高校JAPANにも選出された。160センチ台と小柄だったことから、進学した明治大ではSH(9番=スクラムからバックスへボールを供給する位置)へコンバート。1年時からレギュラーを獲得、4年時には主将に抜擢。抜群のボール嗅覚で「永友いるところにボールあり」ともいわれた。サントリーでも主将をつとめ、チームの躍進に貢献。日本一にも輝いた。現在は、キヤノン・イーグルスGM。代表キャップ8。

   ☆今泉清さん=1967年(昭和42年)、大分県大分市出身。曰く「ガキの頃から、家で暴れ回っていた」とのことで、ご両親が「外で発散すれば、夜はおとなしく眠るだろう」という判断のもと、小学1年生から地元のラグビースクールへ。大分舞鶴高―早大。WTB(ウイング)、FB(フルバック)として、1年から活躍した。同氏がキッカーだった学生時代は、キックを蹴る際に下がる「1、2、3、4、5!」というコールが国立競技場中から巻き起こり、一大「ルーティーン」ブームとなった。卒業後は、ニュージーランド留学を経て、サントリーへ入社。サントリーフーズを経て、現在は、書籍の執筆や講演活動を主に、ラグビーの魅力を日本中に伝えている。代表キャップ8。

サントリー時代の思わぬエピソード

   サントリー、そして日本代表...。出身大学こそ違え、一緒に楕円球を追い続けてきた「ラグビー3兄弟」は、どんな関係なのか? 年次で言うならば、今泉さんが「長兄」、永友さんが「次兄」、そして坂田さんが「末っ子」という形だ。しかし、「長兄」の今泉さんが海外へラグビー留学していたこともあり、

   「次兄」の永友さんは、

「(サントリーでは)僕の方が社歴は上でした。それで、ある時『今泉さんがチームに来る』って聞いて。えっ、あの今泉さん? という感じになって...。(大学は違うけど)先輩なのに後輩になるんだから、面倒くさかった(笑)」

   因みに3氏は、坂田さん(2番)、永友さん(9番)、今泉さん(15番)という、ラグビーにおいては「背骨=縦の中心ライン」というポジションである。そこで3人にラグビーの世界的潮流を聞き、日本代表がどう戦うべきかを聞いてみた。

「陣形」が整っているか否か?

   近年のラグビーでは「ストラクチャー」「アンストラクチャー」という言葉が頻繁に飛び交う。簡単に言うと、

・ストラクチャー=「陣形」が整った状態。スクラムやラインアウトといった「セットプレー」からの攻撃や守備は、味方も相手も「陣形」ができている状況
・アンストラクチャー=「陣形」が整っていない状態。味方、相手のキック合戦となった場合、カウンターアタックを仕掛ける(仕掛けられる)ことも多くなる

   要は「形」が「ある」か「ない」か、ということを表す用語だと思っていただいていい。

   因みにイングランド、アイルランド、スコットランド...といった欧州のチームは、かねて「組織力」で戦ってくる「ストラクチャー」パターンが多い。

   逆にニュージーランド、オーストラリア、フィジー、サモア...といった南半球のチームは、選手個々の優れた状況判断、スピードに優れており「アンストラクチャー」攻撃に長けているとされている。

   サッカーに置き換えれば「欧州=組織力」「南米=個人技」というように考えれば、理解しやすいかと思う。

   では、日本代表は、どう戦うべきなのか?

   3氏とも「容易にキックを蹴るべきではない=簡単に『アンストラクチャー』の形を作るべきではない」との意見だ。

   今泉さんは、

「だって(ボールをキャッチした)相手が190センチ、100キロで、100メートルを11秒ぐらいで、30メートル向こうから突進してきたら、止められないでしょ」

   永友さんも、

「キックを蹴るということは『相手にボールを渡す』ということ。世界の流れは、そうなりつつあるかもしれないが、日本が選択すべき手段ではない」

   坂田さんは、

「日本代表が目標に掲げている『8強(以上)』を目指すのであれば、大事なのは、ボールポゼッション(支配率)を増やすこと。容易にボールを相手に渡してしまえば、術中にハマってしまうかもしれない」

   現HC(ヘッドコーチ)のジェイミー・ジョセフ氏は、ニュージーランド出身。ここ最近の日本代表戦を見ていると、確かにキックの応酬となり「アンストラクチャー」になっている場面が多いようにも思える。

   しかし、3氏は「できるだけ、自分たちのボールをキープすること。2015年イングランド大会のような『パスラグビー』に徹すれば、勝機は見出せる」と話した。

   今大会、日本代表は初の「8強」以上を目指す。この目標は果たして達成できるのか。次回は、この点について3氏の見立てを聞く。