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「医療や衛生関係は直してほしい」 仮放免から1週間、救急搬送問題のクルド人男性が会見

   2019年3月に体調不良を訴えたにもかかわらず救急搬送されなかったとして注目を集めた、クルド人男性のチョラク・メメットさん(39)が、収容先の東京出入国在留管理局(旧東京入国管理局=東京入管、東京都港区)から6月17日に仮放免され、24日で1週間がたった。

   本人や妻、代理人弁護士らが同日、都内で記者会見を開いた。集まった報道陣に、メメットさんは「人間の扱いではない。医療や衛生関係はなおしてほしい。とてもつらい」と訴えた。

  • 質問に応じるメメットさん
    質問に応じるメメットさん
  • 質問に応じるメメットさん
  • 会見で説明する大橋弁護士

「病院に連れてってください」と伝えるも...

   メメットさんは19年3月、入管職員へ最初に体調不良を訴えた際、「信じていないみたいな態度」をとられたと振り返る。「死にそうです、病院に連れてってください」と伝えた際も、職員からは「まだ生きてるじゃないですか」「まだ死んでないじゃないですか」などの趣旨の言葉を言われたという。

   その後、家族らの要請により、3月12日夜に救急車が入管へ2回来た。メメットさんは当時を

「頭と心臓の痛みが同時に来て、立てない状態でした。(足は)震えていた。『担当さん、担当さん』と言っても誰も来てくれない。言っても(部屋が)カメラ付きだから、何かあったら行くという形でした」

と振り返った。

代理人弁護士「血圧や脈拍などの確認をしたという記録もありません」

   代理人の大橋毅弁護士らによると、メメットさんは、3月11日から体調不良を訴え、12日0時すぎに体調が悪化。救急車は引き返したが、大橋弁護士は「救急車が来た時点で改めて血圧や脈拍などの確認をしたという記録もありません」と語る。

   メメットさんは翌日、外部の病院で診療を受けている。大橋弁護士が入手したカルテによると、脱水症状と診断され、水分補給が指示されていたとみられるという。大橋弁護士は「当初の脱水症状がどれくらいの状況だったかははっきりわかりません。血液検査の結果、脱水症状ということになったようです」と説明した。カルテには、本人を病院に連れてきた入管職員から、医者が聞き取ったとみられる話の内容も記載されているという。

   入管は16年1月25日、被収容者から速やかな医師による受診を求める訴えがあった際の救急搬送などについて、第三者機関の入国者収容所等視察委員会から、

「職員限りで判断することなく、速やかに医療従事者に連絡するよう努められたい」

などと意見を受け、同年3月11日に、

「被収容者が体調不良を訴えた場合、速やかに体温、血圧、心拍数の数値を確認するとともに、在庁している医師又は看護師に状況報告し、指示を仰ぐこととしている」

などの「措置」を報告している。

「結局のところ、この救急搬送に関しての措置を見た限り、完全に入管職員が勝手に判断している。判断しているというよりはチェックもしないで大丈夫だと言って追い返している」(大橋弁護士)

24日付で難民審査請求

   大橋弁護士によると、収容されている間に入管から「難民手続きのインタビューをしたい」という趣旨の申し入れをされていたが、メメットさんの体調が悪かったため延期を求めた。

   大橋弁護士は「本人もインタビューの延期を求めて、ぼくも手紙でそのように申し入れをして延期されていたはずなのに、インタビューなしに難民認定をしない処分が突然出されて、仮放免の日にその場で通知をされるという扱いが行われました」と経緯を改めて説明した。

「裁判でも訴えているように子どもがこんな(すでに日本に定着している)状態なのに、強制送還考えるなんてできないじゃないですか、という事情もある。難民(認定)についても正直、トルコ(の国内情勢)はこの数年悪化しているので、もう一回見直してもらっても全然おかしくないと思っているのですが、にもかかわらずインタビューもしないで不認定になった。資料を提出すると言っていたにもかかわらず。それについてご本人は納得できなかったが、全く説明はなかった」(大橋弁護士)

精神安定剤を服用していて「眠れません」と語るメメットさん。6月24日付で、不服申し立てにあたる「難民審査請求」を行ったという。

(J-CASTニュース編集部 田中美知生)