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「問題児」ネリはパヤノに勝てるのか 予想される展開は...

   ボクシングの前WBC世界バンタム級王者で同級1位ルイス・ネリ(24)=メキシコ=が、2019年7月20日に米ラスベガスで元WBA世界バンタム級スーパー王者フアン・カルロス・パヤノ(35)=ドミニカ共和国=と対戦する。体重超過やドーピング疑惑など「問題児」ネリにとって王座返り咲きに向けて絶対に落とせない一戦となり、元スーパー王者との対戦はボクシングの本場ラスベガスで名を売る絶好の機会となる。

   ネリは2018年3月に行われたWBC世界バンタム級タイトル戦で体重超過の大失態を犯し、WBCから無期限の資格停止処分を受けた。その後、処分が軽減される形で6カ月間の資格停止に変更され、現在はボクシング活動を再開させているが、日本の誇る世界王者・山中慎介氏を侮辱するような体重超過、そしてドーピング疑惑。日本のボクシングファンは今もなお、ネリの侮辱的行為を許していないだろう。

  • 井上尚弥(2016年撮影)
    井上尚弥(2016年撮影)
  • 井上尚弥(2016年撮影)

「ベルトを奪い返すための最終段階」

   リングの外で数々のトラブルを起こすネリだが、復帰後は順調にキャリアを重ねている。復帰第1戦目となった昨年10月では、いきなりWBCバンタム級シルバー王座を獲得。同年12月にノンタイトル戦で勝利すると、米国の大手プロモート社、プレミア・ボクシング・チャンピオンズ(PBC)と契約。今年3月には米テキサスで、元IBF世界スーパーフライ級王者マクジョー・アローヨ(33)=プエルトリコ=に勝利し、本格的に米国進出を果たした。

   現在、WBCバンタム級1位にランクされるネリは、パヤノ戦を「ベルトを奪い返すための最終段階」と位置付ける。強気な姿勢は相変わらずで、その動向には元スーパー王者に対して敬意を見て取ることが出来ない。米メディアによると、パヤノもまた、「ネリは私に勝てない」と、自信を見せているという。

   王座返り咲きを狙うネリとパヤノにとって、7月20日のリングは最高の舞台となる。この一戦は、世界6階級制覇マニー・パッキャオ(40)=フィリピン=の世界戦の前座として行われ、米放送局「FOXスポーツ」のペイ・パー・ビュー(PPV)で全米生中継が予定されている。ノンタイトル戦とはいえ、この一戦が今後の両者のキャリアを大きく左右することは間違いなく、全米のボクシングファンに存在をアピール出来ればビッグマッチへとつながる。この試合の内容次第では、「モンスター」井上尚弥(26)=大橋=への「挑戦」の可能性も高まるだろう。

   WBC1位のネリは指名挑戦者の権利を有しており、ここまで無傷の29勝(23KO)の戦績を誇る。一方のパヤノは、WBA、WBC、WBOでそれぞれランクインしており、ネリを破ればWBCのランキングは現在の6位から一気に上昇するだろう。パヤノは今年3月に無敗のホープを「完封」し、判定で再起戦を飾っている。強打を誇るサウスポー同士の一戦はどのような展開になるのだろうか。

絶対の自信を見せるネリの「慢心」

   ともに好戦的なタイプで、左フックを強振してくる。サウスポー同士の一戦だけに本来ならば、右のジャブが大きなカギとなってくるが、左右フックを振り回す「大味」なスタイルのネリは、パヤノ戦でも一発狙いで左フックを強振するだろう。井上の70秒KOを意識するかどうかは不明だが、全米生中継ということもあり、より攻撃的なスタイルでくることが予想される。

   一方のパヤノも大舞台で井上戦の汚名を返上したいところだ。スピードとパンチ力で上回るネリを攻略するには、ネリの防御の甘さをつくことだろう。ネリは左フックを放つ際、大振りのあまり一瞬、アゴがガラ空きになるシーンが見られる。連打を放つ際もガードが甘く、パヤノはカウンターでそこを突きたいところだ。元スーパー王者だけにパンチの当てカン、駆け引きに長けており、3月の復帰戦では豊富なスタミナを見せつけた。

   いずれにせよ、井上がパヤノを下した時のような70秒早期決着はないだろう。互いが得意にしている左フックの応酬で、泥臭い打ち合いが予想される。場外トラブルについて、今なお反省の色が見られないネリ。王座返り咲きに絶対の自信を見せる「問題児」だが、元スーパー王者にその「慢心」を突かれて初黒星の可能性は十分にあるだろう。