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日本の輸出規制強化に韓国は... 文大統領「産業育成を最優先課題に」発言を読み解く

   日本政府が2019年7月4日に韓国に対する半導体などの材料3品目の輸出規制を強化したことについて、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は7月8日に開いた首席秘書官・補佐官会議で、「韓国企業に被害が実際に発生した場合、韓国政府としても、必要な対応をせざるを得ない」などと述べた。

   文氏は措置の撤回を要求する一方で、「政府は、部品・素材・装置産業の育成を国家経済政策の最優先課題のひとつ」に位置付けると表明。仮にこの方針が機能すれば、中長期的には韓国企業の日本依存度が下がり、日本の輸出先を減らす可能性も出そうだ。

  • 首席秘書官・補佐官会議で発言する韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領(写真は青瓦台の動画から)
    首席秘書官・補佐官会議で発言する韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領(写真は青瓦台の動画から)
  • 首席秘書官・補佐官会議で発言する韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領(写真は青瓦台の動画から)

対日外交軽視の文政権、今度は「重く受け止めている」?

   文氏は、今回の輸出規制強化で

「韓国企業の生産に支障が懸念され、全世界のサプライチェーンが脅かされる状況に置かれている」

と主張し、日本側に対して「措置の撤回と、両国間の誠意ある協議」を要求。その一方で、日韓が対抗策を出し合うような「悪循環は両国ともに決して望ましくない」などと話した。

   文政権をめぐっては、韓国大法院(最高裁)が日本企業に対して元徴用工らへの賠償を命じる判決を下した問題で、日本国内の対韓感情が悪化しているにもかかわらず実質的な対応を取ってこなかったとして、対日外交の軽視が指摘されてきた。だが、聯合ニュースは文氏が今回の問題に言及したことが「事案を重く受け止めている傍証」だとみている。

   文氏は「企業の被害を最小限にする短期的対応をしっかり行う」とする一方で、「数十年間にわたって累積されてきた韓国経済の構造的な問題を解決するための契機にしたい」とも述べ、中長期的課題にも取り組む考えを示した。「短期的対応」の内容は現時点でははっきりしないが、中長期的課題は産業育成に重点を置いている模様だ。文氏は

「政府は、部品・素材・装置産業の育成を国家経済政策の最優先課題の一つとして、予算・税制等利用可能な資源を総動員して企業を支援する」

と述べ、企業側にも技術開発や投資の拡大を通じて

「対外依存産業構造から脱却するために力を尽くしてほしい」

と求めた。

追加規制の対象になりそうな分野の「自立」狙う

   この発言を、聯合ニュースは

「日本が発表した輸出規制品目が素材・部品に集中し、今後も追加規制が予想されるだけに、その分野の『自立』を根本的な代案として提示した」

と論評。日本側の措置の効果をなくすことを狙っているようだ。

   韓国政府や青瓦台(大統領府)、与党は7月3日に開いた会議で、半導体の素材、部品、設備の開発に毎年1兆ウォン(約920億円)水準の集中投資を行う方針を示している。今回の文氏の発言は、この方向性を改めて示したと言えそうだ。

   韓国の調査会社「リアルメーター」が7月3日に行った世論調査では、今回の事案に対して韓国政府がどのように対応すべきか聞いている。最も多かった答えが、「WTO提訴など国際法的に対応しなければならない」で45.5%。「輸出入規制など経済報復で対抗しなければならない」が次に多い24.4%。「韓国が一部譲歩して外交的に解決しなければならない」は22.0%にとどまった。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)