J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

夫婦別姓、安倍政権が反対は「デマ」? 拡散するネット記事に異論も

   「安倍政権が夫婦別姓に反対というデマ!」などと題した記事がネット上で拡散されている。

   記事では安倍政権側が「『旧姓使用』を実施し、保守層の反発を抑えつつ、巧みに事実上の選択的夫婦別姓を実現しようとしている」と主張している。ただ、この記事には異論も出ている。

  • 「政治知新」の記事より
    「政治知新」の記事より
  • 「政治知新」の記事より

夫婦別姓「反対」は「フェイクニュース」と主張

   この記事は、ウェブサイト「政治知新」が2019年7月9日に配信したものだ。

   「政治知新」は「政治ニュースをメインにマスメディアでは報道されない様なニュースを中心に配信するメディア」を名乗る。ツイッターでは11日時点で、1万6000人以上のフォロワーがいる。一方で4月には、共産党所属の国会議員を「中傷」する記事を拡散したと指摘され、共産党東京委員会が名指ししないものの抗議声明を発表する事態もあった。

   記事では、選択的夫婦別姓問題について「メディアや反政権論者は『安倍総理は夫婦別姓に反対!』と決めつけ」ているとし、こうした批判は「フェイクニュース」であると主張する。

   「安倍政権が実施した、事実上の夫婦別姓(旧姓併記)に関する施策を見てみよう。これらはすべて、2015年に女性活躍推進法が成立して以降、それを根拠として実施された改革である」としている。同記事では、総務省が11月から、住民票やマイナンバーカードに旧姓併記できるようにすることを発表した点に言及。ほかにも、運転免許証への旧姓併記もできるようになる趣旨や、参院議員の片山さつき女性活躍担当相が国家資格での旧姓使用拡大の意向を示した趣旨などをまとめていた。

   記事では「既にビジネスネームという形で、『旧姓使用』による事実上の夫婦別姓政策が行われているのである」とし、

「安倍政権による政策の特徴は、野党が主張するような民法・戸籍法の改正によるものではなく、旧姓使用の拡大による選択的夫婦別姓の実現である」
「現在の安倍政権の現行の取り組みは、戸籍をいじくることなく、旧姓使用の機会を拡大し、実質的な夫婦別姓へと進んでいる」

などとしている。

サイボウズ青野社長「旧姓併記は別姓じゃない」

   しかし同サイトの記事内容に対し、ツイッター上では指摘する声がでている。政府を相手取り、選択的夫婦別姓の容認を求める裁判を起こしている、ソフトウェア開発会社社長「サイボウズ」の青野慶久社長は9日夜、ツイッターを更新。政治知新の当該記事を引用し、「旧姓併記は別姓じゃない」と発言した。

   続けて青野社長はツイッターで「マイナンバーやパスポートなどは旧姓を使用できるようになったわけではありません。『旧姓併記』という、婚姻のプライバシー情報を漏洩し、かつ法的根拠のない名前の記述ができるようになり、システム改修で多大な税金がIT業界に流れ込んだのです」と主張する。

   現行の民法では結婚の際、どちらかの姓に統一して改めなければならない。選択的夫婦別姓制度は、夫婦が望む際に結婚後も、それぞれが結婚前の姓を名乗ることを認める制度。法務省のホームページでは制度について、「夫婦は同じ氏を名乗るという現在の制度に加えて、希望する夫婦が結婚後にそれぞれの結婚前の氏を名乗ることも認めるというもの」と説明している。

   法務省民事局の担当者は11日、J-CASTニュースの取材に対し、「夫婦別姓の話は戸籍の問題で、旧姓使用は戸籍とは関係ない問題」と両者の違いを説明。「夫婦別姓の問題については、『国会で議論すべきもの』と最高裁の判決もしており、答えが出ていない」と話していた。

   政府が16年に定めた「女性活躍加速のための重点方針 2016」では、「旧姓の通称としての使用の拡大」を記している。一方で2019年6月に開かれた「すべての女性が輝く社会づくり本部」(本部長は安倍晋三首相、副本部長は片山さつき女性活躍担当相)の会合で、政府が定めた「女性活躍加速のための重点方針2019」では、選択的夫婦別姓制度の導入について、

「国会における議論の動向を注視しながら、引き続き検討を行う」

という表記にとどめている。

(J-CASTニュース編集部 田中美知生)